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アメリカの最裕福層が恐れるのは一般大衆が富の公平な分配に向け投票力を公使すること

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マイケルムーア監督の「キャピタリズム マネーは踊る」を見て思ったのですけど、自分のような生活者層の声を政界に届けてくれる政党ってどこになるのかな?とふと考えました。

この映画の中でcitygroupが2005に最裕福層向けに出したレポートが紹介されており、

米国の体制はもはや民主主義ではなく”Plutonomy(プルトノミー)”になったと表しており、これは底辺の95%より多い富を所有する1%の最裕福層が独占的に支配し利益を得る社会のことを表しているようです。

Capitalism

このメモでは貧富の格差に満悦し、富裕層を”the new managerial aristocracy”と称えながらこの成功は当分続くだろうと、

だがここに問題が1つあり、最も短期的に予想される脅威は、正当な富の配分への社会的な要求の高まり、いわは反発が起こる可能性と、非富裕層に経済原動力はないが富裕層と同じ投票力”1人1票の力(one person, one vote)"をもっていることが脅威であると…

じゃあ、なぜ99%の人々は我慢しているのでしょう?シティグループによれば、この選挙民の大半は自分達にも努力を続けていればいつか金持ちになるチャンスが来ると信じているのだそうで、努力さえすれば自分にもいつか必ずチャンスが来ると信じて頑張ってくれる人たちは、前述の正当な富の配分を求める人たちに比べれば、最富裕層にとってはありがたい存在であり、富裕層はアメリカン・ドリームを信じる人々を歓迎するのは当然で、そもそも誰とも富を分け合うつもりなどないのだ…とマイケルムーア監督はまとめています。

この映画をマイケルムーア監督が得意とするプロパガンダとして片付けてしまうのは簡単なのですけど、金融危機に際してポールソン財務長官が提出した法案は国民の税金7000億ドルを借り入れするという前代未聞な規模にもかかわらず、その借り入れに関してはは何の法の適用も受けないというまさに特別待遇。

Sec. 8. Review.

Decisions by the Secretary pursuant to the authority of this Act are
non-reviewable and committed to agency discretion, and may not be reviewed by
any court of law
or any administrative agency. (This is just wrong!!Your
asking the fox to guard the hen house!!)

文書量の内容が正比例するとは限りませんが、これだけのインパクトがある法案がたった3ページのレポートとして提出されたというのはやはり、最裕福層の影響力がどれだけ凄いかというのをうかがい知るには十分ではないでしょうか(ちなみにゴールドマン・サックスのCEOから財務長官に就任した当時のポールソン氏の個人資産評価額は7億ドルだったそうな)

数年前に起きた派遣切りの問題や不景気に伴う発注減により零細会社だけでなく、それなりの議場規模の会社であっても倒産したところがある訳で、「真面目に働いていれば、なんとかなる」というロジックが崩壊してしまい、多くの一般労働者が苦労しているなかで、日本では日本航空が未だに庶民感覚とはかけ離れたところで再建策の協議をしているようです…

このまま破綻すると経済的な影響が甚大だから…という理由で公的資金での救済が行われる場面を我々も数回経験している訳ですが、こういうバリアが働かないところで労働している人と、こうやって守られる人たちの違いってなんなのだろう…とほんと考えてしまいます。

今後アメリカの中産階級がどのくらい復活できるのか?というのは日本がこれから歩む道筋を考える上で重要だろうなと思うのですが、映画「キャピタリズム」の中ではREGIONAL AIR LINESのパイロットの年収が1年目は1万9千ドル、2年目が2万2千か、3千として紹介されており、困窮のあまり食料配給券を受給していたパイロットのインタビューが出てくるのですが、この苦しい台所事情には、その業界のコスト削減圧力も当然ながら、アメリカでの大学卒業までに抱える学生ローンの返済も大きくのしかかっているようです。

資本主義の最先端を行く企業にとっては、儲ける余地があれば確実に儲けるという事…

以前に町山智浩さんの書籍に書かれていた、ウォルマートの従業員の8%は生活保護を受けなければ生きて行けない給与水準だからこそ毎日安売りが出来ている…という話しを紹介させてもらいましたが、ウォルマートは雇用創出のための補助金を受け取るだけではなく、従業員に内緒で生命保険をかけていたというからもう日本人の感覚を超越しているとしか言いようがありません。

ここ最近、中国のFoxconnで自殺が相次いでいるということでApple、Hewlett-Packard(HP)、Dell、ソニーといったメーカーが懸念を表明、30%の賃上げが実施されたらしいですが、Foxconn中国工場の基本的な賃金は月130ドルほどだそうです。

ここで報じられているのは中国企業が労働者から搾取する劣悪な環境で仕事をさせていたような印象がまずしてしまいますけど、根本的にはそういう値段でモノを作れという、日本も含めた各国グローバル企業からの依頼があったからではないか?という考察が含まれた報道があっても良いのでは?と思いつつ、

”Plutonomy(プルトノミー)”とかいう考え方をしている人たちの自由にさせないためにはどうしたものか…と考えるにつけ、80年台の浮かれた空気に乗ってちゃんと足場を固めていなかった自分のアホさ加減を恥じ入りつつ、世の中の景気動向と向き合いながらいかに自主独立した形で生活していくことが可能なのか?というのをトライ&エラーするしかない…と感じる今日この頃です。

P.S.
今回このエントリに貼り付けたリンク先の他にも、映画で登場した記録映像とか書類のたぐいがネットを検索するとちゃんと出てくるのにとっても驚いています。こういう資料が検索可能になっていることも確かに驚きではあるのですが、やはりこういう素材を組み立てて、映画を作ってしまう映画監督の才能というものにも驚かざる得ません。

マイケルムーア監督が取り上げていた、ルーズベルト大統領の第2の権利章典と、ここ最近の米国政治状況についてこちらのブログを読んでから、「キャピタリズム マネーは踊る」を見ると味わい深さが倍増すると思います。

 

佐々木 康彦 Twitterアカウントはこちら。 http://twitter.com/yasusasaki
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