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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

「自分のUSP」などという人に騙されてはいけない

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さすがにマーケティングの専門家で間違える人はいないようですが、一部の起業や集客のコンサルタントにはUSP(Unique Sales Proposition)という言葉を間違った意味で使っている人がいます。

たぶん、「Proposition」(提案)という英語が分からないのでしょう。「独自のウリ」という(誤)訳をします。これだと、コア・コンピタンス(中核的な強み)とごちゃごちゃになってしまいます。

ごちゃごちゃになった人たちが、「起業や集客がしたければ"自分のUSP"をまず明確にしましょう」などとやってしまうわけです。

もちろん、知識が曖昧でも成功している人はたくさんいるし、その人たちに学ぶことに意義がないとまでは言いません。特に事例は大いに参考になるでしょう。ただ、用語の使い方が不正確な人が、自分の成功体験を人に正しく伝えることなど原理的にできません。

よほど勘のいい人か、解釈力の高い人以外は、そのような人から学んでも得るところはないと言えます。こういう人が多いため、"先生"側だけが栄え、"生徒"からほとんど成功者が出ないいうことが起こりがちです。

●USPとコア・コンピタンスの違い

セミナー業界の暴露めいた話はこれぐらいにして、USPとは何か、またコア・コンピタンスとどう違うのかを事例で見てみましょう。

有名なのは、ドミノ・ピザです。

30分でピザをお届けできない場合は半額にするというやつです。

これが、コア・コンピタンスでないことは一目瞭然でしょう。もし、コア・コンピタンスを言うのであれば、30分以内の配達を可能とする店舗網と店舗でのオペレーションということになります。

セブン・イレブンの例も有名です。

今でこそ24時間営業があたりまえになっていますが、セブン・イレブンが出てきた当時、開店7時閉店23時というのはあり得ない業態でした。「セブン・イレブン、いい気分」という当時のCMのキャッチフレーズはいまだに耳に残っています。

しかし、これもコア・コンピタンスでないのは明らかです。コア・コンピタンスは、このような業態を可能とする、配送力、店舗教育のしくみ、レジのシステムなどです。

日本が誇るべきUSPの事例は、越後屋(今の三越)の現金掛け値なし販売です。

世界史上初という人も多いようです(僕は調べていないので断言できません)。これによって庶民が呉服を買えるようになり、越後屋は爆発的に大きくなりました。

これもコア・コンピタンスをいえば、仕入力や広告力(曲亭馬琴などがチラシを書いています!)および現金販売を可能とする店舗オペレーションなどとなります。

そして、このどれにも共通のコア・コンピタンスは、業界の前例や慣習を前提としない自由な発想力となります(これは、ラテラル・シンキング(※)の能力の高さだと言えます)。

以上、USPとコア・コンピタンスの違いはお分かりになったと思います。

※ラテラル・シンキングについては、この人が今の日本で第一人者と思います。→ http://mbp-tokyo.com/soeiken/detail/

●「自分のUSP」なんてあり得ない

USPとは、あくまで顧客への提案なんですね。その中で、ものすごく訴求力の高い提案のことをUSPと呼ぶのです。となると、「自分のUSP」なんていう言葉はおかしいわけです。だって、USPというのはどんどん新しくしていかないといけないからです。

USPは提案ですから、あくまで手段(どうやって)です。下図を見てもらうとわかりますが、「どうやって」は「変える」部分です。

2014052001.pngUSPぐらいの強烈さがあれば、そんなに頻繁に変える必要はありませんが(とはいえ、今では1年もたないのがほとんどでしょう)、成功している間に次のUSPを考える必要があります。

●USPはレッド・オーシャンの呼び水

というのは、先ほど挙げた有名事例を見てもらっても分かるように、USPとはそのうち必ず真似されるからです。

それどころか、その強烈な訴求力ゆえ、USPはレッド・オーシャンの呼び水になります。もう真似しないと生き残れないぐらいのインパクトがあるからです。牛丼業界の信じられないような値下げ競争がその分かりやすい例です。

なので、「自分のUSP」なんてとんでもない話です。どんどん、あなたのモノマネが市場に参入してきて、誰が本物なのかすぐにわからなくなります。まさに「血みどろの海」です。

●先に見つけるべきは、コア・コンピタンス

それよりも大切なのは、コア・コンピタンスです。これとラテラル・シンキングがあれば次々とUSPを生み出していくことができます。

コア・コンピタンスを考えるときに必要なのは、前掲図の「変えない」と「決める」の部分です。ここを明確に言語化するのが、僕の提唱している「自分軸」です。自分軸が言語化できると、コア・コンピタンスも自然と導き出されます。

「自分のUSP」などと聞くと、それを「自分軸」と勘違いする人がいるのではないかと僕は危惧しています。そんなものは言葉の定義としてあり得ないし、仮に作ったとしてもモノマネだらけになります。

しかし、自分軸は他人には真似できません。似たような自分軸は確かにありますが、経験や考え方(なぜ)をベースにしているので、必ず唯一無二のものとなります。

USPを考えるのは大切なことです。しかし、その前に自分軸を言語化し、そこから導き出されるコア・コンピタンスを明確にしておく必要があるということです。USPありきだと、そのUSPに効力がなくなったら終わりなのです。

(セブン・イレブンの例は業態という企業の根幹に関わる部分なので、まずUSPありきだったかもしれません。ただ、それを可能にするためにはどのようなコア・コンピタンスが必要かを展開前に一生懸命考えたのは間違いないでしょう。)

順番を間違えてはうまくいきません。これは、順番を間違えた僕だからこそ断言できます。そう。僕も、「自分のUSPを作ろう」なんていうコンサルもどきに騙された口なんですよ。

「自分のUSP」などというまがい物ではなく、きちっとした「コア・コンピタンス」を作りたい方は、どうかこちらもご参照ください。
http://www.itbt.biz/jibunjiku/jibunjiku_navi.html

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