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【68.7%】「就職ではなく就社」ではダメなんだろうか

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 とかく「厳しい」「大変」と括られる昨今の新卒採用状況。就職支援サイトでは、2011年卒者の就活と平行して、すでに2012年卒者向けの情報提供が活発になってきていますが、4年生の就活が一段落する気配はまだ見られません。
 
 株式会社ディスコが、7月20日付けで発表した『日経就職ナビ2011 就職活動モニター調査』(2010年7月)結果によると、4年生の内定率が約2/3に達しているとのこと。

7月1日現在のモニター内定率は68.7%で、前年同期(69.6%)より微減でした。先月(6月1日現在)調査から比べると内定率は59.7%から【68.7%】へと約1割増え、前年同期との差も縮まりました
  …(中略)…
内定者のうち就職先を決定して活動を終了した人の割合は、モニター全体を分母にした場合59.0%。つまり4割がまだ進路を決めておらず、就職戦線は例年以上に長期化する可能性が濃厚…(後略)…
 
日経就職ナビ2011 就職活動モニター調査(2010年7月)結果より一部引用

 この結果はモニター970名という、いわゆる感度の高い層を対象としたもののため、実際の内定保有率よりは高い数値になっていると予想しますが、それにしてもわたしの実感とは少し遊離している印象を持ちました。
 
 Twitterで就活関連の情報を眺めていると、最近よく見かけるのが、「二極化」というフレーズ。内定をもらえた学生と、まだの学生。A大学とB大学。内定をもらえて就活を終了した学生と、内定を持っていながら、まだ就活を継続している学生。内定をもらえず、悪戦苦闘を続けている学生と、内定をもらっていないのに、ほとんど活動をしていない学生。いつの時代もこうした差は生じているはずですが、それが今年は極端ではないかという指摘です。
 
 わたしが気になるのは、内定を持っていないのに、あまり就活をしている気配がない学生たちの姿です。先日もある学生が内定をもらった報告にきてくれたのですが、彼女は「ゼミで内定を持っていない学生が4人いるけど、そのうち3人は何も活動していない」と言いました。
 
 数人の教員に状況を聞いてみると、彼女が教えてくれた状況に類する話がいくつも出てきました。そもそも就職する気がないかといえば、そうではない。でも、ちょっと就活してみて、うまく進まないと、そこから動けなくなっている…こんな学生の姿がリアルに推察できました。
 
「ちょっと動いたくらいでめげてるとしたら、そりゃ甘過ぎだよ」そう思う方もいらっしゃるでしょう。では、なぜ彼らは動けなくなっているんだろう。彼らの心にあるのは、果たして「甘え」だけなんでしょうか。
 
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 平行して進み始めた、3年生の就活。就活支援サイトを見ると、今、彼らにプッシュされているのは、インターンシップであり、業界研究であり、自己分析だったりします。「自分の経験や希望を棚卸ししよう」「業界ごとの違いと特徴を見極めよう」「企業規模やイメージに囚われず、やりたい仕事を見つけよう」といった、就活のセオリーがいろんな言葉で並んでいます。そこに書かれていることは正しいし、そうした指導を着実に実践できれば、就活の「勝者」になれる…はずです。
 
 でも、現実はうまく進む学生とそうでない学生に分かれ、結果として二極化が進んでいるわけです。どこでどう違いが生まれてくるのでしょうか。動いていない学生を動けなくしているのは、何なんでしょうか。
 
 動いていない彼らに話を聞いてみると、彼らが決して悩んでいないわけでも、何もしなくていいと思っているわけでもないことがわかります。でも動けない。話していると、
彼らの前に立ちはだかっている壁は、「こうすべき」「こうあるべき」みたいなセオリーであることが多いと気づきます。「わかっちゃいるけど、その通りにならない」ということです。そこに、さらに正論で諭しても、それでは前に進めないということなんです。
 
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 サカタカツミさんが書かれた『就職のオキテ』に、こんなフレーズがあります。

…(前略)…世の中で「バリバリと働いている人」のなかにも、「これがやりたい!」と学生時代から思っていた人は、実は意外と少ないようです。むしろ、働き始めてから見つかったという人の方が多い
  …(中略)…
いま、やりたいことがないあなたも、不安になる必要はありません。やりたい仕事なんて、働き始めてから見つかるのですから…(後略)…
 
※『就職のオキテ』(サカタカツミ著、翔泳社刊)より一部引用

 
 そもそも。社会人のみなさんが、かつて就職されたとき、インターンシップは経験されましたか? 自己分析はどれくらいされましたか? やられた方は、それで進むべき道が見えましたか? 心からやりたいと思える仕事が見つかりましたか? みなさんは「就社より就職」でしたか?
 
