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【1,000円】 不況期だからこそわかる、F君が売れる理由(2)

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 先回に引き続き、カーディーラーのスーパー営業F君のお話です。今週末からいよいよ高速道路【1,000円】乗り放題が始まりますね。これを機に新車の売れ行きが回復し…といきたいところでしょうが、残念ながらそう単純ではないようです。決算を迎える自動車販売店も多いと思いますが、景気の良い話は聞こえてきません。

 さて、そんな不況きわまりない時期に、F君はなぜ売れるのか。そこには、他の営業スタッフが優先順位を下げていることに敢えて挑戦しているという事実がありました。でも、F君によれば、やっていることは単に世間話をしているだけだと。では、なぜ彼のもとに、お客さんが世間話をしにやってくるのでしょうか。なぜそれで売れるのでしょうか。

 「僕が大事にしていることは、早い話、コミュニケーションの接点を増やすこと、話題を増やすこと。そのために、ちょっと手間のかかる方法をやっています。お客さんに何か連絡したいこと、たとえば、点検のお知らせや新車発表会の案内、年末年始の休みの案内などを、店からの連絡ではなく、Fからの連絡という形で行います。つまり、店が一斉に印刷物にラベル貼って郵送してハイ完了、にしないということ。方法はお客さんの希望に合わせます。電話がいい方には電話で。メールの方が都合がいい人にはメールで。そこに郵送や訪問を組み合わせます。内容はほとんど同じなんですけど、必ず一人一人個別にやります。メールだって、一斉送信はしない。めちゃ手間はかかりますけどね。そうすると、年末の休みの案内をしても、大半の方から返信がきます。店からのDMに返事を書く方はいないと思いますが、個別の案内だと、電話がかかってきたりするんですよね」

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 F君の強みは、端的にいえば2点に集約できると思います。1つ目は、みんなと同じことではなく、

 みんながやらないことに、あえて時間をかけてやる

ことに尽きます。正確にいえば、みんながやらないこと、ではなく、みんなができないこと、かもしれません。だって、相当大変ですよね。通常の業務はちゃんとこなした上でやるわけですから。

そしてもうひとつ。F君対お客さんという、1対1の関係を重視していること。会社からの一斉DMみたいな、いわゆるマスの情報提供ではなく、

 「わたし」から、「あなた」へのお知らせ、

というスタイルにこだわっていることです。これ、言うのは簡単ですが、やるのは超大変な作業です。だから、誰もができることじゃない。だからこそ、差がつくのです。たとえば、年末年始の案内するだけで、1日じゃ終わらないでしょう。でも、F君の場合、こんなお知らせでも、お客さんから「了解!」「ありがとう」って返信が来るそうです。

 「やりはじめたばかりの頃は、店の通用口のあたりで半日くらいかけて携帯メールを打ってました。だから先輩や上司からは、サボってるとしか見えなかったみたいで、結構叱られました。遊んでんじゃねーよって。携帯やるなら昼休みにしろって感じですかね」

 今、彼の携帯メールを打つスピードは、女子高生並に違いありません。

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 私に届いた案内のメールがたまたま残っていたので読み返してみました。そこには、

 「中村様…先週は点検にお越しいただきありがとうございました…★★★(車名)の調子はいかがですか? ○月○日から年末年始のお休みをいただきます…」

 と書かれていました。特別に凝った内容ではありません。でもこのメールには、名前や車名が入っていること、来店のお礼が書かれていることなど、一斉送信ではできない個別内容が書かれていますね。F君は、メールを送る全員に同じことをやっているのです。お客さん一人一人の顔を思い浮かべながら、メールを打っているF君の姿がイメージできるはずです。

 こうして話がつながり、お店に来て世間話をする機会ができて、その中から何人かが商売の話につながっていく…というのは、聞くまでもなく想像できます。

 コミュニケーションというのは、相互に交わしてこそ効果があるものです。彼のこだわりには、コミュニケーションの一番キモになる要素が備わっている、そんな風に思えます。。。

  ※【32.4%】 不況期だからこそわかる、F君が売れる理由(1) も是非ご覧ください
Comment(3)

コメント

人は生身の個人として扱われるのが何よりうれしいのですよね。とても本質的なことを、F君から教えてもらった気がします。

シンプルなことは「継続」するのが実は難しかったりするのですが、F君のシンプルな「強さ」にあらためて気づかされる思いです。すばらしいですね。

佐川さん、decoさん、ありがとうございます。
話していて気づくのですが、彼は戦略的に作戦を練って、合理的に実施するというのではなく(F君、ゴメン!)、
自分がお客さんだったら…と考えて、その気持ちに応えようと正直に動いている、そんな気がしています。
世の中、システムや仕組み、組織で解決を図る方法が主流なのですが、
そうだからこそ、F君のような人肌っぽいアナログな対応が心にしみるんでしょうね。
彼から学んだことを、わたしも大事にしたいと思っています。

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