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【8年】 auの新携帯『iida』が思い出させてくれる、デザインという言葉の定義

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 先回のエントリーでASUSTeKのミニノートS121が気になるという話題を取り上げました。その理由のひとつに、高いデザインクォリティが上げられます。人それぞれ感覚は違うと思いますが、PCを選択するときの視点としてデザインが気になるという人の割合はどんどん高くなってきているように感じます。これは、PCが単なる道具という存在価値を超えて、自分の個性や主張を表現するアイテムになってきたということだと思います。

 そしてPC以上にその傾向が強くなっているのが、ケータイではないでしょうか。今や機能だけでケータイを選ぶという人はいないと思います。多くの人はケータイを選ぶときに、多かれ少なかれデザイン性を重視しているはずです。

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 auは早くからデザインを前面に打ち出してきたブランドです。au design projectを立ち上げたのは今から【8年】も前の2001年のこと。それまで機能重視で画一的だった携帯電話のデザインに着眼し、デザイナーとのコラボレーションによって「INFOBAR」「talby」「MEDIA SKIN」など、デザイン性を前面に打ち出した端末を次々と送り出してきました。その流れで、この4月15日に発売した新型ケータイが『iida』です。

 家電店のケータイ売場で私が手にした『iida』シリーズの印象は、月並みな言葉ですが、洗練されたオシャレなケータイといった感じでした。ただ、私が一番気になったのは、電話機そのもののデザインではなく、その充電器(ACアダプタ)でした。

 最近はケータイを充電する場合に、自動車内のシガーソケットやPCのUSBを使う人も増えていると思いますが、それでも自宅内ではほとんどの人がACアダプタを使用しているはずです。ケータイ用のACアダプタは小型で持ち運びが便利なようにコンセント部分が折りたためるようになったコンパクトなものが主流ですが、私が知る限り、それは細長いケーブルがついた、黒いプラスチックの小型の箱です。ケータイがカラフルになろうと、ACアダプタは基本黒ですよね。純正品はもちろん、社外品でも、黒以外のものを目にした記憶はありません。

 ところが『iida』シリーズのACアダプタはカラフルで4種類用意されており、中でもグリーンのアダプタのケーブルには、葉っぱがついています。機能的にはまったく意味がなく、単なる飾りです。でもケータイの充電中には、まるで植物がはっているような様を演出してくれます。機能的にはケータイを充電する機器に違いありませんが、それをインテリアとして提案したところが◎だと思うわけです。それがどうした? って人には何ら意味のない提案でしかありません。ですからiidaシリーズはあまり売れず、ニッチなアイテムにとどまるのかもしれません。でも私は、この提案を買いたいと思います。

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 iidaシリーズでは、ACアダプタの他にも多くのデザイン提案がされています。それらは、ケータイの色や柄、素材を考えるという狭い視点ではなく、それが使われるライフスタイルまでを提案しようとしているように見えます。

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 デザインという言葉は、一般的には見た目の形状や色合いを意味していると思われていますが、これは正確な定義ではありません。辞書で調べてみると、design=名詞>図案、模様、図柄 動詞>描く といった(多くの人が知る)意味の他に、名詞>意図、立案、作意、設計、企み 動詞>図る、企てる といった意味があります。この言葉の本来の意味からすれば、一般的に使われているデザインという言葉のイメージは大変狭いものであることが判ります。ケータイをデザインするということは、形状や色合い・素材などの見た目を考えること以上に、その使い勝手や活用シーン、さらにはユーザーの個性やファッション性などをイメージし、どんな価値を提供できるかを考えることすべてを指しているのです。

 もし見た目だけをデザインしているのなら、今回のようなiidaは誕生しなかったかもしれません。ケータイがその人の個性や主張を代弁しているようなアイテムになっている時代だからこそ、iidaを使う人のシーンをイメージし、広い視点で製品を具現化する。少々大げさな見方かもしれませんが、iidaのデザインにはそんな提案力を感じました。【8年】も続けたauのデザインに対するこだわりは、やっぱりハンパじゃないなぁと。。。

※写真はITMedia +D Mobileより引用

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