通じていないのは言葉ではなく、ビジネスの流儀
昨日は部下の立場での通訳サービスについて書いたが、当社のように第三者が通訳者を派遣する際、伝える範疇をどこまでとするのか判断は難しい。
■基本ラインは、顧客が言葉で伝えようと意図したことを伝えることだろう
例えばいい間違いがあった時に、言い間違えまでは伝えない。
駄洒落等についても割愛することのほうが多い。(場の雰囲気を和ませようとして言っているのを察して、場を和ませるために駄洒落を言ったのだけど、翻訳するのは難しくて残念のように伝えることもある)もちろん、その駄洒落をすばやく英語の駄洒落に置き換えた達人もいるが。
■長期に渡る社内通訳の場合は、情報を加味して有意義な情報を正しく伝えることも多い
最近は内部統制法(SOX)にからんだ内部監査のための通訳・翻訳を担当することが多い。仕事が長期に渡ると、スポットでしか担当しない監査官より、通訳者のほうが業務事情に通じ、インタビューすべき相手はどの部署の誰か、どこにそのような資料があるのかよく知っているし、 インタビュイーがまごまごしていると助け舟まで出したり補足したりすることがある。
このように長期に渡る仕事は、通訳の範疇を超えた仲間としての仕事を顧客も期待するし、通訳者もその要求に答えられることが多い。
■コミュニケーションがとれていない折衝については、過剰(不適切?)サービスをすることもある
外国人(例えばアメリカ人)とのビジネス折衝の経験が全くないクライアントに通訳を頼まれるときがある。萎縮してしまっているせいか、ビジネスに慣れていないせいか、顧客が言ったことをそのまま伝えても、顧客に何のメリットをもたらさない発言ばかり。こういう時は本当に困る。
お金をいただいている以上、顧客に満足のいく結果(通訳ではなくビジネスで)に結びついてほしい。が、通訳者として、それ以上の範疇の仕事を行うのは責任がとれず不適切であると考えることのほうが普通だ。
しかし、通訳者のAさんは、折衝相手に待ってもらって、顧客に対し、とくとくと彼女が何をしたいのか、聞き出し、戦略を一緒に練ってから通訳をした事があるそうだ。またMBAを持っている通訳者のBさんは、我慢(?)が限度に達し、なんと顧客に代 わり、ビジネスをまとめてしまったそうだ。その顧客は大変喜んではいたそうだが、Bさんは自分は通訳に向かないと悟り、それ以来二度と通訳の仕事はしていない。
通じていないのは言葉ではなく、ビジネスの流儀だったりするので、それをどこまでカバーするのかはう~ん・・・・