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【50km/h】 沖縄でクルマを走らせながら思った、ちっぽけな自分

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 リゾート旅行の良さは、非日常的な空間に離脱し、日常の喧噪から逃れてリラックスできること。一般論ではこんな風に言ったりしますね。娘たちの卒業記念も兼ねて、思い切って計画した沖縄旅行。出かける前は、久しぶりの家族旅行だからと、那覇から離れたリゾートホテルを予約し、あそこに行きたい、これを食べたいと、家族みんなが盛りだくさんの希望を詰め込みました。
 
 この時期の沖縄は海開き直前で、海に入ることをしなかった(というより3日間ではそんな予定が入らなかった)のですが、それでもわたし以外は初沖縄ということもあり、いろんな期待をして出かけたわけです。幸いなことに3日間ずっと天候に恵まれ、いろんな沖縄を満喫することができ、良い旅でした。でも、帰ってきて思えば、せっかくのリゾートホテルをゆったり楽しむ時間も少なく、立てた計画を勢いでこなしていく、ある意味日常の慌ただしさをそのまま非日常的な空間で再現したに過ぎない、せわしない3日間だった気もします。
 
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 沖縄に到着してまずやったことが、レンタカーを借りること。那覇市内に一部モノレールがある以外、沖縄の交通機関はクルマに依存しています。短期の家族旅行に、レンタカーは必需品となります。
 
 初日、那覇近郊で過ごしたわたしたちは、夜8時を過ぎてホテルへの道を走り始めました。市街地はどこも混み合っていましたが、高速はガラガラ。なかなか快適です。ふと気がつくと、追い越し車線を走っているクルマがまったくいません。みなゆったりと走行車線を流しています。名古屋ならありえないなぁと思いつつ、高速を下りて一般道へ。ここからまだホテルまでは1時間以上かかるとナビでは表示されています。
 
 国道でほぼ一直線に北上。市街地を抜けると、クルマの量がどんどん減ってきました。快適なドライブ…と思ったのですが、前のクルマがあまりに遅くて、ちょっとイラッときます。見ると沖縄ナンバーでレンタカーではないようです。時速は【50km/h】が上限で、それ以上は上がりません。やっと前のクルマが曲がったと思ったら、すぐに次のクルマに追いつきます。今度も40〜50km/hくらいのゆったり走行。制限時速が50km/hの国道ですから、もちろん文句は言えません。しかし、夜半の空いた道です。名古屋なら後ろから鳴らされそうな気すらしました。
 
 この走り方、実はこの日に限ったことではありませんでした。滞在中の3日間、一般道を走れば40〜50km/h、高速なら80km/hを超えて走るクルマは、ホントに数台しか目にしませんでした。なぜこんなにゆっくりなんだろうと、違和感さえ覚えました。
 
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 最終日。立ち寄った観光名所近くの海の駅の売店で、わたしはおばちゃんとこんな会話を交わしました。

「○○橋はそろそろ完成ですか?ガイドブックにそう書いてあったので」
「いやぁ、まだまだですね」
「そうですか、渡ってみたかったですね〜」
「予定通りにはできませんよ〜沖縄ですから」
「沖縄って、そんなに工事が遅れるんですか〜?」
「なんでものんびりね〜。沖縄時間ですからね〜。待ち合わせだって平気で遅れるし、誰も怒らないしね〜」
「クルマもみなゆっくり走ってますよね〜」
「そうですか〜? これが普通じゃないですかね〜」

 帰路のクルマの中で、わたしはこの3日間のことを思い出していました。そしておばちゃんが言っていた沖縄時間の話が、妙に腑に落ちた感じがしました。時間を守らなくてもいいとは言いませんが、のんびり、ゆっくり、というのは、すごくいいなぁって思いましたね。誰と話しても、ガッついてないというか、癒される感じがするのは、独特のイントネーションによるものではなく、沖縄の県民性なのかもしれません。クルマだってそう。「名古屋走り」と揶揄されることもある、クルマの運転の荒さに慣れてしまっているのでしょうか。はるばる沖縄までやってきて、ゆっくり走っているクルマにイラッとしたこと、そして旅行中ずっと慌ただしく時間を過ごしてきたことが、ちょっと恥ずかしくなってしまいました。
 
 せっかちな毎日を過ごしているのは、他でもない自分なわけです。周りがどうという問題ではないと分かってはいます。でも、なぜだか気ばっかり焦っていて、知らないうちに、そんな日々を積み重ねている自分が、何だか急にちっぽけな存在に思えてしまった、そんな沖縄の旅でした。。。
 
100325okinawa

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