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ITに強いビジネスライターとして、企業システムの開発・運用に関する記事や、ITベンダーの導入事例・顧客向けコラム等を多数書いてきた筆者が、仕事を通じて得た知見をシェアいたします。

斜に構えた人に自分軸は有効か?

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あなたは、部下や同僚に斜に構えた人がいて、なんとか変えたいと思っているのかもしれません。

斜(しゃ)に構えるという言葉は、元々剣道用語で、きちっと身構えるぐらいの意味――つまり、良い意味――です。

これがいつの間にか、モノゴトに正面から向き合わないというような悪い意味になりました。一般的には、賛成・反対の立場を明確にすることなく、モノゴトの欠点ばかりをあげつらっている人という意味合いでしょうか。

職場によっては、「評論家」と呼ばれている人たちと同一視されているかもしれません。

さて、「斜に構えた社員を変えるために自分軸を教えてあげてほしい」という企業からの引合いがけっこう多いのです。

●斜に構えた人に自分軸は無力か否か

研修担当の方は、自分軸に人を変える何らかの力がありそうだと直感してくださっているようです。

「誰に」「何を」「なぜ」提供するのか。これがぼくのいう自分軸です。きわめてシンプルです。だからこそ、何らかのパワーと本質を感じていただけるのかもしれません。

パワーは、実際にあります。だから、変わりたい人に対して、ぼくは自分軸を説くのです。

しかし、斜に構えた人というのは、変わりたい人なのでしょうか?

中には自分を変えてくれる言葉や行為を待ち望んで、斜に構えている人もいることでしょう。

変わりたくない人はさておき、変わりたい方にだけでも響けばいいと思うのですが、しかしながら、そもそも斜に構えている人です。

ストレートな言葉が響くものなのでしょうか?

●ぼくの体験

ぼくの体験をお話ししましょう。

ぼくは福島正伸先生の6回連続講座に通ったことがあります。

当時のぼくは、コンサルタントとして行き詰っていました。

クライアントの問題を解決すればするほど、重荷が増えていく感じがしていたのです。もしそうであれば、コンサルタントという仕事そのものが矛盾したものであるということになります。

そのときに、「コンサルタントはクライアントの問題を解決してはならない」というキャッチコピーが目に飛び込んできました。そのキャッチコピーが最初の縁となり、気がつけば連続講座に参加していました。

ところが、ぼくは福島先生のあまりにもポジティブな考え方についていけませんでした。

仕事自体を苦痛と思っていていて、その前提からなかなか離れられないぼくは、福島先生の考え方がだんだん息苦しくなってきました。そして、コンサルタント業もやめてしまおうと思いました。

ちょうど、ぼくの誕生日にたまたま講座があり、懇親会に福島先生も参加されていました。

それまで懇親会では遠慮して福島先生に話しかけなかったぼくだったのですが、その日はお酒も入っていたので、「今日誕生日なんです。プレゼントだと思って、質問に答えてください」と福島先生にお願いしました。

今から考えると、ほんの数年前(2007年のこと)ですが、どれだけシャイだったか(笑)。単に自分に自信がなかっただけですが。

●肯定されることがこれほど気持ちがいいとは

先生:何でしょう?何でも聞いてください

森川:実はコンサルタントとして一人前になりたくてこの講座に参加したのですが、別の夢ができました。

先生:どんな夢ですか?

森川:キャンプ場のオーナーをやりたいんです。それも子供がいない夫婦専門のキャンプ場です。ぼくら夫婦は子供がいないのですが、キャンプが大好きでよく出かけます。

しかしファミリー向けのキャンプ場が多いので、ときどきくつろげないときがあります。きっと我々夫婦以外にも、夫婦だけでくつろげるキャンプ場を探している人は多いと思うのです。そんな人のためにキャンプ場をやりたいんです。

その後、ぼくは1分ぐらいだったと思いますが、どんなキャンプ場かというビジョンを語り、福島先生は快く聞いてくださいました。

ただ、ぼくは正直、今の仕事をきちっとやってからでも遅くないと言われると思ったので、次の質問には勇気が要りました。

森川:ということなので、今のコンサルタント業はやめて、キャンプ場経営の夢を追いかけようと思うのですが・・・

先生:いいですね!森川さんの好きなことをやればいいんです!

今でも、このときの気持ちは覚えています。100%肯定された気持ちよさを。

その瞬間、キャンプ場のことはどうでもよくなりました。正直そのときの仕事から逃げようと思っていただけなのです。

●認めることが先

実を言うと、ぼくは斜に構えた人を別に嫌いではないのです。

福島先生に、講座終了時の打ち上げの懇親会で言われたのですが、「森川さんって斜に構えていたけど、本当に変わったよね」と言われたんです。ぼくも本来(いや今でも)斜に構えた人間なのです。

だから斜に構えた人の気持ちはよく分かるし、その人たちの批評が、自分には気がつかなかった視点を提供してくれていることも多々あるのです。

ひどい誤解をされることもありますが、それはそれでこういう言動は誤解されやすいのだという勉強になります。

そもそも、斜に構えた人を変えたい、という考え方のほうが傲慢だと思うのです。

一人一人の人間は、それぞれかけがえのない人生を歩んできています。それをあなたの意思で変えたいというのは、やはり傲慢ではないでしょうか?

いや、もちろん、このままだと相手がダメになる、だからなんとかしてあげたいという気持ちから来ていることは重々承知しています。

そうだとしても、人を変えようという考え方自体を変えるべきだと思うのです。

ぼくが相談したときに、福島先生の本音は、斜に構えて非現実的だったぼくをなんとか変えてあげたいと思っていたのかもしれません。しかし、福島先生はそんなことをおくびにも出さずに、ぼくの言うことを100%肯定してくださいました。

その気持ちよさに感動して、ぼくは自分から変わろうと思ったのです。

斜に構えた人に対して、変えようというような心構えでは絶対に失敗します。まずは、認めることから入っていくべきだと思うのです。

●肯定されて斜に構え続けられる人は少ない

評論ばかりで行動しないのが悪い、なんていう価値観を押し付けても意味はありません

それどころか、行動しないことが悪いという前提を一緒になって疑うことから始めるべきなのかもしれないぐらいです。

斜に構えた人代表のようなぼくが言うのですから、間違いありません。

実際に研修をやる上では、やはり本人の自分軸(「誰に」「何を」「なぜ」)ということを考えていただきます。

出てきた自分軸に対しては、100%肯定しながら、深掘りのための質問をします。

ワークショップの形式が取れるなら、ペアになって相手の自分軸をインタビューし、文書化するという作業をしてもらいます。このときも当然相手の自分軸の否定は厳禁です。

自分軸を見つめなおし、それを他人から肯定してもらえる

ここまでやられて斜に構え続けられる人は、ごく少数派であり、筋金入りと言えます。

ある意味自分軸が明確な人ですから、これはこれで変わらなくてもいいとぼくは思います。どこにでもニヒルだけど魅力的な人はいるものですから。

実際には、多くの人が斜に構え続けられなくなり、何らかの行動をし始めるものなのです。

斜に構えている人をなんとか変えたいなどと思わないで、100%肯定しましょう。それがもっとも効果的なやり方です。

もちろんテクニックではなく、本気で認めることができるという前提ですが。

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