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30年に渡って関わってきた米国のITの出来事、人物、技術について語る。

日本発のICT技術を売り込め

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筆者が指摘しなくても、日本からIT製品やサービスを担いで米国に殴り込みをかけてくる人は稀だ。日本のIT業界では、アメリカのIT企業には適わないという空気が支配的だ。無理もない。ずっとアメリカ発の製品やサービスに牛耳られ、日本発のIT技術やサービスがアメリカに進出して大成功をしたという話は聞かないのだから。

大企業は何十年間も、米国の市場に参入しようとしてきた。筆者が以前勤めた日本企業は米国でPCの製造や販売を行い、筆者がいた頃はUnixのデスクトップを米国市場で展開しようとしていたが、うまくいかなかった。ソフトも同様。筆者は、日本本社からあるソフトを引っ張ってきて米国で販売しろという大命を受けた。これは完全に失敗に終わった。日本の大企業であることは米国で知られているが、ソフトの会社としては全く認識されておらず、相手にされなかった。それに、手持ちのソフトの中から消去法で選ばれたソフトを展開しようというのも大いに問題だった。市場が求めるソフトを展開するのではなく、「この売れていないソフトを何とかできないか」というモチベーションでは無理というものだ。

これは、家電やアニメの分野で日本がアメリカで知られていることと対象的だ。それじゃ我々IT屋はアメリカITの日本語化と日本市場の営業だけかよ、と拗ねたくもなる。が、そんなことはない。大通りだけが目的地に辿り着く道ではない。正攻法でなくても、間接的でも、日本のITを広げる可能性はある。

このブログはITを機軸にしているのでITネタを中心に書いているが、最近はかなりクリーンテックの分野で活動している。スマートグリッドというと電力やエネルギーの話だと思われがちだが、ITと通信(以後ICT)業界にとっては新たな適用分野だ。電力網は電力を搬送する「土管」とそれを制御するシステムから成り立つ。米国は土管そのものが古くなってきているので、それも取り替えることが必要だ。日本はそうでもないので、スマートグリッドは日本では必要ないと考えられていた。しかし、たくさんの電気自動車を一度に電源に繋いだらどうなるのか、不安定な再生可能エネルギーをどの様に既存の電力網に繋ぐのか、などの問題が指摘されるにつれ、日本でもスマートグリッドが必要だと認識され始めている。制御の部分は非常に重要なのだ。

スマートグリッドに関するICTの応用は日本にとどまらない。アメリカ、そして開発途上国などにも進出できる。クリーンテックについていえば、日本は挫折したような敗北感がなく、むしろ自信を持っているように見える。これは大切なことだ。初めから負けると思って戦いを挑んでは、勝てる勝負も勝てない。自信のあるクリーンテックで海外へ進出して、その技術をICTで支えるという構図ならありそうだ。

スマートグリッド関連での米国への進出はNEDO: 独立行政法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構 が中心となっていて、アメリカの研究所等と協業することになっている。プレスリリースはここ

NEDOの発表したものの中に、「わが国では規制が多く、自由な実験ができないから米国でやる」という内容があったのには苦笑したが、まずまずのスタートを切っているようだ。惜しむらくは、NEDOからあまり情報が出ておらず、実態が掴みにくい。日本に行った際には、スマート コミュニティ アライアンスを訪問して実情を聞いてみるつもりだ。

ところで、日本の技術の英語発信に関しては、スピードは速くないが着実に進んでいる。以前に100人必要と書いたが、すぐに100人を集めるのは無理だろうから、まずは数名から始めるつもりだ。今その為の会則を書いている。太陽光発電やスマートグリッドの話を書いてみた。まずまずの反応だ。興味があればどうぞ。

日本では当たり前に知られていることが、アメリカでは殆ど誰も知らない。残念を通り越して、腹立たしい。

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