日米スマートグリッドの違い-その2
最近日本に行ってスマートグリッドの取材をしてきた。主な疑問点は次の4点で、大分理解できた.
- 日本でなぜスマートグリッドが必要なのか
- 日本ではスマートグリッドのビジネスチャンスはあまり大きくないのではないか
- スマートグリッドが戦略として捉えられているのか
- 消費者はスマートグリッドについて知っているのか
日本のスマートグリッドは電気自動車、屋根のソーラーパネルからの電力の取り込み、そして自動検針などと言われている。米国のスマートグリッドの柱は電力不足の解消と低炭素化で、これはインフラの不足と老朽化による不安定な電力供給という現状を打開し発電のためのエネルギー源を確保しようという、戦略的な取り組みだ。日本の場合、電力の確保という面についてはソーラーパネルによる発電が想定されているが、これは前面には出ていない。結局低炭素化という点が日本のスマートグリッドの基礎になっているようだ。
以下、米国におけるスマートグリッドの市場の動きを見ながら、それが日本のスマートグリッドとどう対応するか見てみよう。
米国では長年にわたって発電所や送電線に対する投資を怠ってきたので、恒常的に電力が不足している。その上電力網のインフラが老朽化している。そのため、インフラの整備・改善に資金を投下するという方向だ。同時に、電力消費を抑える目的でスマートメータの導入が進められている。電力会社は家庭の電力消費をリアルタイムで把握することで消費を抑える(要求と応答)ことが可能になり、消費者は電力消費量と料金を知ることで消費を抑えることが期待される。このため市場としては、スマートメータ、家庭内ネットワーク、要求と応答といった分野が最初に立ち上がった。最近は、配電網の自動化やモニターに注目が集まり始めている。長期的には、再生可能エネルギーによる発電で生み出された電力の流入の調整や、電気自動車の浸透により引き起こされることが予想される電力需要の変化に伴う電力供給の仕組みなどが課題となる。
日本では発電量が充分でインフラの整備や保守に金が入っているので、更なる投資は小さい。電力が不足していないので、電力会社には需要を抑えようという(要求と応答)大きなモチベーションはない。電気自動車が浸透しても電力不測は起こらないと現在予測されている。スマートメータを設置しなくても時間帯別の料金体系が既にあり、スマートメータの利用は自動検針やサービスの停止・再開の自動化などが中心のようだ。日本の配電網は米国に比較するとしっかり保守されておりモニターの機能も存在するので、配電網に不都合が生じた場合、その検出から修理要員を送ることまで自動的に行うことが可能だ。この配電網だが、今後家庭の太陽光発電による電力の流入をコントロールする必要が生じる。そのため各地点で電圧・電流をリアルタイムで測定することが必要となる。
米国の電力業界は複雑怪奇だ。州によって、場合によっては市町村レベルでも仕組みやプレーヤーが大きく異なる。現在、発電、送電、配電、消費という従来の区分が崩れてきており、この4分野それぞれに特化する新たなプレーヤーやサービスが生まれて始めている。業界の複雑さゆえに問題点も多く、参入は簡単ではないだろうがそのチャンスは大きい。米国の電力業界はダイナミックに変化していると言える。
さて、日本国内でのビジネスチャンスはどこにあるのだろうか。なかなか悩ましい質問である。米国でもそうであるように、日本は今スマートグリッド バブルだ。参入し易い分野というと、家庭内の電力消費を測定しそれをスマートメータに送信するという分野だろう。但しこの分野は参入が簡単な分、競争が激しい。結局は電力会社と組んでデータの提供を受けられる会社が勝つだろう。また、電力消費データを表示するだけでは長く持ち堪えられないのではないか。他のサービスと組み合わせることが必要だ。
その他に考えられるのは、何万~何百万という家庭から太陽光発電による電力をスムーズに配電網に取り込む技術や、発電量に応じて蓄電・放電する方法を開発することだろう。電気自動車の充電技術の更なる改良やそれに関連する技術の開発も考えられる。更に、日本の電力網技術を海外で展開することも視野に入るだろう。
ところで、スマートグリッドにおけるICTの役割やスマートメータについての記事を某所で今週末から3回にわたり連載する。それも参考にされたい。