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【氷点下7.26℃】就活に親の出る幕はあるのか 『親子就活~親の悩み、子どものホンネ』11月10日発刊します

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 最近、大学内を歩いているとリクルートスーツの学生をよく見かけます。その多くは大学3年生。巷では早くも2011年卒者の就活が本格スタートし、全国各地で合同企業説明会なる就活イベントが始まっています。ただ昨今は折からの厳しい経営環境で、新卒採用を縮小したり手控えたりする企業が多く、現大学4年生でもまだ内定を獲得できていない学生が溢れている模様。日経就職ナビの調査によると、2010年卒予定者の10月1日時点での内定率は77.0%で、昨年同月比-11.9%となっており、まだ1/4が就職未決定という状況のようです。
 
 このような景況下、2011年卒者の就活戦線がスタートしました。企業の採用計画でも明るい見通しはなかなか見あたらず、メディアでは「就職氷河期の再来」という声が散見されます。楽天が運営する「みんなの就職活動日記」の調査によれば、2011年卒者の就職戦線は「【氷点下7.26℃】の氷河期で、採用人数「4割以上減らす」という企業が35.8%」とか。まだ出口が見えない状況が続いています。
 
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 このエントリーを読んでいただいているみなさんの中には、就活中の学生の親御さんもいらっしゃることと思います。いろんな思いが渦巻いて、心中穏やかでないこととお察しします。自分たちの時代とはあまりに違う就活観にとまどい、悩んでいる方も多いことでしょう。
 
 あまりに厳しい環境下、もがき苦しんでいる我が子を放任できるはずもない。これは当然の親心でしょう。バブル崩壊以降、長年日本企業に根付いてきた終身雇用から実力主義へと様変わりし、ワーキングプアだ、格差社会だと叫ばれ、がんばっても将来が保証されず、夢や希望が描きにくい時代という空気が世の中に満ちています。就職できずにフリーターとなる若者も身近に溢れ、特別な存在ではなくなっています。そんな中、親として何かしてやれることはないものか。私も子を持つ親として、こう考える親心は十分に理解できます。
 
 これに対し、就職活動にまで親が干渉するのは過保護だという声もあります。就活は大人として自立する大きな関門。かつて自分たちがそうであったように、迷い、とまどいながらも自分で切り開いていくより道はありません。子どもには子どもの人生があり、就活に親の出る幕はない。そうした見方も当然あると思います。昨今、進学先選びにおける「進活」にはじまり、「就活」、そして「婚活」と、今は何かにつけて子どもの人生の節目に関わってくる親の姿が見られます。社会学者である山田昌弘氏が著書「パラサイトシングル」で描いた「自立できない若者」の姿の反対側に、「子離れできない親」の姿が見え隠れするのも、今の時代ならではのことなのかもしれません。
 
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 11月10日、アスキー新書(アスキー・メディアワークス発行、角川グループパブリッシング販売)から拙著『親子就活~親の悩み、子どものホンネ』を発刊することになりました。タイトルが示すように、昨今の就活を親目線から捉え、厳しい現実に喘ぐ子世代に対する、親世代の処し方を著した書です。未だ出口が見えない雇用環境を俯瞰し、様変わりした就活事情を正しく理解すること。その上で親はどう立ち振る舞うべきかを、長年若者の就職に関わる仕事をし、採用する側・される側双方の声を聞き続けてきた経験から考えてみました。
 
 就活は正解のない道であり、満足度のモノサシも人それぞれ異なっています。親の関わり方についても、これが正しい、こうすべきという方法論を示すことはできないのかもしれません。ただ、親の経験則、これまでに培った価値観だけで口を出すのはあまりにも危険だと思います。それほどまでに今の就活は、昔とは違うのです。拙著が提示できることは、残念ながら考え方に過ぎません。ただ、少しでも子どものホンネを理解し、親としての悩みを僅かでも溶きほぐすことにつながれば…そう願っています。

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