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今回は、インバウンド型エンタープライズビデオの概要・種類・効果について考えてみたい。インバウンド型エンタープライズビデオは、企業が配信するビデオを自社の従業員が視聴するモデルのことを言う。いわゆる、ビデオの社内利用だ。よって、取り扱うコンテンツの内容がアウトバウンド型とは違ったものになるのはもちろん、ビデオを導入する目的や、導入する際の注意すべきポイントなどについても、インバウンド型特有の特長があるので注意が必要だ。

 ● インバウンド型エンタープライズビデオの定義

 ⇒ 企業のビデオ社内利用。社内コミュニケーションの活性化と従業員の知識・スキル向上が目的

以下にベースとなるスライドを用意したので参考にしてほしい。

1

■ インバウンド型エンタープライズビデオの種類と特長

インバウンド型エンタープライズビデオは、大きく二つのタイプに分けることができる。社内コミュニケーションの活性化を目的に導入する社内広報ビデオと、従業員の知識とスキルの向上を目的に導入する教育・研修ビデオだ。他にも、研究・開発や営業ツールとして活用する事例もあるのだが、今回はこの2つのタイプについて詳しく説明したいと思う。

 ● 抑えておきたい重要なポイント

 インバウンド型エンタープライズビデオには大きく2つの活用タイプがある。

 ① 社内広報ビデオ

 ② 教育・研修ビデオ

では、先に社内広報ビデオから説明しよう。

1. 社内広報ビデオの種類と特長

インバウンド型エンタープライズビデオの活用方法として、一番事例の多い活用方法が社内広報ビデオだ。従業員が増え、組織が大きくなるに過程において、ほとんどの企業が、社内のコミュニケーションをいかに活性化させるかという課題に直面することになる。そして、その社内コミュニケーションに関する課題を解決するための活用方法として導入されることが多いのが、社内広報ビデオだ。

この社内広報ビデオにもいくつかの種類がある。ここでは、それぞれの具体的な活用方法を紹介したい。

(1) トップメッセージビデオ

トップメッセージビデオというのは、経営のトップが、メッセージをビデオで従業員に伝えるという活用方法だ。主に、以下のような活用方法が考えられる。

 ① 新年の挨拶
 ② 年度始まりの挨拶
 ③ 業績の説明
 ④ 経営方針
 ⑤ 会社の歴史

この中にあって一番多いのが、新年や年度の始まりに述べる挨拶・訓示だ。全国に支店や営業拠点を展開している企業や、販売店舗を展開している企業の場合、節目のタイミングで、従業員全員を集めて直接メッセージを伝えることは不可能である。よって、経営トップのメッセージを、ビデオで全従業員に伝えることができるトップメッセージビデオは、最近注目を集めている活用事例の一つである。

企業の業績を、ビデオで全従業員に伝えるという活用方法も最近増えている。企業の業績をビデオで伝えると聞くと、普通IRビデオとしての活用方法を想定されると思うが、従業員に向けて自社の業績を説明することは、従業員のモラル向上にとって非常に効果がある。IRとして活用しているのであれば、是非導入してほしい活用方法の一つだ。

企業の経営方針や会社の歴史を、経営トップがビデオを通して語りかけるという活用方法もある。この活用方法は、量販店、携帯ショップ、眼鏡チェーン、外食チェーンなどの、全国に数多くの販売店を抱えている業態に比較的多い。

というのも、販売店の場合、店舗のオーナーにかなり強い権限が与えられているケースが多く、どうしても現場志向になりがちである。また、従業員も現地で採用するケースが多いため、企業への帰属意識がどうしても薄れがちになってしまう。よって、経営トップが、自ら本社・本部の経営方針や会社の歴史などを語り、それを店舗に勤める従業員に見せることは、企業への帰属意識を高めるために非常に高い効果がある。この会社の経営方針や歴史をビデオで伝える活用方法も、最近注目されているトップメッセージビデオだと言える。

今回紹介した活用事例以外にも、経営トップがビデオで伝えるべきメッセージがまだあるはずだ。気恥ずかしい、面倒臭いという抵抗感もわかるが、過去の事例から見て導入効果は間違いなくある。それに、何よりも従業員が望んでいるケースが多い。

