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ソフトバンクはArmを売ってArmとNvidiaを手に入れる

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ソフトバンクグループ(SBG)が、イギリスArm Limitedの株式の全数を米Nvidiaに売却すると発表しました。

ソフトバンクグループが英Armの全株式を米NVIDIAに最大400億ドルで売却へ 取引完了まで18カ月かかる見通し

最大取引価値は400億ドル(約4.2兆円)とされており、2016年にSBGがArmを買収したときの価値が310億ドル(当時の為替レートで約3.3兆円)ですから、金額だけ見ても4年で1兆円近くの利ざや(の可能性ですが)を稼いだわけで、孫さんの投資家としての手腕を評価する声が聞かれるのも頷けます。

computer_graphic_card.pngSBGは、本当は売りたくなかった?

しかし、今回の売却はSBGにとって望んだことなのでしょうか?本来は、そういうプランではなかった筈です。Armは今でもIoTなどの分野での主要なプレイヤーであり、今回の買収額が膨らんだことことからもわかるように、今後の成長には大きな期待がかけられています。そもそも孫さんも、Arm買収の時には長期的に保有する前提でいると発言していましたし、Armは将来のSBGの中核企業になるとも言っていました。その言葉に違わず、トレジャーデータを買収してIoTデータエコシステムを構築するなどの布石も打ってきました。じっくり育て、将来再上場させれば、今回以上の価値を生み出すことも可能だったかもしれません。今回、業績悪化の際に株式の売却がささやかれたときも、完全な売却ではなく、一部売却で影響力を残す選択肢を模索していました。できれば、今は売りたくなかったのではないでしょうか。

うまくシナジーを生み出せるか

また、NvidiaとArmのビジネスモデルは異なっており、どこまでシナジーが得られるのかが今後の鍵になるでしょう。Nvidiaは(製造は外部ですが)自社ブランドでチップを展開しており、ArmはIPビジネスです。両方が併存できないわけではありませんが、ArmのIPを使おううとしているベンダーは、Nvidiaに情報が漏れるのを好まないかも知れません。どのような影響があるのか、現時点では未知数な部分が多いと思えます。

今後はArmとNvidia両方の株主へ

ただ、Nvidiaへの売却というのは悪い話というわけでもありません。そもそもSBGは1昨年までNvidiaの第4位の株主でしたし、旧知の間柄です。ビットコインバブルの影響で業績が悪化した際に株式を売却しましたが、その後AIへのシフトによってNvidiaの株価は持ち直しています。さらに、AI処理用のプロセッサは今非常に注目されており、新規参入も盛んで、投資もかなり集まっているようです。その中でも、GPUで先行したNvidiaは自動運転やIoTへするなど、良いポジションを築いています。スパコン分野への進出も、Armの方向性と一致します。

今回の売却が正式に実現すれば、SBGはNvidiaの筆頭株主になります。Armはその下に入るわけで、これは、IoTとAIという、今の時代を牽引する2つの半導体関連企業(しかも各々の分野でトップ)を手に入れるということです。(ただ、主要株主と報じているメディアもあり、どちらかは現時点で確認できていませんが、いずれにせよ関与は続けられます)現下の苦境を逆手に取って、莫大な利益と将来への可能性を共に手に入れると言うことであれば、一石二鳥の妙手と言うこともできるでしょう。

 

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