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【10月1日】内定開始日に思う、新卒採用についての独り言~今年も歴史は繰り返されるのか

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 今週末、新卒採用における内定開始日がやってきます。こう書くと、多くの方は「?」という感じではないでしょうか。新卒採用において、ここ数年、大学側と企業側の両当事者間には「内定開始は4年生の10月1日から」という約束があるのです。ご存じでしたか?
 
 では、こちらはどうでしょう。9月14日、文科省が『平成12年3月卒業予定の大学生の就職採用活動の正常化へ向け、
大学側の「申し合わせ」と企業側(日本経団連)の「倫理憲章」を尊重することで双方が合意した』と発表しています。中身をちゃんと見れば、結構大きなニュースだと思うのですが、これをご存じの方はどれくらいいらっしゃるでしょうか。

…(前略)…
卒業学年に達しない学生の選考活動を自粛することなどが柱で、同省は合意内容などを各大学に通知
…(中略)…
大学側は、「申し合わせ」に基づく要請書に、卒業・修了後3年間は新卒者として扱うことを企業側に求める「新卒要件緩和」を初めて盛り込んだ。企業側は、3年生を対象に行う企業情報の説明会などは、採用選考活動に影響しない広報活動であることを周知することを新たに決めた
…(後略)…
毎日.jp 2010年9月14日配信記事より一部引用

 そこには、「3年生には面接などの選考活動をしない」「内定は【10月1日】以降」といった具体的な約束が明記されています。ビッグニュースですよね。まともに受け止めれば、「おー、これで新卒採用の早期化に歯止めがかかるのか」と思われるでしょう。にもかかわらず、これがたいして大きなニュースにもならず、一般市民にも知れ渡らないのには、いろんな理由が隠れています。
 
 実はこの通知、ここ数年、毎年出されているのです(もちろん毎年少しずつ変化はしていますが)。そう、今年始まった話じゃないんですね。だからサプライズでもなんでもないんです。そもそも新卒者の採用に関する「申し合わせ」と「倫理憲章」の合意、という、一般市民からすれば何ともわかりにくい方法をとっていることに、疑問なり違和感なりを持たれる方も多いのではないでしょうか。
 
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 「就職協定」という言葉をご存じの方も多いと思います。この歴史は古く、大学、日経連、文部省や労働省(当時)を中心とする「就職問題懇談会」によって、昭和23年(1953年)に作られたところまで遡ります。なんと半世紀以上も前の話です。しかし、何ら法的拘束力もなく、また罰則規定もない「紳士協定」だったため、遵守しない企業が続出。その後は廃止や復活、変更を繰り返しながら形骸化の道をたどります。そして1996年に廃止されてしまいました。
 
 その後、企業側と大学側がそれぞれの意向を「倫理憲章」と「申し合わせ」という形でとりまとめ、その合意を図るという方法がとられるようになり、現在に至っています。ですから、今年初めて新卒採用の早期化を抑制する動きが出てきた、というわけではないのです。
 
 実際に内容を見ていくと、結構具体的なものになっていることに気づくと思います(現物はこちら→平成23年度大学、短期大学及び高等専門学校卒業予定者の就職・採用活動について)。これが実際に守られれば、かなり大きな変化が起きるはずです。ただ、過去の経緯も踏まえれば、有名無実化している現状が大きく変わることは、このままでは難しいように思えます。なぜそうなってしまっているのでしょうか。
 
 半世紀の歴史を経て複雑にもつれた結果が今の形である以上、早計に語ることはできないかもしれません。難しいことはさておいて、乱暴な言い方をすれば、守ることで利益が企業にもたらされないから、なのでしょう。より正確に言えば、
皆が守れば、企業側にもちゃんとメリットがあるんだけど、他社が守らない中で自社だけが守っていては競争に負けてしまう、ということだと思います。
 
 現状の新卒採用は、学生にとってはもちろんですが、採用する企業側にとってもかなりの負担となっています。ルールなき競争下では、他社よりも優秀な人材を獲得するために激しい競争を繰り広げ、長期にわたって相当なる労力と経費を投入しています。これがもし、今の「倫理憲章」「申し合わせ」に沿った形で動くようになれば、採用活動は物理的に制限され、結果として労力と経費が削減されることにつながるはずです。また就活に費やされる時間の短縮により、学生の質的向上が図られれば、企業側にとっても大きなメリットになることは当然です。
 
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 新卒採用に関わる諸氏からすれば、何を今さら当たり前のことを、という話を饒舌に書き綴ってしまいました。わたしは評論家でも有識者でもコンサルタントでもない、ただの一在野です。ただ、就職協定が現存する頃から、新卒採用を支援する立場で仕事をしてきましたので、いつも【10月1日】を迎える頃に、いろんなことを思うわけです。学生が、企業が、世の中がシアワセになるようなやり方って、ないものかなぁと。

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