IT人材への投資で紡ぐ未来:ITmediaオルタナティブ・ブログ (RSS) IT人材への投資で紡ぐ未来

業界トップが企業システムの変革に挑戦する「次世代ITリーダー」にエールを送る

 初回に続いて、IT専門職について書いてみたいと思います。

 企業のIT部門で働く人たちは、経理や法務、人事、営業、それにマーケティングといったのと同じ、専門職のひとつだと思っています。今の世の中、企業のトップは、経理やマーケティングといった専門職の出身が多くなっています。つまり、専門職から総合的な仕事を学ぶようになり、そしてエグゼクティブや経営トップになる人が増えているわけで、かつて多くの企業に見られたように、営業出身がトップに就くという時代ではなくなっています。

 今は経理や法務が「C」レベルに就くチャンスがあるといわれていますが、それはいわゆる掘り下げた専門性と企業経営全体を看破したり、鳥瞰できる力とマネジメント能力が買われているからなのかもしれません。

 そういう意味でいえば、もっともっとITスペシャリストが、ほかの専門職と同じキャリアパスを歩んで、経営トップに就いていくというグランドデザイン(全体構想)をITで働く人たち自身がもっと持つ必要性が出てきました。これはこの業界自体の将来を創っていく上でとても重要なことなのです。

 ITというこの職種は、経営トップに就くべき人材が輩出されるところでなければなりません。それだけの重要度を、経理や法務、マーケティング、営業と同じように持ち合わせているのです。

 こうした発想があって初めて、ITの供給者サイド、つまりITベンダーにいても経営トップに就くことができるのです。

 ITというのは、企業全体にグッと深く串刺しているものなのです。企業のすべての業務をITのビューで見ることができるのです。はっきり言ってITの専門家には、経営トップに就くチャンスがあるのです。

 もちろん、Java言語でコーディングしているというところで自身のスキルを止めている人は開発スタッフのまま、場合によっては派遣社員などで置き換わってしまう実態に直面するかもしれません。

 もう少し視野を広げてみると、例えばJavaをベースに何かを成し遂げたITの専門家が、しだいに目線を上げていくとプロジェクト全体が見えるようになり、経営全体が見えてくるようになります。ITにおいてプロジェクトマネジャーとは、「ヒト」「モノ」「カネ」を動かしますから、企業の経営者そのものだといえます。そういうキャリアを持っているITの専門家こそ経営トップになる可能性を秘めているのです。

 500億円の予算を持ち、1000人動かし、ベンダーを100社も扱っている……、そういうIT部門長は世の中にたくさんいます。彼らの仕事は、生半可なトップマネジメントよりもタフなのではないでしょうか。中には「IT“プロフェッショナル”なんて呼ばれたくない。私は経営してるんだ」と主張したい人が案外いるのでは、と考えています。

 彼らは、どうやってコストを削減するかに日々頭を悩ませ、プロジェクトが破綻する危険性がある場合には命がけでブレーキを踏んで止めなければなりません。プロジェクトマネジャーやその周辺で働いている人たちは、苦しいこともあるだろうけど、スキルに磨きをかけるような凄く良い経験をしていると思います。

 ITの専門家たちは、スペシャリティーのあるキャリアパスや将来のプランを明確に持ってほしいと思います。ITSS(経済産業省策定のITスキル標準)を活用して、スキルセットを配備するといったレベルで留まることなく、もう一歩進んだ取り組みをしていただきたいですね。ITの専門家たちには大きなチャンスがあるのですから。

 明日はいったん、日本企業のITシステムに話を移したいと思っています。

masaaki shintaku

Special

- PR -
コメント

» このブログのTOP

» オルタナティブ・ブログTOP



プロフィール

新宅正明

新宅正明

日本オラクル社長兼CEO
「次世代ITリーダー」をテーマに、日ごろ考えていること、特に高度なIT人材へ の投資や今後のIT専門職がどうあるべきかを1週間書き綴ってみました。

詳しいプロフィール

Special

- PR -
最近のコメント
最近のトラックバック
カレンダー
2011年3月
    1 2 3 4 5
6 7 8 9 10 11 12
13 14 15 16 17 18 19
20 21 22 23 24 25 26
27 28 29 30 31    
shintaku
Special オルタナトーク

仕事が嫌になった時、どう立ち直ったのですか?

カテゴリー
エンタープライズ・ピックアップ

news094.gif 顧客に“ワォ!”という体験を提供――ザッポスに学ぶ企業文化の確立
単に商品を届けるだけでなく、サービスを通じて“ワォ!”という驚きの体験を届けることを目指している。ザッポスのWebサイトには、顧客からの感謝と賞賛があふれており、きわめて高い顧客満足を実現している。(12/17)

news094.gif ちょっとした対話が成長を助ける――上司と部下が話すとき互いに学び合う
上司や先輩の背中を見て、仕事を学べ――。このように言う人がいるが、実際どのようにして学べばいいのだろうか。よく分からない人に、3つの事例を紹介しよう。(12/11)

news094.gif 悩んだときの、自己啓発書の触れ方
「自己啓発書は説教臭いから嫌い」という人もいるだろう。でも読めば元気になる本もあるので、一方的に否定するのはもったいない。今回は、悩んだときの自己啓発書の読み方を紹介しよう。(12/5)

news094.gif 考えるべきは得意なものは何かではなく、お客さまが高く評価するものは何か
自社製品と競合製品を比べた場合、自社製品が選ばれるのは価格や機能が主ではない。いかに顧客の価値を向上させることができるかが重要なポイントになる。(11/21)

news094.gif なんて素敵にフェイスブック
夏から秋にかけて行った「誠 ビジネスショートショート大賞」。吉岡編集長賞を受賞した作品が、山口陽平(応募時ペンネーム:修治)さんの「なんて素敵にフェイスブック」です。平安時代、塀に文章を書くことで交流していた貴族。「塀(へい)に嘯(うそぶ)く」ところから、それを「フェイスブック」と呼んだとか。(11/16)

news094.gif 部下を叱る2つのポイント
叱るのは難しい。上司だって人間だ、言いづらいことを言うのには勇気がいるもの。役割だと割り切り、叱ってはみたものの、部下がむっとしたら自分も嫌な気分になる。そんな時に気をつけたいポイントが2つある。(11/14)

news094.gif 第6回 幸せの創造こそ、ビジネスの使命
会社は何のために存在するのでしょうか。私の考えはシンプルです。人間のすべての営みは、幸せになるためのものです――。2012年11月発売予定の斉藤徹氏の新著「BE ソーシャル!」から、「はじめに」および、第1章「そして世界は透明になった」を6回に分けてお送りする。(11/8)

オルタナティブ・ブログは、専門スタッフにより、企画・構成されています。入力頂いた内容は、アイティメディアの他、オルタナティブ・ブログ、及び本記事執筆会社に提供されます。


サイトマップ | 利用規約 | プライバシーポリシー | 広告案内 | お問い合わせ