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30年に渡って関わってきた米国のITの出来事、人物、技術について語る。

官から民へ

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ようやくあるコミュニティに属したと感じるのは、仲間うちの飲み会に誘われ始めた時だろう。先日、データセンター関係者の集まりがあった。場所は、スタンフォード大学があるパロアルト市に隣接するレッドウッド シティのレストラン。2年ばかりデータセンターのエネルギー効率化を追いかけて、色々なコンファレンスや個別のミーティングに参加してきたので、そんなことが認められたのだと思う。

集まった皆さん、シリコンバレーのカジュアルのさらにその上を行くデータセンター屋のいでたちだ。筆者はその前にミーティングがあったので、ちょっといい格好をしていたら、なんか浮いてしまった。日頃よく名前は目にするが実際には会ったことのない人や、ずっと前に会ったがそれから音沙汰の無い人たちにたくさん出会った。その中に、米国環境保護庁(EPA)でデータセンターのエネルギースターの仕様などを受け持っていた人がいた。彼は最近EPAを去り、筆者が前にインタビューしたことのある民間の会社に移籍した。彼がEPAに居たときは接点がなかったが、この集まりで筆者がアナリストだと分かると、その新しい会社の話を熱心にしてくれた。

例によって以下に書くのは日本批判ではない。米国がこうでも、日本はそうならないということは十分に理解している。しかし、日本だけ見ていると、そんなものかと思ってしまうことも多いだろう。判断のデータポイントと思って貰えると嬉しい。

EPAのエネルギースターは、エネルギー効率の良いものに与えられる称号のようなものだ。消費者が電化製品を買うときに、どれがエネルギー効率が良いかの指標にするものだ。以前は冷蔵庫、洗濯機、乾燥機、PCのディスプレイなどが対象だったが、昨今のデータセンターにおける電気需要の急激な伸びを反映して、サーバー、ストレッジ、そしてデータセンターそのものにまで対象が拡大した。それを指揮したわけだから、彼の人脈は非常に広い。

何故民間に動いたか、動機を聞くのは野暮である。米国では一般に官に就職すれば人脈を作り経験を積める。数年後には民間での価値が高くなっている。また数年もすると、官での仕事に飽きて新天地を求める傾向が強い。ただこれは日本の天下りとは異なる。EPAの彼の場合、EPAとこの会社が特別な関係にあるとは思えない。彼自ら次の行き場所を探したのだろう。一般に、官の給料は民間に比して高くない。もちろん、終身官で勤める人もいる。

日本の官僚とはあまり付き合いがないので何とも言えないが、こちらの官僚は、官の縛りはあるものの、民間の我々とそれほど違わないように見える。官が民より上だと思っているようにも見えない。そういう意味では、EPAの彼の移籍は、違う世界に入るというようなことではなく、スムーズなんだろう。熱心に今の会社を売り込むのを見ていて、この人が本当にEPAで官僚をやっていたんだろうかと思ってしまう。良くも悪くも自己責任で人生を切り拓いている。

最後に、米国だって色々と問題があるという例を挙げて今回はおしまい。カリフォルニア州知事のいわゆるシュワちゃんの支持率は22%で、これはDavis前知事がリコールされた時の支持率と同じ。えらく低いなと思っていたら、カリフォルニア州議会の支持率はたったの16%だ。人々はいろいろと文句を言う。しかし実際には何も変わらない。日本と同じだ。11月の知事選は、三十数年前に州知事だったブラウン氏とeBayの元CEO、ウイットマン氏の一騎打ちだ。果たして、カリフォルニアは良くなるんだろうか。

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