【56位】 なぜ子どもたちが理科好きにならないのか~現場で感じる理科離れの原因<後編>
今回は、先回のエントリーの後編です。理科離れという言葉が適切かどうかは議論があるようですが、文科省を筆頭とする教育行政機関をはじめ、メディアも理科離れというフレーズを声高に取り上げはじめたのは、OECD(経済協力開発機構)が加盟国を中心とする57の国・地域の15歳男女計約40万人を対象にした国際学習到達度調査(略称PISA)で日本の理数系学力低下が示されたことに端を発しています。その最新版(2007年12月発表、2006年版)によれば、
・「科学的応用力」:2003年版 2位 → 2006年版 6位
・「数学的応用力」:2003年版 6位 → 2006年版 10位
・「読 解 力」:2003年版 14位 → 2006年版 15位
と、全分野で順位を下げたことで、“PISAショック”といった言葉がメディアの見出しを飾りました。これが「ゆとり教育」見直し議論を活発化させたと言われています。
私個人としては、学力面での順位数値以上に、PISAで同時に示された意識調査の結果数値が気になっています。
・「科学について学ぶことに興味がある」との質問に対して、
「そう思う」と答えた日本の生徒:50%・・・52位(57ヵ国・地域中)
・「理科の勉強は役立つ」との質問に対して、
「そう思う」と応えた日本の生徒:42%・・・【56位】(同)
と、結果には、科学への関心や意欲の低さが鮮烈に示されており、これじゃ学力も下がるはずだと思わざるを得ません。
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先回のエントリーで、子ども向けの理科実験講座で私がやらかした失敗談をお話しました。自分でやっておいて、こんな言い方をするのは変かもしれませんが、今の理科教育の矛盾点の典型的な部分がここにあるんじゃないかと感じます。つまり、“失敗を体験することから学ぶ”ことをもっと大事にしないといけないんじゃないかと。
小学校の理科は、低学年は「生活」という科目で、いわゆる「生物」系がほとんど。とはいえ、都会の学校で、豊富な自然環境があることを前提とした実験実習カリキュラムは組めません。また高学年になれば、いわゆる「物理」「化学」系の内容も入ってきますが、実験は、組み立て型のキットを使い、それこそ“成功”が約束されたプログラムで構成されています。現代の教育でもっとも危険だと私が感じている、“お膳立て教育”の典型がここにあります。これでいいのでしょうか。これで理科の本質的なおもしろさ・むつかしさが伝わるのでしょうか。
上記のような教育を受けて育った世代が、今では小学校で教員となり、理科を教え始めています。豆電球と電池をつなぐ実験で、…エナメル線の被膜を剥かずにつないで、電球が点かなくて困惑している小学校教諭が多くいる…という新聞記事を以前に読み、愕然としましたが、これは笑えない現実でしょう。私の世代では、多くが小学生の時にハサミやカッターでエナメル線の皮膜を剥こうとして、線ごと切り落としてしまう“失敗”を体験しながら、エナメル線の被膜の剥き方を学んでいます。学校じゃなく、遊びの中で体験しています。「中村さん、プラモデルや虫取りに熱中した幼年期を過ごした世代と今の世代じゃ、それこそ、時代が違いますよ」と言われればそれまでですが。今の理科教育において、実際に“失敗”して学ぶことを重視しているかどうかと言えば、大きな疑問が残ります。
子どもたちの回りには、高度に完成されたゲーム機器があふれています。それを扱う子どもたちの手つきは、私には神業に見えます。見方を変えれば、子どもたちはこうした“完成品”を使いこなすスキルを磨くことに熱中していると言えます。中には、これを分解して親に怒られた・・・みたいな子どもたちが・・・いないかなぁ。いかん、こんな不謹慎な発言はいかんですね、すみません。。。