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【2年】 HD DVDを撤退させたのは誰?

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みなさん、はじめまして。
今回からオルタナティブ・ブログに仲間入りさせていただくことになりました中村昭典です。

 さて、今週はじめから駆けめぐっている、東芝・HD DVD撤退のニュース。西田社長の記者会見によれば、今回の撤退による東芝の損失額は数百億円とのこと。私には想像もつかない巨額です。それでも東芝の株価は上昇。あるアナリストによれば、膨大な赤字を生んでいたHD DVD事業を早々に精算し、07年度で損益の処理を行えば、08年度からは成長が見込めるという見解らしい。東芝がHD DVD製品を商品化し発売したのが2006年ですから、僅か【2年】で撤退を決めたことで、損失を最小限に食い止めることができたという見方も確かにあります。かつてVTR市場におけるベータとVHSの戦いで、発売から13年間も決着せず、400万台を市場に送り込んでから撤退したSONYの轍を踏まなかったと評価する声すら聞こえてきます。東芝はかつてのSONYに学び、そして今回のSONYとの戦いの傷を致命傷にすることなく戦いを終えた…ということになるのでしょうか。

 何はともあれ、新しい技術が複数誕生し、熾烈な競争を経る中で進化を遂げながらマーケットを育て、やがて規格が統一されて勝者と敗者を生むというのは、どんな業界でも、未来永劫続く道なんだろうと思います。今回、私が個人的に気になったのは、撤退の引き金を引いたのが、米映画大手ワーナー・ブラザーズだったということ。ハードウェアであるHD DVDとBDの戦いを決着させたのが、ハードウェアの技術差ではなく、そこに供給されるコンテンツサイドだったというわけです。こうした戦いの構図は、今回が初めてのことではありません。特にゲーム機市場では日常的なことで、かつてのPlayStationとNintendo64・セガサターンの戦いや、最近のPlayStaiton3とWiiの戦いもまさに同じような構図が描かれています。ドラクエみたいな1作のキラーコンテンツ的作品が多大な影響を与えることもあれば、コンテンツメーカーの陣営争いにより決着するケースもありますが、とにかく、コンテンツの影響はすごく大きいということをあらためて痛感したわけです。そういえば、ベータとVHSの長い戦いにおいても、後半にビデオ業界がVHSに絞ったことがダメを押した(という記憶ですが、違いましたかね)。やっぱコンテンツを制する者が…と思うわけです。

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 さて、ブログ初投稿にあたってこの話題を取り上げたのは、「ITを進化させるカギを握っているのは、やっぱコンテンツだよね」っていう持論からです(…ちょっと意図見え見えですね、すみません)。あくまでも私の個人的印象値ですが、ITというカテゴリーで語られる情報を俯瞰してみた場合、どうしてもハードよりの情報が多いような気がしています(…ひがみですかね)。だから、もっともっとコンテンツやソフトウェアの話題で盛り上がりたいなぁと。こんなことをあらためて偉そうに語れる身分でも立場でもないので、すごく僭越で申し訳ありません。

 私はこれまで様々な形で「情報」を取り扱う仕事をしてきました。人材情報メディアの編集、大学の知的情報の社会還元、そして情報コミュニケーションの研究…一見すれば、アプローチ方法はバラバラです。でも私の中では、「情報」を伝えたい人から求める人に受け渡すコンテンツを作成する仕事を一貫してやってきたつもりです。本ブログでは、日々世の中にあふれる【数値】情報から、その意味するものや背景などを独断と偏見で考察してみたいと思っています。IT業界の強者が集うブロガーの中では異色キャラ・番外ネタなのかもしれませんが、時折はのぞいてみてくださいね。今後ともどうぞよろしくお願いします。。。

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