オルタナティブ・ブログ > ビジネスライターという仕事 >

ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

「ユーザーファースト」って誰もが知っている言葉だったのか?

»

まあ、どうでもいい話だし、ヤフーを貶める意図はもちろんないのだけれど、釈然としないのです。

ヤフーのビッグデータ活用はたぶん素晴らしいのだと思うのだが、「ユーザーファースト」という言葉が分からず、正直イライラしてしまったので、ヤフーの偉大さが理解できず残念な思いをしているのである。

 

●ヤフーの実現してきたことが分からない

 

「ユーザーファースト」って何? 本当に誰もが知っているような言葉なのか?

僕がモノを知らないのは認めるが、大多数の人が知っているか、辞書を調べたら載っているような言葉でもないかぎり、注釈があってもいいかなと思う。

というのは、「ヤフー流のマルチビッグデータ戦略--データ統括責任者に聞く」という記事を読んでいて、次の文章の「ユーザーファースト」の意味がさっぱり分からなかったからだ。

こうした細かな改善の積み重ねによって、ヤフーならではの優位性を生み出していると小間氏は語る。「検索ではGoogleを使っている人もいるし、ECだと楽天やAmazonを使っている人もいる。けれど、データトラフィックやユーザーリーチなど、データ面では我々が圧倒的にナンバーワンだと思っている。この強みを徹底的に生かすことで、ユーザーファーストを実現してきた」(小間氏)。

説明はどこにもなく、誰もが知っている言葉と見なされているようである。しかし、僕にはヤフーが実現してきたことが何なのか、正直分からない。

なお、小間氏はヤフーのデータソリューション本部長で、たぶんヤフーの「データサイエンティスト」(死語化希望)の親分だ。

 

●ヤフーのデータソリューション本部長か日経BPかどちらかが間違っている 

 

そもそも"User First"なのか"User Fast"(こんな英語はないかもしれんが和製英語なら何でもありだ)なのかも分からない(FirstとFastは発音は違うが、カタカナで書くと「ファースト」にせざるを得ないことに関してはこちらを参照)。

そこで「ユーザーファースト」検索してみた。『ユーザーファースト』という本が日経BPから出ているらしく(著者はヤフーのマーケティングの偉い人のようだ)、アマゾンにこう載っていた。

自分が使ってダメなサービスは絶対にユーザーには勧めない、という至極当たり前のことを意味する言葉だ。

「ヤフー現社長の宮坂学は就任時に、新体制においても決して変えてはいけないものの1つとしてこのワードを挙げた」(前掲ページ)らしい。

さきほどの小間氏の言葉にあてはめてみよう。

データトラフィックやユーザーリーチなど、データ面では我々が圧倒的にナンバーワンだと思っている。この強みを徹底的に生かすことで、自分が使ってダメなサービスは絶対にユーザーには勧めないということを実現してきた。

やっぱり、さっぱり意味が分からない。小間氏かこの文章を出稿した日経BP社か、どちらかが間違っていると考えざるを得ない。

ただ収穫はあった。前掲ページにローマ字での記述があったので、少なくとも"User First"らしいということは分かった。

 

●mixiも目覚めたらしい

 

他の検索結果を見ていると、どうもmixiが「ユーザーファースト」に昨年目覚めていたらしい。それについて書いてある記事(http://mixi.jp/userfirst.pl?id=2)を見てみた。

そこで改めて、mixiを運営していくにあたっての最重要キーワードを「ユーザーファースト」とし、mixiの運営に携わる全てのメンバーに周知しました。

ここでも説明なく使われている。こんな意味不明の言葉を使われても、「ユーザーの皆さまのご要望との"ずれ"」(同記事)が解消されるとは、あまり思えない。

ただ、文脈からすると、どうも「ユーザーファースト」とは、「ユーザー第一主義」のことのようである。

だったら、日本語でいいじゃん・・・。

 

●何で「理念」がHPのどこに載っているのか分からない?

 

どうやら、mixiによれば「ユーザー第一主義」のようだ。

それでも、先ほどの小間氏の発言が意味不明なのは変わらない。代入してみるとその異様さが分かる。

データトラフィックやユーザーリーチなど、データ面では我々が圧倒的にナンバーワンだと思っている。この強みを徹底的に生かすことで、ユーザー第一主義を実現してきた。

さっぱり分かりません。ちなみに「データトラフック」とか「ユーザーリーチ」などという言葉は分かるのですが。

ヤフーの社長が強調している言葉ならば、ヤフーのコーポレートサイトに定義が載っているはずだと思って調べたのだが、甘かった。

まず、採用情報ページに「ユーザーファースト」なる言葉が出てくるのだが、就活中の学生はみな知っている言葉らしく、ここにも説明はない。

IR情報ページのトップメッセージの3ページ目にも出てくるが、株主も全員知っている言葉らしく、当然ながら説明はない。ただ、「常に変わらぬ「ユーザーファースト」の理念」という言葉から、企業理念なのは分かった。

だったら普通は企業理念について書いてあるページが、コーポレートサイトにはあるはずなのだが、見つけることができないでいます。分かりやすいところに書いておいて欲しいものです。

 

●この文脈でなら分かる

 

ちなみに"User First"でも調べてみた。すると日本語だが、こんな記事が見つかった。

http://d.hatena.ne.jp/copyright/20080115/p1

どうも、"Culture First"なのか"User First"なのかという議論があるらしい。この文脈でなら、何を議論しているのかは分かる。

勉強になったのはこの記事と、さっきのバイリンガルの女性の発音講座ぐらいだったなあ。

 

冒頭書いたとおり、ヤフーに対して悪意はない。ただ、イライラしたことは本当である。ちょっと書いておいてくれればいいのになあと思っている程度で、怒り狂っているわけではもちろんない。 

そして、ヤフーの社員が共通理解しているのかが、ちょっとだけ心配だ。mixiも・・・。

 

自分軸の作り方を余すことなく伝える無料連続メール講座を受講してください。

http://www.itbt.biz/jibunjiku/jibunjiku_MS.html

以下は定期的にやっているセミナーのご紹介です。

jibunjiku_semi_top_mini.jpgのサムネール画像 Jibunjiku_PR_top_480.pngのサムネール画像

Comment(0)