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【12%】目に見えない企業力の可視化がもたらす効果

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 ご縁があって、先日サイバーエージェントの取締役人事本部長である曽山哲人さん @SOYAMA とお会いしました。サイバーエージェントはユニークな人事・組織活性化の仕組みを続々と具現化している企業であり、曽山さんといえばその仕掛け人として、業界でも注目の一人です。京都への出張時に、わざわざ名古屋で途中下車いただき、お会いする機会を持てたのは幸運なことでした。
 
 サイバーエージェントが打ち出している特徴的な制度・仕組みといえば、社内公募による新規事業プランコンテストである「ジギョつく」、自薦他薦による優秀人材可視化の仕組み「CAバンヅケ制度」、そして社内異動の活性化の仕組み「キャリチャレ」などが代表的なものですね。個々の説明は割愛しますが、これらに共通しているのは、
「風土とか価値観とかいった、目に見えないけどとっても大事な企業の力」を、目一杯高める、活性化させる方法を、「具体的な仕組みとして考え、実践している」という点だと思います。
 
 たとえば、成長性だとか技術力だとかいった企業力なら、定量にせよ定性にせよ、具体的な目標として設定することは誰にでもイメージしやすいでしょう。売上高前年比10%アップ、みたいな感じですね。それに対して、企業風土や価値観といったものは、ともすると言語化することすら難しく、客観的・絶対的なモノサシもないので、個々人で受け取り方も異なるのが普通。つまり、「こんな風土を目指そう」といった具体策を立てて共有することは、とても難しいことなのです。
 
 そこをあきらめずに、自分たちが納得できる目標に落とし込み、みんなが共有できる、目指せる、実践できる手法で具現化を試みているのが、サイバーエージェントのユニークな点だと思うわけです。たとえば先の「ジギョつく」で提案されたアイデアを認め、関連会社として企業化させて事業推進を図る。そして、その発案者である新人を社長に抜擢してしまうというから、半端無いですよね。
 
 この積み重ねが、働く人の連帯感につながり、チーム・サイバーエージェントを作る。結果として、10年前に約30%あった離職率を、約5年で【12%】にまで低下させることに成功したといいます。
 
 曽山さんから見せていただいた資料に、Great Place To Workが発表している「働きがいのある企業ランキング(2011)」というのがありました。これは「働きがいのある会社」に求められているものを、「信用」「尊敬」「公正」「信頼」「誇り」「連帯感」という6つの要素で具体的な設問に落とし込み、アンケート調査によって集計し算出している企業ランキングとなっています。

1位 グーグル
2位 ワークスアプリケーションズ
3位 日本マイクロソフト
4位 アサヒビール
5位 Plan・Do・See
6位 サイバーエージェント
7位 モルガン・スタンレー
8位 三幸グループ
9位 日本イーライリリー
10位 アメリカン・エキスプレス・インターナショナル
11位 ディスコ
12位 日建設計
13位 三井住友銀行
14位 明光ネットワークジャパン
15位 船井総合研究所
16位 ネクスト
17位 インテル
18位 東京海上日動システムズ
19位 ブラザー工業
20位 堀場製作所
21位 マルホ
22位 ザイマックス
23位 アボットジャパン
24位 国分
25位 良品計画
26位 野村総合研究所
27位 湘南美容外科
28位 アルバック
29位 ガリバーインターナショナル
30位 バンダイ

2011年発表「働きがいのある会社」ランキングより引用

 世間一般の「大きな会社」「有名な会社」ランキングとは少し違うのかもしれません。学生の人気企業ランキングなどと比べてみても、顔ぶれが大きく異なっていますね。このランキング、目に見えない「働きがい」を可視化することで、今までとは違う、「企業を見るモノサシ」を提供してくれていることは確かだと思います。ここでもサイバーエージェントは6位にランクインしています。
 
 こうした指標がより一般に普及すれば、いわゆる進学先を選択する際の「偏差値」に相当するような、就職先を選択する際のメルクマールになるのかもしれませんね。
 

※追記 「2010年には離職率が7%まで低下した」と、曽山さんから追加情報を頂きました。改善スピードがアップしているようですね。

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