フジテレビドラマ「不毛地帯」にみるメディア操縦術
フジテレビドラマ「不毛地帯」を毎週欠かさず見ている。
唐沢寿明演じる壹岐正のモデルとされる伊藤忠商事元会長の瀬島龍三氏。直近の会社の上司が、同じ商社出身だったこともあり、情報管理の考え方が似ていると感心したり、当時は先進的だったであろうメディア対策など、広報面で参考になる。
特に、第2話・3話では防衛庁の第2次防FX(=次期主力戦闘機)の受注に絡み、防衛庁幹部が新聞記者を使ってうわさを流し圧力をかけたり、これに負けじと壹岐も有力政治家を利用したり、告発文書を送ったりと生々しい。
第3話では、壹岐たち近畿商事が推すラッキード社のラッキードF104の欠陥をつかんだ毎朝新聞記者の田原秀雄(阿部サダヲ)の記事を、政治家を使って抑えるが、その翌朝、毎朝新聞ではなく東都新聞に、ラッキードF104の欠陥を訴える記事が掲載されてしまう。
田原が、東都の記者にスクープを譲ったのだが、これは、今でも、有力メディアの記者が、月刊の会員制情報誌に原稿を書くのと同じ構図。記者個人の感情は抑え込めない。どこかのメディアで必ず表面化してしまう。いかに記者に理解して納得してもらっているかが重要なのだ。
その後の危機対応はさすが。
東都新聞の記事を受け、新聞各社からの取材が相次ぐ中、壹岐は、事態を鎮静化させるために、ラッキード社のブラウン社長を来日させ、記者会見を開き、ラッキードF104の性能に対する疑惑を逆手にとって、その安全性をアピールするのである。
クライシスとは「重篤な状況が、良い方または悪い方へと向かう転換点」。逃げたり、ごまかしたりせず、あえて、会見を開いて主張することで、事態をプラス方向に転換させるという危機発生時のセオリー通りのメディア対応だ。
このドラマのエンディングテーマはトム・ウェイツの「トム・トラバーツ・ブルース」。「不毛地帯」の最後にトム・ウェイツが使われるとは驚いた。
懐かしくなって、30数年前の高校生の時に買った輸入盤レコード「クロージンング・タイム」を改めて聞き直した。ワーナーミュージックジャパンが仕込んだのだろうか。我々世代へのPR効果は大きい。