 実際の就活は、なかなか筋書き通りにはいかないんですよね、きっと。セオリーはもちろん正しいのだけど、その通りにできない、やってみても跳ね返される。誰か(=先生だったり、就職課だったり、カウンセラーだったり、親だったり、内定もらった友達だったり)に相談すると、また新たなセオリーが提示されて…みたいな繰り返しで、身動きができなくなっている学生が結構いるような気がするのです。
 
 就活生たちの中には、厳しい就活に悲観し、こんな時代に生まれたことを嘆いている人たちも少なからずいると思います。でも今は、やり直しがきく時代でもあります。これだけ働き方が多様化し、それこそ転職してキャリアアップすることが推奨されたりする時代でもあります。仮に今すぐに一生の仕事を見つけようなんて思わなくても、手遅れにはならない時代だということです。
 
 軽はずみなことを申し上げることはできません。でも、
働いたことがない学生に、やりたいと心から思える仕事だとか、自分に合っている仕事だとか、それこそ働く意味だとか、わからなくても無理はない、と思うんです。何でもいい、どこでもいいとまでは言いませんが、まず働いてみて、その中で見つける、確かめる、探す、それでもいいんじゃないのかなと。
 
 学内で企業説明会が開催されていた今日。猛暑の中、クールビズが適用されずにスーツを着ている学生たちを見ながら、そんなことを思いました。

Comment(4)

コメント

中村さん、こんにちは。
働いたことがない学生に、わからなくても無理はない、それは、わたしも強くそう思います。
やりたいことを見つけて、目指す会社に入っても、その職種に配属になるかどうか分かりません。運良く配属されたとしても、数年後、事業再編で無くなるかも知れませんし、そもそも、その仕事が自分の考えていたイメージと違っていたら・・。
やりたいこと、進む道が明確なのは素晴らしいことですが、あまりそこに拘ると、前に進めなくなってしまうように思います。

中村さん
>働いたことがない学生に、やりたいと心から思える仕事だとか、自分に合っている仕事だとか、それこそ働く意味だとか、わからなくても無理はない
全くもって同感です。働きながら考えればよいし、正直これだけ働いている私だって本当のところはわかりません。自分がやりたいことをつきつめすぎるとかえって不幸になる気がします。

村山さん、大里さん、コメントありがとうございました…なのにまったくの遅レスですみません!
 
今の大学は、キャリア形成支援を求められるケースが多いこともあって、低学年時から、就活支援講座なるものが活発に行われるようになっています。その場合、まずは正論、セオリーありき、になりがちで、その方が保護者にもウケが良いと、知人のキャリアカウンセラーから聞きました。
でもキャリアって、大学時代に培うものじゃなくて、仕事しながら、働きながら積み上げていくものですよね。いってみれば大学はその助走期間みたいなもの。そこですべてが決まる、的な見方はそもそもそぐわないということです。要は事前に規定できるようなものではないし、仮に描いても、その通りにいくケースはレアであると(もちろんプランニングを否定しているわけではありませんが)。
この前提に立たないと、学生とグリップできないんじゃないかなと、学生と向き合っていて感じている日々を過ごしており、今回はそこを紹介させていただきました。社会人の多くがそう感じているはずなのに、実際そうしてきたはずなのに、若者には自己の経験と違うことを諭しているとしたら、そりゃ響かないかもしれませんね。恥を忍んで申し上げれば、少なくともわたし自身、ほんとにやりたいことが明確になってきたのは40後半のことですから。

いつも楽しく観ております。
また遊びにきます。
ありがとうございます。

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