競争:ルールに書かれていないことはどうする?
「それをしなかったせいで、金メダルが銀メダルになってしまう―そういう時でもやらないの??」スキーオリエンテーリングのコーチはあきれて、日本人選手団に言った。
スキーオリエンテーリングとは、地図にマークされた地点(コントロール)を決められた順番にクロスカントリースキーで滑って通過するタイムトライアルレースである。
決められた地点を正しく通過したかどうかを判定するために、自分が持っている電子機器をその地点に置かれているユニットに差し込む。(アナログ式なら自分が持っているコントロールカードをコントロールごとに型が違うパンチに差し込む)そのユニットやパンチは、通常紐でたらして手繰れるようにしている。
件のコーチは、勝つためのテクニックのひとつとして、後ろに他の選手がいるときは
そのユニットを思いっきり揺らせて、ライバルが簡単には手に取れないようにすることを教えてくれたのだ。
思わず選手の1人が「え~、そんな卑怯なことできないよ!」と笑ったら、コーチは真顔で、冒頭の言葉を言った。みんな黙ってしまった。
コーチは重ねて言った。
「ルール違反じゃない。勝つための努力を最大限にしないのは、怠け者だ。味方に対して申し訳ないだろう?」
上杉謙信が、塩攻めにあって困っていた武田信玄に塩を送った話とか、相手が転んだので、打ちやすいボールを返したテニスの話とか日本ではこのような話は美談として取り上げられる。
ちなみにアングロサクソンと日本人というようにステレオタイプ化するのは意図ではないし、善悪の話をするつもりでもない。
スポーツでもビジネスでも勝負事の世界で、ルールに書かれていること以外についてどう判断するかというのは、その勝負にかける当人の姿勢が問われているのだなぁとつくづく感じたのだ。
ビジネスの世界では、この手のことをethicsと分類されるのだろう。
私は正直、自分の中にどのような基準があるのか人に説明できるほど明確ではないが、
日々の仕事で、ものすごく時間をかけて、自分に何度も問いかけ判断を下している。
他の業務だと明確な基準を作ることを好む私だが、ことethicsに関しては、その場その場で起きた問題について時間をかけて考え、そのプロセスを大事にしていくことにしている。
ところで、コーチにそう言われた時、私はどう感じたと思います?
「私もそういうことを悩んでみたい!」
だって、いつも私は、”後ろにいる他の選手”の立場ばかりだから(爆)(でもやっぱり金メダルはほしいよ~)