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【1.46倍】エコポイントの駆け込みで超混雑する家電店で見た、さすがに異常な光景

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 11月に入ってから週末に数回、親に頼まれて家電量販店に出かけています。目当ては、言わずと知れたテレビの買換。そう、「12月になったらエコポイントが減額されちゃうから、今のうちに買った方がやっぱりいいんだよね」という話です。
 
 エコポイントがどう変わるのか、という話は省略しますが、とにかくどの店舗も、テレビ売り場には黒山の人だかり。驚いたことに、どの店でも「商品説明を聞くための順番待ち」が発生しており、すべての店で混雑を整理すべく「商品説明予約受付カウンター」が設けられているのです。早い話、
店員さんから商品説明を受けるのに、列に並ばないといけないわけです。いや、正確に言えば、説明は必要なくてすでに購入品を決めているし価格交渉も必要ないから早くしてよお願い!、というお客さんですら、同様に順番待ちなのです。こんな光景、わたしは初めて目にしました。
 
 
数店舗回って見て感じたのは、売り場に漂う、何ともいえない空気。少なくとも、キレイな大画面テレビを買うという楽しげなショッピング風景…という雰囲気ではないのです。売る側も買う側も、何だか疲れてる感じ。人によっては、殺気だっているというか、殺伐としたというか。とてもニコニコ笑顔で買い物中♪という光景には見えなかったのです
 
 元々家電店の売り場というのは、いろんな音が鳴り響いていて結構ウルサイのですが、今回はそれに輪をかけたような状態。店員さんもお客さんもみんな大声でしゃべっています。お客さんのテンションも高くなっているようで、「オレの方が先だろうが!」「そりゃ話が違うだろ!」と罵声が飛び交っているのが聞こえてきます。正直、わたしは数分で気分が悪くなってしまう事態に。こりゃダメだと、早々に退散しました。
 
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 先日発表された、家電量販店大手5社の2010年9月中間連結決算によれば、「薄型テレビなど家電エコポイントの対象となった製品の販売が伸び、コジマを除く4社の売上高と税引き後利益が過去最高となった」(読売新聞2010年11月15日付け配信記事より一部引用)。各社の状況を見ると、「エディオンの薄型テレビの販売台数は前年同期比で【1.46倍】。営業利益は約3倍」「最大手のヤマダ電機は売上高が中間決算で初めて1兆円を突破」「ケーズホールディングス、上新電機もともに売上高が2ケタ伸び」「コジマは経常利益が約2倍」(いずれも同紙)と、エコポイントによる特需が如実に出ているようです。
 
 これだけ売れていれば、店側はホクホクじゃないかと思うところです。ところが現場は相当混乱していました。実際に
商品は飛ぶように売れており、店頭に並ぶ商品で値頃感のあるものは大半が「在庫なし」「完売」状態。このせいで、顧客が相当に焦っているようなのです。以下は店頭でわたしが聞いた説明の一部です。

(E・J社)
・少しでも早く購入いただき、テレビが納品されたらすぐにエコポイントの申請を行ってください
・家電エコポイントは12月中にも原資が底をつくという噂もあります。なくなったら終わりですから、急いでください
・商品が届いてからでないと申請ができませんので、在庫なし商品をお買いあげいただいた場合、納品日によっては、エコポイントが受付終了となっている場合がないとはいえません。そこを了解の上ご購入ください

(Y社)
・今ご購入いただければ、エコポイントは今の金額で満額もらえます。政府もそう言っていますよ。もらえるかどうかは、購入日で決まります
・購入日が11月なら、納品が来年になっても確実にもらえます。安心して予約してください

 お分かりでしょう。上記の(E・J社)の説明は、受取方によっては、購入を煽っているようにも聞こえます。事実なのかもしれませんが、買う側には不安がふくらみます。一方の(Y社)は、まったく逆ですよね。これが正しければ、買う側は安心ですが、他社とは逆の説明で不安。念のため複数の店員さんに確認しましたが、同じ見解でした。
 
 これすべて、大手家電店の店頭で聞いた話です。大手ですら、真逆の説明がされているわけで、相当に混乱していると言わざるを得ません。
 
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 上記の件、わたしもさすがに気になって調べました。下記が政府(正確にはグリーン家電エコポイント事務局)発表の公式コメントです。

家電エコポイント制度の見直しについて

10月8日に閣議決定された「円高・デフレ対応のための緊急総合経済対策~新成長戦略実現に向けたステップ2~」において、本年夏以降の大幅な家電需要の盛り上がりを踏まえ、家電エコポイント制度の円滑な実施を促すため、追加的な予算措置と併せて、所要の制度見直しを行うことが盛り込まれました。

これを受けて、環境省・経済産業省・総務省から、家電エコポイント制度の見直しについて、下記のように発表されましたので、お知らせいたします。

(前略)… 3. 家電エコポイント登録申請期限は平成23年5月31日(当日消印有効)とする。万が一、家電エコポイント発行原資が不足する可能性が出てきた場合には、申請順で処理することとなるが、申請順で処理することとなる日の1ヶ月以上前に改めてお知らせする…(後略)

※平成22年10月8日(金)グリーン家電エコポイント事務局公式ホームページより一部引用

 わたしが調べた限りでは、これしか公式な発表が見当たりません。これを根拠にしていえば、現時点では「原資が無くなった」という発表はされていませんから、これから1ヶ月以内に申請を完了すれば、エコポイントはちゃんともらえるということになります。その意味では(E・J社)さんが言われるほどに焦る状況ではない、と思いました。ただ、「申請順で処理」ということですから、たとえ今購入しても、納品が数ヶ月先になったり、納品されてもエコポイントの申請を忘れていたりすると、間に合わなくなる可能性があるということになります。つまり上記の(Y社)の説明は間違っているということになります。
 
 今回の政府のエコポイント半減作戦により、エコポイントの寿命が延びるどころか、逆に市民の「急がないとダメ」という気持ちに火をつけてしまったというのは何とも皮肉な結。個人的には、店頭に漂っていた、景気浮揚感とはほど遠い殺伐とした空気に、なんともいえない虚しさを感じています。


※お断り:表記したE/J/Y社の店頭での説明は、一字一句正確ではなく、わたしの記憶に基づいて再現した内容ですので、正しい情報ではない場合もございます。

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