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自動車販売会社の業務とそれを支える業務基幹システム(0)~まえがき

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次のシステムの愛称をご存じだろうか。

「ai21」、「PROFIT 4th」、「e-Dealer」。それぞれ“あいにじゅういち”、“ぷろふぃっとふぉーす”、“いーでぃーらー”と発音する。

これらをご存じの方は少ないのでは無いか、と勝手に想像する。ご存じの方は、逆に言えば、関係者か、ユーザーか、通(つう)か、業界研究者か、マニアの方か、だろう。

いずれも、国内自動車メーカーが供給する、取扱い自動車ディーラー向けの業務基幹システムである。言わば独自のERPである。前述のものは、順に、トヨタ、日産、ホンダのものである。この3社に限らず、やはり他の国内自動車メーカーもそれぞれが独自のERPシステムを構築し、取扱い自動車ディーラーに供給している。

特に語られることも無いので当たり前、と言えば当たり前だが、自動車ディーラーが、その商品を開発・製造している自動車メーカーとは別会社であることを知っている方は少ない。もちろん、その自動車ディーラーの経営形態は色々あって、中には自動車メーカー自身が直接資本を投入している場合もあるし、経営陣を送り込んだりし、結果として、自動車メーカー自身の連結対象となっていることも少なくない。しかし、自動車ディーラーは、それが存在しているエリアにおいて、そのエリアのお客様に対して流通業としての地位を築く、または守る必要があり、何よりその会社に直接就職している方々が多い訳である。そんな中で、自動車メーカーが例え直接資本を出している場合においても、自分達の理論を振りかざして地域に根付いた企業運営ができるか、というとそれはまず難しいだろう。したがって、自動車ディーラーとして、本来ならばその企業運営を行うにあたって、それぞれが独自に業務基幹システムを持つべきではある。

一方で、自動車ディーラーの企業規模は、またそのメーカー系列、ディーラーとしての成り立ち等により千差万別である。元々そのエリアの有力企業であった会社が事業多角化、副業として自動車ディーラーを始めるケースもあれば、地域密着型の家内制手工業的自動車屋が発展し自動車ディーラーになったり、従業員規模も、グループ全体で数千名におよぶ企業から数名、その多くが親戚関係というケースもある。そんな中、自動車メーカー自身が自分達の商品をより多く販売してもらうために、また、それに際しての自分達の業務を簡略化するために、多くの自動車ディーラーにおいて共通業務である発注や代金精算のための自動車ディーラー用システムを開発したり、また自動車メーカーとしての製造物責任を果たすため、顧客管理や車両情報管理をするためのシステムを提供し、自動車ディーラーに供給することになったのは過去国内の自動車販売の発展の歴史上必然のことだった、と思われる。

余談だが、前述のように自動車ディーラーは自動車メーカーとは別会社であるので、システムを供給、と言っても、実際はシステム使用料を徴収することになる。受益者による開発費負担、という単純明快な考え方だけではなく、仮に自動車メーカーがシステム使用料を徴収しなければ、自動車ディーラーに対するインセンティブ、贈与が発生する、という税務上の問題もあるらしい、という話を聞いたことがある。したがって、某かのシステム費用が発生する中、企業規模の大きい自動車ディーラーでは、より自由度、柔軟性を高めるために、自動車メーカーが供給するシステムの利用はごく一部に留め、自社もしくは自社グループ内にそれなりのIT部門を持ち、ほとんど自前でERPを運用している、というケースも聞いている。

自分がこの業界に入ったのは、まだ“IT”なんて言葉は生まれる余地もなく、“OA”という言葉で語られていた頃。ネットワークも細い線しかなく、前述のような業務基幹システムはオフコンで稼働し、何よりシステムは業務を簡略化・単純化することが目的だった。“マルチメディア”という、何だか格好良いような、でもどれだけ役に立つの?というよくわからないキーワードが出始めた頃でもある。費用対効果がよくわからないなりに、キャッチアップしておかないと後で乗り遅れるかも、という脅迫観念だけは関係者の心にのしかかっていた。それでも、自動車ディーラーのシステムと言えば、ほぼ業務基幹システムの部分だけを言い、キャラクターベースのインターフェースで、システムの中身も現在に比べれば単純で、何より、利用者と開発の現場の距離が近く、リソースの配布には苦労しても、某かの要望対応やバグフィックスには比較的応えやすい状況ではあった。

それからかれこれ15年の月日が過ぎ、ハードやソフトウェア技術は格段に進歩した。自分が見聞きできる範囲で言えば、ユーザーインターフェースも相当変わってきて、格好良い、というか“今風”というか、ある面、昔の業務基幹システムとは比べものにならない立派さはある。一方で、自動車ディーラーの業務そのものは大変貌を遂げた、とは言い難いと個人的に思っている。自動車を販売し、そのお客様を継続的にフォローでき、またアフターサービスを行い易くし、企業運営をする、という面で。もちろん市場環境変化や取り巻く法制の変更等々変化要素は小さいものからあげていけばいくらでもあるが、例えば駅前の商店街がすっかり廃れ、郊外型大規模ショッピングセンターがあちらこちらにできる、といった業態の変革は、今のところ自動車販売業においてはそれ程大きくは無い。そこでふとITの進化は自動車販売業に何をもたらしたのか?と疑問に思ってしまった。したがって、それを世に問いたい、などと大上段に構えることはしないしできないが、自動車ディーラーの業務とそれを支えるシステムについて、自分が今まで見聞きしてきた現状を棚卸しすることにより、改めて検証してみたい、と思った訳である。

“OA”の時代からで言えば、こういったシステムに携わった経験のある人で、既に定年を迎えられてる方も居られるか、と思う。たかが15年程度で何がわかる、という方も居られるか、と思う。でも、“一般的な商品”ではない、自動車ディーラーの業務基幹システムに携わる多くの人々が、それぞれ多く苦労と努力をされている中、(企業上の機密部分は別にして)もっと陽が当てられてもいいのではないか、と思う。そういう中で、数々のご指導・ご鞭撻を賜れば幸いである。

※一応、余程のことが無い限り続けて書く予定。次回は未定だが・・・。

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