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●人、●%、●億円…メディアにあふれる「数値」から、世の中のことをちょっと考えてみましょう

【15%】 不況下でも海外旅行が急増する理由

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 金融危機、株価下落、雇用不安…このところの経済情勢は厳しい話のオンパレード。これらはすべて事実なんでしょうが、現実的な消費動向をみると、違和感を覚えることも少なくありません。

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 昨年夏に高騰した原油価格は、秋から冬にかけて坂を駆け下り、今はピーク時の半値以下にまで下落しています。その効果がようやく出始め、海外旅行の実質的な料金が下がってきています。いわゆる燃油サーチャージが劇的に下がったことにより、値頃感が増しているようです。

  •  日本航空、全日空などは、欧州、北米、中東向け燃油サーチャージを、現行の2万2,000円から3,500円に、ハワイは1万4,500円を2,000円(いずれも片道)などと大幅に下げる。3年前の水準だ。「このまま原油価格が下がれば7月以降は廃止の可能性も」(日本旅行業協会)という。
     海外旅行料金も値下がりする。日本旅行広報室の高宮亜由美さんは「3月に予定していた旅行を4月に変える人もいる。各社とも旅行代金が平均で【15%】程度は安くなっているようです」。
     日本旅行の場合、1〜3月の欧州方面の予約件数は前年同期比2割減なのに、サーチャージが安くなる4月の予約件数は前年を上回った。大型連休は3割増、同じサーチャージが適用される6月は4割増。北米も大型連休は前年の2倍近い予約だ。
     近畿日本ツーリストも大型連休に限れば欧州は7割増だ。

   東京新聞2009年3月21日 夕刊(Web版)より引用

 加えて、昨年同時期に比べて北米・欧州いずれも1〜2割、為替が円高に推移しており、これも海外旅行者にはプラスに作用していると思われます。旅行各社もこの波に乗るべく、「今ならGWまだ間に合います」と、販売に力を入れているようです。また格安の海外旅行で人気のあるHISでは、2泊3日韓国12,800円という定額給付金に照準を絞ったプランを販売し、あっという間に完売。

 こうした事実が、「今年は旅行がお値打ちかも」的なムードを作り出しているのではないでしょうか。こと海外旅行については、利用者の財布のヒモは緩みがちになっているようですね。

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 上記で紹介したように、燃油サーチャージの低下や為替差益などが、海外旅行が売れる合理的な理由なんでしょうが、果たしてそれだけでしょうか。
 
 世の中、不況の嵐が吹きまくっています。いや、正直に言えば、吹き荒れる嵐をこの目で見たわけじゃないから、そんな気がしているだけかもしれません。何せ景気というのは、目に見えるものではありません。もちろん経済指標で知ることはできるし、仕事上で不況を実感することは多々あります。しかしながら、不況により雇用が脅かされたり、収入が減ったりしない限り、それは対岸の火事的な感覚の人が多いのではないでしょうか。結局のところ、多くの国民が肌で感じる景気というのは、景況感という空気なんだろうなと思います(この話は前に『ITが生み出しているものは、空気なんじゃないか、という仮説』というエントリーで書きました)。毎日のように接するメディアから入ってくる無数の不況ニュースで、必要以上にそう感じている人もいる気がします。目の前のお金に窮しているわけじゃないけれど、不況という空気を吸って、財布のヒモは固くなっている。でも、いざオイシイ話が現実に提示されると、ちゃーんと賢く判断して、お金を使う。そんな人もたくさんいるということでしょう。

 こうして考えてみると、メディアを通じて漂ってくる空気と、目の前にある実態とは、多少違うのかなという気がします。この春、海外旅行でも高速道路を使った国内旅行でも、たくさんの人が旅行して、世の中に明るい空気が満ちてくることを期待したいと思います。。。

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