(2) ニュースビデオ

ニュースビデオというのは、企業に関連した重要なニュースを、ビデオで従業員に伝えるという活用方法だ。主に、以下のような活用方法が考えられる。

 ① 新製品の発表・記者会見の報告
 ② 営業会議の報告

ニュースビデオは、企業に関連したニュースや、定期的に開催されている管理職会議や営業会議の様子などをビデオで従業員に伝えるといった内容がメインになる。新製品や新しいサービスを発表した際の記者会見の様子や、実際のデモンストレーションも主なコンテンツになり得る。

また、営業会議、支店長会議などといった、組織内で定期・不定期に行われている会議の様子を報告する内容もニュースビデオの中に含まれる。経営トップが伝えるまでではないが、従業員に是非知っておいてほしい情報が、ニュースビデオのコンテンツに含まれると考えてもらえればいいだろう。

ちょっと変わった事例としては、入社式、運動会、社員旅行、ゴルフコンペなど、社内で行われる様々なイベントの映像を、ニュースビデオとして配信している活用事例もある。イベントごとの多い企業であれば、それこそコンテンツに困らないのがニュースビデオだと言えるだろう。

(3) 事業所・社員紹介ビデオ

事業所・社員紹介ビデオは、地方にある事業所のユニークな取組み方や、従業員をビデオで紹介するといった活用方法だ。この事業所・従業員紹介ビデオも、全国に支店、営業店、販売店を構える企業の導入が最近増えている。

店舗内のレイアウトを変えることによって売上が上がったとか、その店舗が独自に工夫を凝らして取組んでいる施策とかをビデオで紹介するのが主なコンテンツになる。企業が決めた統一化されたオペレーションがあったとしても、店舗独自の工夫はある程度許されている。店舗独自の取り組み、特に成功事例ともなれば、企業側も全店舗で共有させたいと考える。期待以上の効果の出ている事例が少なくない。

販売店舗に勤務する従業員は、店舗のある地元で採用するケールが多い。よって、他店舗に勤務する従業員の顔もほとんど知らないのが普通だ。よって、従業員をビデオで紹介することができる従業員紹介ビデオは、全国展開しているFCなどの業態が導入するケースが多い。

2. 教育・研修ビデオ

次に、インバウンド型エンタープライズビデオのもう一つの活用方法である、教育・研修ビデオの活用方法を紹介したい。この教育・研修ビデオは、マナーや接客などの基本動作を学ぶマニュアルビデオと、セールトークなどのスキルを学ぶスキル学習ビデオの2種類に分類することができる。それでは、それぞれの具体的な活用方法を紹介したい。

(1) マニュアルビデオ

マニュアルビデオは、接客マニュアルビデオと業務マニュアルビデオに分類することができる。

① 接客マニュアルビデオ

飲食やアパレルなどを始めとした接客がメインの業態の場合、どこの企業でも必ず接客マニュアルを作成している。そして、その接客マニュアルのほとんどが、紙で作られたものが多いというのが現状である。接客マニュアルビデオは、その接客のマニュアルを全てビデオ化し、読んで学ぶのではなく、見て学ぶという点に特長がある。

制服の正しい着用方法、お辞儀の仕方、スマイルの仕方など、接客マニュアルビデオがカバーする範囲は広い。また、接客マニュアルビデオは、見て学ぶだけで基本的な動作を習得することができるという、その手軽さか何と言っても魅力だ。飲食、量販店、アパレル、携帯ショップなどで導入事例が多い。

② 業務マニュアルビデオ

業務マニュアルビデオがカバーする範囲は、接客マニュアルビデオ以上に広い。業種によって、様々な活用事例が報告されている。

例えば、レストラン、居酒屋などの飲食チェーンでよく活用されている事例に、調理のレシピビデオがある。調理のレシピ(作り方)をビデオで説明するマニュアルビデオの一種で、紙や写真のレシピよりもわかりやすいという特長を持っていることもあり、最近導入する企業が増えている。見た通りに真似るだけで良いこともあって、パートやアルバイトなどの教育に非常に効果を発揮する。

また、スーパー、百貨店、コンビニエンスストアなどで活用されている事例に、包丁やまな板の洗浄方法などをビデオで説明する衛生管理マニュアルビデオや、レジの操作方法をビデオで説明するオペレーションマニュアルビデオなども、業務マニュアルビデオの活用方法として人気が高い。

(2) スキル学習ビデオ

一方、同じ教育・研修ビデオでも、基本的な接客や業務オペレーションを学習するのではなく、もっと高度なセールストークや専門的な業務知識を学ぶ活用事例もある。

① 営業トーク学習ビデオ

人間の行動パターンや話し方を学習するためには、実際に話しているところを見て真似をするのが一番である。よって、営業成績優秀者の行動パターンやセールストークをビデオで学習することは、非常に高い効果が見込めることから導入する企業が多い。

