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経営戦略・戦術に制作一人当たりの粗利獲得高を利用する

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営業スタッフのパフォーマンスは、売上高・粗利額・新規顧客獲得数など、定量的な指標で計れることも多く、またそれが報酬にリンクすることも多い。が、制作スタッフにおいては、そのパフォーマンスを定量的に現す指標が少なく、業績評価も定性的な項目に偏りやすい。そのことに疑問を抱いていた前の会社の私の上司が、制作スタッフひとりの粗利獲得高を計測することを決めた。

執行責任者だった私はその話を聞いた時、実はネガティブに感じた。現場を預かるものとして、粗利獲得高で制作スタッフが評価されることに違和感を感じたのだ。制作スタッフの間でかなりの数値のばらつきが予想され、それが制作スタッフの実力を正確に反映しているという気持ちになれなかった。(自分や営業がほとんど定量的な指標で評価されることに違和感は感じなかったのに)
そこで、報酬に反映させないという約束で制作スタッフひとりの粗利獲得高を計測することにした。(それでも、数値が低い制作スタッフのモラルが下がらないか心配だった)

予想通り、個々人の数値のばらつきは大きかった。その理由をひとつひとつ分析・対処していった。

  • まず当たり前のことながら、制作スタッフの粗利獲得額は営業のパフォーマンスに大きく左右されることに気がつく。
    営業が仕事をとってこない限り、制作スタッフは数値のあげようもなく、この点においてはどこまでも受身でしかありえない。
    よって、数値の低い制作スタッフを多く抱える事業部の人事体制を見直すことになる。
  • 次に同じ事業部でも制作スタッフによって数値のばらつきが大きいことに気がつく。
    これは個々人の能力よりも与えられた仕事による要素が大きかった。(いわゆる儲かる仕事、儲からない仕事という理由だ)
    なぜか特定のスタッフに儲からない仕事が集中しやすい。プロジェクトのアサインメントに問題がないか考える。
    そもそもこの儲からない仕事をこれ以上会社として取り続ける意味があるのかも考えさせられる。
  • 最後に同じ制作スタッフでも時期によってばらつきが大きいことに気がつく。
    仕事の平準化をどのように計るのか考えさせられる。また長期で見ると、同じ仕事をし続けているスタッフは
    粗利額が減る傾向にある。これは、制作の生産性アップが市場激化による値下げに追いついていないことを示している。
    仕事のプロセスそのものを考え直したり、事業の方向性を見直すきっかけとなる。

つまり、このしくみは、当初の目的だった制作スタッフのパフォーマンスを管理することよりも、むしろ事業戦略や戦術をたてる上で大変有用だったということだ。

アークコミュニケーションズでもこのしくみは導入している。経営者として会社の舵取りをすることに役立てるだけでなく、制作スタッフ一人ひとりにも意識してもらうため公表している。当初思い描いていたような「粗利額が○○円なら、ボーナスは○○円」にはならないが、自分がしている仕事がどれだけ会社の利益に貢献しているのか、数値がもし他人より極端に悪い(良い)のならそれはどうしてなのか考えてもらうようにしている
数値にとらわれて欲しくないのだが、気にして欲しい、というのが少々勝手な経営者としての言い分だ。

本来の制作のパフォーマンスの指標を作ることについてはまだまだあきらめていない。粗利獲得額も、上記経営問題を解決していけば個人の能力差による数値の違いが大きくなるはず。また粗利獲得額だけではなく、他にも色々な指標が必要だ。
簡単に測定できる効果のある指標があったら是非教えてください!

<今日のオリンピックへの道>
クロスカントリースキーを休み休み2時間

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