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【1,039件】 おばあちゃんの再就職…って、そりゃ起業じゃん…びっくりだぁ

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 週末、どうしても温泉に入りたくなって、フラフラとクルマに乗って、飛騨方面に出かけてきました。といっても、自宅から1時間くらい。郡上八幡で高速を下り、もうちょい北へ。すでに周辺には日帰り温泉が点在しています。

 ゆったりとお湯につかって、日頃の疲れをちょっとだけ癒して、いい気分。で、帰りにふと立ち寄った道の駅。ここには地元食材を扱うレストランが併設されています。なにげに入って、山菜そばを注文。すると、あふれんばかりの山菜が、それこそ山盛りで運ばれてきました。持ってきてくれたのは、気のよさそうなおばあちゃん。

 「すごい大盛りですねぇ、嬉しいなぁ」
 「おじいさんがとってきたヤツだからねぇ、うまいよ~」
 「へぇ、そりゃすごいねぇ」

 たわいもない会話をしつつ、今がまさに旬のキノコを食すと、これがまた抜群にウマイ。ナメタケもでかい。こりゃ天然もんだ…。

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 おばあちゃんに聞くと、昨年この店を始めたらしい。えっ?おばあちゃんが始めたの?ってことは、おばあちゃんが店長さん…らしいです。何でも、道の駅の売店に地元の食材を並べて販売していたのがきっかけで、地元のJAのススメで、ちょいとレストランをやりはじめたと。

 「何十年ぶりだがね…外で働くのは…」

 聞けば、おばあちゃんは若い頃にちょっと会社勤めしたくらいで、あとは農家に嫁いで畑仕事一筋、で、御年○歳。この店で出している食材のうち、野菜や山菜は基本的におばあちゃん家が畑で育て、裏山で採ったもの。川魚は、隣の何とかさん家が捕ったもの。これこそ、「地産地消」ってやつです。この手のレストランを、最近は「農家レストラン」って呼ぶらしいです。

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 農水省が昨年発表した「農村女性による企業活動実施調査」によると、2006年度に農村女性が農家レストランや農家民宿などを起業した件数は【1,039件】にも上るそうです。結構すごい数ですよね。これは生産や加工などを含めた全起業の11%に相当。そして従事者の約4割が60歳代で、最大の担い手っていうから、これまた驚きです。

 私が偶然訪れた道の駅には、前から地元農家の方が生産された野菜などが販売されていました。そこに地元食材のレストランができても、何ら違和感はありません。先の【1,039件】の内、道の駅に併設するというのは、いわゆる典型的なパターン。村興し、町興しとして地産地消を活用する例はたくさんあると思いますし、その一環として、レストランや民宿、日帰り温泉などを組み合わせる発想は非常に理にかなっていると思います。

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 一方で、問題点も少なくありません。運営主体は、元々農家のおばあちゃんやおじいちゃん。経営基盤が脆弱で、経営効率が悪かったり、売上の安定化が図られずに途中で立ちゆかなくなるケースも出ているようです。野菜を育てるのはプロだけど、経営では素人。そりゃそうですよね。

 でも、地元の食材を地元のおばあちゃんの料理で食べられるのは、すっごく嬉しい。少なくとも私は、また行きたい、このために出かけてきたいと思ったりしています。将来、この発想と担い手を、後方から継続支援する仕組みがちゃんとできていくことを、一人のファンとして願うばかりです。。。

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