生命保険を始めとした金融業界、住宅販売業界、販売点を構えるFC業界、高度な知識が必要な医薬品業界などが、営業トーク学習ビデオを導入している。営業スキルは、企業の収益に直接影響を及ぼすことから、今後も導入する企業が増えてくることが予想される活用方法であると言える。

② 業務知識学習ビデオ

また、企業にとって必要な広く一般的な知識を習得することがを目的とした、業務知識学習ビデオも導入する企業が多い。この業務知識学習ビデオは、それぞれの業界によって優先するべき業務知識が異なることから、業界によって特長の出やすい分野でもある。

具体的な事例としては、企業のコンプライアンスに関する知識、個人情報の取扱いに関する知識、情報セキュリティに関する知識など様々な内容のビデオがある。また、この業務知識学習ビデオは、eラーニングサービスと組み合わせた事例も最近は登場してきている。集合教育・研修を補完したり、繰り返しの学習が必要な分野に向いている活用事例だと言っていいだろう。

■ インバウンド型エンタープライズビデオを導入する際のポイント

では、インバウンド型エンタープライズビデオを導入する際に注意しておきたいポイントとは何か、過去に手掛けた実際の事例を参考に考えてみたいと思う。

1.セキュリティ

一番問題になるのがセキュリティだ。インバウンド型エンタープライズビデオの場合、内容から言って基本的には社外秘扱いとなるのが当たり前である。企業によっては、自宅や外出先から視聴できないようにしたいというニーズがあがってくるケースも珍しくない。よって、企業のグループウェアに一度ログインしてから、ビデオにアクセスすることが可能になるような仕組みを採用するなどして、セキュリティを確保することになる。

2.企業内ネットワークの帯域

次に問題となるのが、企業内ネットワークの帯域だ。企業によっては、ビデオが満足に視聴できない弱い帯域のネットワークを導入たままのところも珍しくない。企業側がインバウンド型エンタープライズビデオの導入を望んでも、ネットワークの問題から導入ができないという事例が最近多発している。ビデオが満足に視聴できる環境にあるか、事前に調査しておくことが必要だ。

3.ビデオの供給体制

ビデオをどうやって供給し続けるかというのも重要な問題だ。インバウンド型エンタープライズビデオは、定期的に供給し続けることが重要になる。よって、望ましいのは社内にビデオの企画・制作を担う部門を作ることだ。できれば、スタジオもあった方がいいだろう。要員を自社で用意するかアウトソーシングするかはともかく、社内に体制を構築しておくことだけは必要になる。

4.従業員に視聴を義務付ける

インバウンド型エンタープライズビデオを導入してみたものの、効果があまり現れず、導入を止めてしまった事例もいくつかある。そして、その最大の原因が、従業員の視聴率の低さによるものだ。よって、導入したからには、ビデオの視聴を従業員に義務付けることが必要になってくる。実際、インバウンド型エンタープライズビデオを導入して成果をあげている企業は、従業員に視聴を義務付ける様々な施策を導入している。

5.マルチデバイスな視聴環境

インバウンド型エンタープライズビデオも、もはやPCだけで視聴するという時代は終わっている。iPhoneを始めとしたスマートフォンや、iPadでビデオを視聴させるという企業がもの凄い勢いで増えている。セキュリティ面での課題も残されてはいるが、マルチデバイスな視聴環境は、インバウンド型エンタープライズビデオの普及に欠かすことができない要素の一つなっていることだけは間違いない。

以上で、アウトバウンド型エンタープライズビデオと並ぶ、エンタープライズビデオのもう一つのタイプ、インバウンド型エンタープライズビデオの説明を終わりにしたいと思う。インバウンド型エンタープライズビデオは、企業が事例を公開したがらない傾向が強いため、アウトバウンド型エンタープライズビデオと比べて知名度という面ではどうしても劣る。しかし、確実に導入する企業が増えている、今後注目しなければならない分野であることだけは間違いない。

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プロフィール

伊藤 靖

伊藤 靖

株式会社リトルウイングス代表取締役。
青森県弘前市出身。大田区蒲田在住。
企業のメディア戦略、コンテンツ戦略、モバイル戦略の構築と実行をサポートするサービスを提供しています。

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