自動車販売会社の業務とそれを支える業務基幹システム(1)~自動車ディーラーとは?および販売の態様について
そもそも自動車ディーラーとはどんな形態の自動車販売会社を指すのだろうか。このことは自分の見解もwikipediaに書いてあることに同じだ。
【参考】wikipedia「自動車ディーラー」項
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%87%AA%E5%8B%95%E8%BB%8A%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC%E3%83%A9%E3%83%BC
ここに、
>中でも、自動車メーカー(または、その販売子会社等)と特約店契約を結んだ販売業者のことを指す。
と書いてある。すなわち自動車ディーラーとは自動車メーカーと直接取引を行っている自動車販売会社のことを指している。昨日記述した各自動車メーカーの供給する業務基幹システムは、ほぼたいていの場合、この直接取引を行っている自動車販売会社に対して供給されるものである。今回自分が書いていく自動車ディーラーは、この業態を指す、ということを前提としておく。
ちなみに、街で見掛ける店舗の見た目からどこが自動車メーカーと直接取引を行っている自動車ディーラーか、という判断を行うのは、その取扱いメーカーによっては意外に難しい。
トヨタ系の場合、トヨタの看板をあげていて、また他の自動車メーカーの看板を上げることなく、店舗がそれなりの規模で作られていて、数年前から始まった新CI(カローラ店:オレンジ、トヨタ店:あずき色、トヨペット店:緑、ネッツ店:青)で彩られている場合、ほぼ直接取引を行っているディーラー、と見て良いが、一部例外がある。
事実、うちの家の近所に、前述の条件に全てあてはまるが、直接取引を行っていないらしくトヨタ自動車のホームページ上の店舗検索では表示されない“自動車ディーラー”(少なく共その会社のホームページにはしっかり書いてある)がある。
ただ誤解しないでいただきたいのは、自動車販売会社としての善し悪しが、直接取引を行っている店>そうでは無いお店、という序列になっている、ということでは絶対無い。あくまでその地域にてしっかりとお客様に愛されることができている、ちゃんと本業を真面目に行っているお店であることが一番だし、何よりお客様がどのような選択をするかどうか、が一番重要である。
さて、自動車メーカーと直接取引をしていない自動車販売会社は自動車をどこから仕入れるか?当たり前の回答になってしまうが、自動車ディーラーから行う訳である。この時、自動車ディーラーは一般個人に対する販売ではなく、それを生業とする業者への販売・・・すなわち“卸”機能を持つことになる。
前述の一般個人に対する販売形態を“直販(ちょくはん)”とよび、後者の“卸”的な販売形態を“業販(ぎょうはん)”と呼ぶ。自動車ディーラーによっては“直販”の営業スタッフと“業販”の営業スタッフを明確に組織分けしている場合もあれば、“業販”専用の自動車ディーラーも一部自動車メーカー系によっては存在している。
単純に業務効率上のケースもあれば、一人の営業スタッフがどちらも兼ねてしまうと、場合によっては、お客様が自動車ディーラー自身と、“業販”先である地域の自動車販売会社の両方を天秤にかけてしまったりして、結果、地域の自動車販売会社との心理的いざこざが起きてしまうことを避ける意味もあるようである。
“卸”機能なのだから当然と言えば当然なのだが、“業販”を行う場合は、“直販”を行う場合の掛け率よりは若干低くなっている。ただしそこにはその“業販”先がより多くのお客様を見つけてきてくれて、自社で抱える営業スタッフよりも効率的に販売してもらい、たくさんの販売台数が見込まれる場合に限られる。
よりたくさんの自社製品を販売してくれた前年実績により、その“業販”先としてのランク付けを行い、またそのランク付けによって掛け率を変更しているケースもある。何より継続的な業者間取引を行うには、当然掛け率だけの問題だけではなく、掛け売りの必要も場合によっては出てくるので、相手先に対する信用問題もある。
したがって、全ての“業販”のケースが“直販”よりも安い価格で卸をしているか、と言えばそうとは限らない。ただ年間数台かもしれないが自社製品を購入してくれることになったお客様を見つけていただいた、ということで、前述のような掛け率による卸販売ではなく、一般個人のお客様自身が別のお客様を紹介してくれた時と同様に、“手数料”で感謝の意分を支払う取引もある。掛け率販売を“仕切販売”といい、後者の手数料支払いの販売形態を“手数料販売”という
注1:一部の自動車メーカーだけかもしれないが・・・。
注2:掛け率、と言っても具体的なパーセンテージ、よりも、車種別の値引き枠、ととらえていただいた方が正確かもしれない。
“業販”の話を他流通業界の人とすると、「それって法人営業のようなものですか?」と言われるケースがある。自分の解釈だと自動車販売業界における“業販”と“法人営業”は明確に異なっている。
“業販”はそれを仕入れることになる自動車販売会社が他のお客様に販売することを目的としていることを自動車ディーラー自身が事前に承知の上で販売することであり、“法人営業”は営業先の法人自身が利用することを前提としている。
ごく大抵の場合、“法人営業”の営業先=大口ユーザー、であり、またごく大抵の場合、一度に購入する車両の仕様が一定である。
自動車ディーラーの規模によっては、“法人営業”先の法人規模や事業規模にも十分耐えうる営業部隊を持たれている場合もあるが、例えば、大口も大口、全国に支店や営業所を構えるような法人に対しては、結果として購入していただいた車両をそれぞれの全国の支店や営業所への配送やその後のアフターサービスをどうやって一地域のディーラーで見ていくのか、というネガ要素を排除できた状態で営業を行う必要があるので、一自動車ディーラーだけで行うことは稀のように聞いている。
その場合、自動車メーカー自身内に組織している“法人営業”部隊が一旦受注を代行する、という形を取っておき、結果として納車されるロケーションに近いディーラーにその契約を分配することにより、自動車ディーラーとしてはその販売に伴う利益は得られないものの(大口購入による相当なディスカウントがあるらしい。さすがにその額は知らない)、実績およびその後のアフターサービス収入を得られる、というケースがある。
このように、自動車の販売方法そのものにもいくつか種類があるため、各社の自動車ディーラー向け業務基幹システムは、またその各社の商売特性に対して強化されている部分が存在している、と聞いている。
※前回、”次回は未定だが・・・。”としつつ、ついつい連投。次こそ未定です・・・。