【1480kg】 F1撤退でもトヨタがLFAを市販化した理由
今春、プリウスVSインサイトで激突したトヨタ・ホンダ両巨頭のエコカー戦争。夏には三菱からi-MiEVが発売され、今や日本の自動車メーカーはエコに大きく舵を切っているように見えます。それを裏付けるかのごとく、ホンダ、トヨタが相次いでF1から撤退。ホンダは発売目前だったNSXの開発を中止し、S2000の生産販売もストップ。開発費や技術スタッフなどの経営資源を、エコに特化しつつあると言われています。
その一方で、トヨタはレクサスブランドの超高性能車「LFA」を、東京モーターショーで発表しました。生産は年間500台限定。日本国内で型式認定は取得せず、持ち込み車検でナンバーを取得するという異例の販売方式。価格はなんと3750万円。最高出力は8700回転で560馬力、最高速度は325km/hと、まさにモンスターです。エコ一色に染まった今年のモーターショーで、LFAのスーパー度はまさに際だっていたはずです。
とまあ、ここまではクルマに詳しい方ならご承知の事実なんでしょうが、ではなぜトヨタは敢えて今、LFAを投入したのでしょうか。誰もが感じるであろうこの疑問について、レース&テスト・ドライバーの中谷明彦氏が興味深い見解を表明しています。中谷氏によれば、カギはLFAに投じられた「カーボンコンポジット」という基幹技術だそうです。
- (前略)…世界的な経済危機。普通に考えればLFAは真っ先に棚上げされそうな存在である。しかし、トヨタは開発を進めた。その理由は、LFAには次世代のエコにつながる極めて重要な基幹技術が盛り込まれているからだ。
- その基幹技術とは、カーボンコンポジットによる車体の製作技術である。
- ガソリン車だろうが電気自動車だろうが燃費やエネルギー消費を改善するには、車体の軽量化とエアロダイナミクス(空力)が極めて重要な要素になる。
- そして軽量化を達成するうえで、また、空気抵抗の少ない理想的なボディワークを実現するうえで、カーボンコンポジットの加工技術や車体量産技術はキーテクノロジーとなってくる…(後略)
※日経TRENDYnet 2009/11/26
たとえば三菱i-MiEVは、軽自動車のMiEVを母体としていますが、コアであるリチウムイオンバッテリを搭載することにより、車両重量が約900kgから1100kgと、200kgも重くなっています。また新型プリウスは1350kg。一方でV型10気筒4.8リッターの巨大エンジンを搭載するLFAの車両重量は【1480kg】。いかに軽量化が図られているかがわかります。
もともとクルマにとって軽量化は大きな技術課題であり、長い歴史をかけて各社がグラム単位の軽量化に取り組んできたはずです。しかし大型バッテリ搭載は、これまでの積み重ねを一気に吹き飛ばしてしまうデメリットをもたらしているという側面も見逃せません。
カーボンコンポジットとは炭素繊維と樹脂の複合材料。中谷氏によれば、
- (前略)…F1に限らず、現代の先進的なカテゴリーのレースカーはほとんどがカーボンコンポジットでつくられている。カーボンファイバーの重量は鉄の5分の1、アルミ軽金属の2分の1でありながら、同等以上の強度を持つ。自動車用ハイテン(高張力鋼)材と比べても、圧倒的に軽くて強い“夢の素材”だ…
- …LFAにカーボンコンポジットが採用されたのは、最初からEV時代の到来に備えて軽量化技術の熟成を狙っていた…というわけでは、もちろんない。だが、その技術が今後、役に立つ見込みが大きいと判断されたため、開発中止に追い込まれなかったと考えられる…(後略)
※日経TRENDYnet 2009/11/26
カーボンコンポジットの量産化技術が進めば、これからのエコカー開発に強力なフォローとなるだろうことは、素人の私から見てもイメージできる話です。究極のモンスターカーLFAが市販化にこぎつけたカギが、エコにあったとは、ちょっと驚きでした。
これぞ技術立国・日本らしい基幹技術開発だと思いませんか。。。