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「学習負担」という言葉に潜む罠・学習は仕事そのものという発想の大切さ

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先日、アジャイル開発やシステム内製化といったテーマで、先進的な取り組みをされている方々と語り合うイベントで、ファシリテーターを務めさせていただきました。熱気あふれる議論の中、ある受講者から登壇者へ、こんな質問が投げかけられました。

「アジャイル開発に取り組むにあたり、初期の学習コストは相当なものだったのではないでしょうか? その負担をどう乗り越えられたのですか?」

登壇者の方は少し言葉に詰まり、困惑した表情を浮かべました。無理もありません。新しい挑戦に学習は不可欠であり、それを「負担」と捉えるか否かは、個人の意識の問題でもあるからです。結局、「ええ、まあ、確かに学習は必要ですが...」といった、どこか歯切れの悪い回答に留まりました。

私は、このやり取りを間近で見ていて、ある種の「残念な気持ち」と危機感を抑えることができませんでした。それは、登壇者の歯切れの悪さに対してではなく、質問の根底に潜む「新しいことへの挑戦=負担」という、IT業界に静かに蔓延る"病"のような認識そのものに対してです。

「学習負担」という言葉に潜む罠

もちろん、日々の業務に忙殺され、新たな知識習得にまで手が回らない、時間的にも精神的にも「負担」に感じてしまう、その切実な事情も痛いほど理解できます。しかし、IT業界に限らず、どんな仕事においても現状維持は緩やかな後退を意味します。変化を恐れず、常に新しいことに挑戦し、改善と改革を繰り返していくことこそが、プロフェッショナルとしての仕事ではないでしょうか。

そう考えると、「学習負担」という言葉は、本来仕事と不可分であるはずの「学習」を、あたかも別個の「コスト」や「余計なタスク」として切り離してしまっているように聞こえます。本当にそれで良いのでしょうか。

IT業界における「学び」の現在地

特に私たちIT業界に身を置く者にとって、技術の進化は日進月歩どころか、秒進分歩と言っても過言ではありません。昨日まで主流だった技術が今日にはレガシーとなり、想像もできなかったような新しいサービスが次々と生まれています。

例えば、近年のAI技術の目覚ましい発展と普及は、私たちの働き方を根底から覆す可能性を秘めています。極端な話、「人間がコードを書く」という行為そのものが、近い将来、主要な業務ではなくなるかもしれません。その時、コーディングスキルを唯一の武器としてきたエンジニアは、新たな価値を提供できなければ、その存在意義を問われることになるでしょう。

アジャイル、DevOps、クラウドネイティブといったモダンな開発手法や技術スタックは、もはや「先進的な取り組み」ではなく、これからの時代を生き抜くための「前提知識」となりつつあります。このような急速な変化の渦中で、「学習負担が大きいから」と新しいことへの挑戦を躊躇してしまえば、それは自ら未来への扉を閉ざすことに他なりません。

仕事と学習の境界線は消えつつある

「仕事と学習は別物」と考えている方は、少なからずいらっしゃると思います。しかし、仕事の前提となる基礎や常識が絶えずアップデートされ、不確実性が増す現代において、その二元論はもはや現実的ではありません。

変化に対応できなければ、仕事そのものが成り立たなくなる。この厳然たる事実を前にすれば、仕事と学習を一体のものとして捉え、いかに効率的に、そして継続的に学び続けるかという知恵と工夫こそが、自らの市場価値を高め、未来の選択肢を広げる鍵となるはずです。

いや、むしろ「学習が仕事そのもの」と捉えるべきなのかもしれません。なぜなら、学びを止めた瞬間から、私たちの持つ専門性やスキルは急速に陳腐化し始め、社会に対する提供価値は希薄になっていくからです。それは、プロフェッショナルとしての緩やかな死を意味すると言っても過言ではありません。

未来を拓くのは「学び続ける力」

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これは、どのような職種の方にも通じる普遍的な真理かもしれませんが、ことIT業界においては、この「学習を仕事と捉える」というマインドセットなしに、プロフェッショナルとして活躍し続けることは極めて困難です。

もし、今もなお無意識のうちにでも「仕事」と「学習」を切り離して捉えてしまっているとしたら、それは、極めて危険な状態と言わざるを得ません。自らの成長機会を自ら放棄し、気づいた時には時代に取り残されてしまうリスクを、日増しに高めていることに他ならないからです。

新しい知識やスキルを習得する過程は、確かに楽なことではないでしょう。しかし、その先にある新しい発見や、できることが増える喜び、そして何よりも、変化を乗りこなし自らの手で未来を切り拓いていくという実感は、何物にも代えがたい価値があるのではないでしょうか。

「学習は負担」ではなく「学習は仕事そのもの」。このマインドセットへの転換こそが、変化の激流を乗りこなし、これからのIT業界で私たちが自らの価値を高めのていくことはできません。

今年も開催!新入社員のための1日研修・1万円

AI前提の社会となり、DXは再定義を余儀なくされています。アジャイル開発やクラウドネイティブなどのモダンITはもはや前提です。しかし、AIが何かも知らず、DXとデジタル化を区別できず、なぜモダンITなのかがわからないままに、現場に放り出されてしまえば、お客様からの信頼は得られず、自信を無くしてしまいます。

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