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― IT部門とマーケティング部門のハザマで ―

【シーズン1 第8話】 IT部門の人はペルソナを知らない?

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 あるIT部門系メディアの編集長とやりとりをしているとき、「IT部門の人はペルソナを知らない...」とネガティブに嘆いていたので、メディアにこそちゃんと伝える責務があるのではないか、と思ったことがあります。確かに今までのIT部門の仕事はビジネス部門の要求によるIT化が本業なので、その先にいる「人(顧客)」のことを直接知る必要はなかったのでしょう。しかし、IT部門とマーケティング部門のハザマから考えると、ペルソナは顧客接点強化の必須ツールと言っても過言ではありません。

 今回は、マーケティングや製品開発で言われるペルソナをある程度本質的に理解するため、和辻哲郎さんのエッセイ「面とペルソナ」から話を進めてみます

  • 「顔面」は人にとり中心的地位にある
  • 「顔面」を突き詰めると「面」になる
  • 「面」を芸術に仕上げたのはギリシア人である
  • 「面」の抽象性から優れた発展を与えたのは日本人である(能面)
  • 「面」はイマジネーションで再び肢体を獲得する
  • 「面」は肉体を己れに従える主体的なるものの座、すなわち人格の座を得る
  • 「面」⇒肢体⇒人格⇒役割がペルソナ
       ⇒社会におけるペルソナ、地位、身分、資格

 父と子と聖霊が神の3つのペルソナというのなら、ユダヤ教のアドナイも、キリスト教のイエスも、イスラム教のアッラーも、同じ神でペルソナが違うだけ(かなり性格が違う)、ということになります。

 このエッセイは、ユングの心理学的には「ペルソナ≠元型」Ausschnitt アーシュニット:集合的心から切り取られた切片であり、Segment:全体の一部分ではない、と捉えていると思いますが、マーケティングでのペルソナの捉え方もそれに近いものがあります。

ペルソナ(心理学)
「ペルソナは元型ではないとする立場もある。その理由として、ユングは人類の集合的な心(例えば、社会的慣習や伝統的な精神)から各人が切り取ったもの(個性化された人格=仮面)をペルソナと名づけたのであり、集合的無意識そのものを指すわけではないという解釈がある。

 ここで、改めてマーケティングやITで言われるペルソナについての解説を読んでみましょう。

ペルソナとは(知っておきたいIT経営用語)
「架空の顧客像。詳細に設定した顧客のプロフィールを担当者間で共有し、人物像への理解を深めることでマーケティング方針を統一する手法。・・・これに対して販促活動などを手掛けるマーケティング担当者の間では、顧客を特定の人物像に絞り込むことはせず、ある属性の集団として捉えるのが通例でした。

 マーケターのいうペルソナは、切り取られた切片(Ausschnitt というスタンスからゴール(何をしたいのか)・行動(どうやって)・態度(どのように認識)などにもとづいて、ある程度分類・整理・検証した架空の人物像(切片)に、「顔写真」「年齢や仕事の内容などの基本的な情報」「よく口にする言葉」「一日の過ごし方」「仕事や人生のゴール、解決したいと思っている課題やチャレンジ」「さまざまな情報(メディア)との接し方」「あなたの製品やサービスを購入する理由・目的・購買への関与の仕方」などを含み、架空の顧客像をより具体化し、共有しやすくしたものなのです。

 さらに、架空の顧客像は静止していません。つまり、認知し、検討し、購入する、という動的なプロセスがあります。検討をする段階でショールームに行ったり、購入する前に比較したり、と行動(移動)をしますのでそれを「カスタマージャーニー(顧客の旅路)」と呼んでいます。無目的な行き当たりばったりの旅路もありますが、架空の顧客像の旅路は行動シナリオを想定することができます。その行動では検索が重要な役割を果たします。例えば、架空の顧客像の「認知」「検討」「購入」の3つの旅路の段階で検索キーワードは違ってくる訳です。ネットのみで考えるなら、本格的なペルソナでなく簡易ペルソナの行動シナリオから検索キーワードを抽出することができますが、リアル店舗やコールセンターなどのオムニチャネルも考慮するとなると、本格的なペルソナ(オム二チャネルペルソナなど)を開発する必要もでてきます。

 マーケティングテクノロジストが顧客視点のデジタル・トランスフォーメーションやデジタルのマーケティングを考えるならば、顧客ファーストやオムニチャネルペルソナなどの理解は必要不可欠なものになるのではないでしょうか。

● 雑談のネタ【Coffee Break】
https://blogsmt.itmedia.co.jp/CMT/coffee-break/

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