米国のスマートグリッド関連動向(主にスマートメーター)について
経済産業省は11月19日、「スマートメーター制度検討会(第7回) 」を開催し、「スマートメーター普及に関わる論点等について(PDF)」や「米国のスマートグリッド関連動向(PDF)」が主な議論のテーマとなりました。
スマートメーター普及に関わる論点については、
スマートメーターの普及について
<メーターに求められる機能とコストの低減>
○メーターに求められる機能については、メーター導入の時間軸や、海外事例、および我が国の現状を踏まえたシンプルなものとすべきであるが、それは何か。
<制度上の課題>
○メーター本格導入に当たって、計量法等制度において支障となっている事項はあるか。
<費用負担のあり方>
○電力会社等にとってのメリット(海外との比較、時間軸)と、社会全体としての便益等を踏まえ、メーター導入に係る費用は誰がどのように負担すべきか。
<普及のスピード>
○海外事例、我が国の現状、メーター関連技術の開発状況等を踏まえつつ、普及スピードをいかに考えるべきか。
スマートメーター導入に期待される効果
○電力会社等、需要家、産業などにどのような効果がもたらされるか。また、現時点で想定が困難な便益をどのように評価するか。
スマートメーター普及にあたっては、費用の回収も大きな課題となり、論点の中では、米国や欧州の事例がとりあげられています。
●米国の事例
米国では、国によるスマートグリッドの実現や実証・開発等の支援に関する法律を制定、支援を行っている他、各州公益事業委員会による州法に基づく導入義務化やスマートメーター導入計画の承認等が進んでいる。
スマートメーターの導入に伴う費用については、各州公益委員会が各電力事業者の事業計画を審査・承認することで料金による費用回収が認められている。
費用回収について大きく分けると、料金に追加課金する方法(トラッカー/サーチャージ)と料金自体を改定する方法(レートベベース/バランシングアカウント/繰延勘定)があり、料金に追加課金する方法※が現在では多く採用されている。
米国における連邦政府の補助プロジェクトでは、
アメリカ再生再投資法(ARRA)により、31のスマートメーター(AMI)プロジェクトに対して、総額約8.2億ドルの資金が提供された。
補助率は概ね50%程度であり、最も補助額が多いのは、テキサス州のCenterPointとメリーランド州のBaltimoreGas & Electricで、それぞれ2億ドルの補助が承認されている。
また、欧州においては、
●欧州の事例
・各国において法律等によるスマートメーターの導入義務化が進んでいる他、第3次EU電力自由化指令においてもスマートメーターの導入が規定。
スマートメーター導入に伴う費用については、基本的に配電料金など料金による回収が認められている。
欧州における特徴は、イギリス、ドイツ、オランダなどメーター業務(保有、設置、検針等)の自由化が行われている国がある点が挙げられる。これらの国では、従来の考え方ではスマートメーターの設置に関する費用は規制の範囲ではなかった。(費用回収にかかる価格設定は自由。)
海外の事例においても、スマートメーターに関わる回収方法は異なっており、日本はどの国のモデルを参考にし、どのような対応策を進めていくのか注目されるところです。
「米国のスマートグリッド関連動向(PDF)」にあたっては、
9月末、米国カリフォルニア州におけるエネルギー使用情報の利活用の動向を調査するため、公益事業委員会、電力会社、関連サービス事業者等にヒアリングを実施しています。
カリフォルニア州での検討状況
カリフォルニア州は、エネルギー使用情報の提供・活用についての検討を進めており、スマートメーターの導入を前提として、CPUC(カリフォルニア州公益事業委員会)は、消費者へのエネルギー使用情報の提供方法や柔軟な料金プランの導入に向けた議論を進めています。
・電力会社がメーター情報を取得し、その情報を電力会社または(電力会社から情報を受け取った)インターネットサービスプロバイダーが提供(1日遅れ、1方向)
・メーター情報をHAN側の機器が直接取得(リアルタイム、双方向)
カリフォルニア州北部に電力とガスを供給する公益事業者のPG&Eでは、料金プランとして、Peak Day Pricing(PDP)を、2010年中に大規模需要家に導入するとともに、2011年から希望する需要家(一般家庭含む)にも導入する予定です。
2009年後半から2010年前半にかけて、PG&Eが実施したスマートメーターの導入によって、電力料金が大きく増加したとの消費者の苦情が多く寄せられましたが、苦情の原因としては、
スマートメーター導入に際しての説明の丌足
PG&E側の説明丌足・苦情対応の悪さ等
スマートメーター導入時期と猛暑に時期が重なり電力使用量が増加した
スマートメーター導入前の機械式メーターの計量が丌正確だった
同時期に実施された電気料金の値上げ
(平均価格の上昇、月毎の使用量に応じた段階料金制における傾斜の強化)
があげられています。
HAN側のエネルギー使用情報を用いたサービスの展開事例として、
・ Control4やiControlのような、ホームセキュリティ等のサービスを一般家庭向けに提供していたITベンチャーが、追加的なサービスとして家庭内のエネルギーマネジメントサービスを提供。
・ホームセキュリティ等の既に米国消費者に認知度の高いサービスと、エネルギー消費の見える化や家電制御等の新サービスをセットで提供することで、新サービスの利用に対して、消費者の利用が比較的進み易くなっていると考えられる。
海外においてもホームセキュリティとエネルギー消費の見える化など、スマートメーターの設置メリットの検証を進めてきていますが、日本においても以下のように導入による期待される効果について議論が進められています。
標準化に向けたOpenSG
米国産業界では、スマートグリッドの標準化に関する議論が進められています。
OpenSGは、2009年に、UCAIug(2002年6月設立。Utility Communication Architecture International User Group。46カ国から155社の電力社・機器ベンダ等で構成)組織内に、スマートグリッドの標準化を促進するために設立された分科会。
産業界が中心となり、Open SGの下に構成されるタスクフォースで、電力会社と第三者との情報のやり取りや負荷制御等について、システム要件や制度及びベストプラクティスなどを検討。
PG&E、SCE、FPL、Silver Spring Networks、Microsoft、Google、EPRIなど様々な立場のステークホルダーが参加。
Open ADE における情報提供手法の検討
スマートメーターを利用し、様々な効果を期待するためには、電力会社だけでなく、第三者機関と接続でき、様々なサービスが利用できる環境を構築することが重要となります。
OpenADEにおいて、情報提供に係わるビジネスフローは、4つのプレイヤー(電力会社、需要家、第三者、認証・規制機関)で構成。
需要家の受容性が高いモデルとして、電力事業者に第三者が登録する方式が議論されている。
・電力会社が、第三者の登録を行い、需要家に提示することによって、需要家が、安心して第三者からのサービスを受けることができるモデル
上の図が認証するためのビジネスフロー、そして、下の図が全体のイメージ図となります。①ポータルサイトにアクセスし、②提供情報に合意し、第三者に情報を提供し、第三者が需要家に対して、エネルギーの見える化などのサービスを提供するという流れとなります。
以上のように、スマートメーターの普及に向けては、様々な検討テーマがあり、海外の事例を参照にしつつ、日本での取り巻く環境を踏まえ、どのようなスキームでどのようなモデルをつくり、普及を推進していくのか、検討後の今後の具体的な普及に向けたアクションの動きが注目されます。