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DX見聞録 -その1 デジタルトランスフォーメーションの本質とは何か

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 デジタルトランスフォーメーション(DX)の実態について既知の話からあまり知られていないコトまで。このコーナーで少々連載したいと思います。

 現在はまさに"デジタル産業革命"の黎明期にあり、何十年に一度の大変革期で今後、5年、10年先を予測できないのは、過去の歴史を振り返れば明らかです。間違いないのは、ソフトウエアを中心とした未曾有の変化が相当のスピードで到来することであり、変革には3年や5年、10年といった単位の時間がかかると思われます。しかしその時間は決して長いとはいえません。

 これまでこのブログでは、シリコンバレーやSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)など、デジタルビジネスに関係する先行的な取り組みを紹介してきました。新しいシリーズでは、日本でデジタルトランスフォーメーションを実践していく上で重要になるポイントについて記していきたいと思います。

■DXの本質とは何か

 DXに関しては、様々なメディアやレポートでも解説されていますが、昨年12月に出た経済産業省の「DX推進ガイドライン」によると

企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること。

と定義しています。

 この中で重要なことは、デジタル技術の活用や顧客や社会のニーズをキャッチアップすることは自明として、ビジネスモデルや業務、組織、プロセス、企業文化・風土を変革することを指摘している点にあると考えています。

では、このような変革を企業レベルで進める上で企業が進めるべき取り組みはどのようなものでしょうか?

 今回、、DXとイノベーションに関する書籍「デジタル時代のイノベーション戦略」を技術評論社から出版されたITR会長でエグゼクティブ・アナリストである内山氏によると以下のような4つのステージがあると指摘されています。

デジタル変革に向けた企業ステージ.tif

(図1.デジタル変革に向けた企業のステージ)

 まず、最初の「啓発・意識づけ」のステージ(Why)は、なぜ、デジタル化を推進しなければならないかわからない といった状態で経営幹部や情報システム部門への動機付けのフェーズです。

 次に「方向づけ」のステージ(Where)では、デジタル化を推進すべきとの認識を持ちながらもどこを目指すべきかが明確でない状態を指します。

 そして「はじめの一歩」のステージ(What)では、デジタル化推進の方向は定まったが、具体的に何をすればよいかわかならいような状態です。

 最後の「試行錯誤」のステージ(How)は、デジタル化の推進で、何をすべきかは定まったが、どのように進めればよいかわかならいという状態を意味します。「試行錯誤」のステージ(How)は、デジタルビジネスの特徴であり、"Fail First"に代表されるリーンスタートアップやデザイン思考固有の考え方だと思います。

ITRの調査では、日本企業はまだまだ最初の「啓発・意識づけ」のステージ(Why)や「方向づけ」のステージ(Where)だと指摘しています。内山氏はさらに、

なぜ自社が変革を必要としているのか(Why)の議論が熟さないまま、具体的な施策(What)を決めようとしたり、どのような企業像や事業領域を目指すのか(Where)が定まっていないいないのに、どの手法、どの技術を使うのか(How)ばかりに気をとられてたりする姿をよく目にします。この「Why」「What」「Where」「How」のステップを確実に踏んでいかなければ、後から必ずスキップしたところに戻ってしまいます。

と警鐘を鳴らしています。

■DX実践のポイントを考える

 では、企業でこのステージを乗り越えていくために企業や組織では、何からスタートしたらよいでしょうか?我々では、様々なお客様との対話や富士通社内での実践を踏まえ、企業文化や風土を変革するために以下のような5つの取り組みを実践のポイントだと推奨しています。

デジタルビジネス実践の5つのポイント.tif (図2.デジタルビジネス実践の5つのポイント)

1. 今、何が起きているのかを知り、自ら試す

 当たり前のことなのですが、デジタルビジネスで今何が起きているのかをちゃんとリサーチをしなければなりません。そしてこれまでは机上の調査で済んだかもしれませんが、これからは経営者や企画をする人間自ら試すといった姿勢が重要です。

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(図3.我が家のAlexa)

2. どのようなイノベーションを起こすのか考える

 受託型のビジネスに馴染んだ日本企業(製造業文化)では、0から1を産み出す活動の難しさを痛感しているのではないでしょうか?新しいデジタル技術で新たなマーケットを創出することは生半可ではありません。下記はスタンフォード大学のリチャード・ダッシャー教授がイノベーションについて分析していた内容です。

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(図4.時代が求めるイノベーションとは)

従来の枯れた技術の組み合わせでも新市場は創出できますが(Appleの例)、新しい技術を活用して新たな市場を開拓することこそDXに求められていることではないでしょうか?(Squareの例)

3. イノベーションを生み出す仕掛け・仕組みをつくる

 従来の企業スタイルのままではイノベーションは生まれません。やはり、自社内で新たな発想や横串を通した取り組みを誘発するような仕掛け仕組みが必要になります。

イノベーションを生み出す仕掛け・仕組み.tif

(図5.イノベーションを生み出す仕掛け・仕組みをつくる)

4. 人を育てる、チームの作り方を学ぶ

 2019年度版のIT人材白書ではサブタイトルに"人からはじめるデジタル変革"というメッセージがありました。デジタル化に適応したITエンジニア抜きでDXは実現できません。

 また、イノベーションを起こすにはグループではなくチームを作る必要があります。チーム作りは永遠の課題ですが、よいチームが作れるとまさに変革を起こす可能性が高まります。

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(図6.ハッカソンの効果)

5. デジタルジャーニーを実践する

 なぜ、トリップやトラベルではなくジャーニーなのでしょうか?それは決められた旅程をただこなすだけでなく、まだ見ぬゴールを共創するパートナーと伴走しながら目指さなければなりません。

デジタル化は探索しながらゴールを目指す旅.tif

(図7.デジタル化は探索しながらゴールを目指す旅)

デジタルジャーニーを実践するための考え方としてデザイン思考は欠かせません。しかし、最近ではデザイン思考だけでは何か不足していることに気がつきました。

■DX推進の課題

 これからこのシリーズではDXを進める上での企業での実践のポイントやデジタルテクノロジーが社会やビジネスに浸透したときに人々がどのように対処していけばよいか?について言及して行きたいと考えています。

 もちろん、DX推進の前提としてITシステムはとても重要です。経済産業省が発表したDXレポートでも2025年の崖を越えるには、既存のITシステムを巡る問題を解消しない限りは、新規ビジネスを生み出し、かつ俊敏にビジネス・モデルを変革できない、すなわち、DXを本格的に展開することは困難であると指摘しています(既存システムのモダナイゼーションの必要性)。

 また、既存システムの運用、保守に多くの資金や人材が割かれ、新たなデジタル技術を活用するIT投資にリソースを振り向けることができないといった問題も指摘されています。

約7割の企業が老朽システムがDXの足かせと感じている.tif

(図8.約7割の企業が老朽システムがDXの足かせと感じている)

 これらの足かせを取り除く方策を進めながら、DXを実現するために企業はITシステムの何をテーマに据えて変革を進めればよいでしょうか?

 その前に既に世の中では本レポートをはじめさまざまな調査や分析が行われています。まずはその考察からはじめたいと思います。

(つづく)

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