SXSW2017観戦記ーその5 日本からの挑戦者たち②
日本から様々な分野から参戦しているSXSW(サウス・バイ・サウス・ウエスト)。世界80か国以上からの参加者同士がネットワーキングを目的に"参戦"する今最も注目されるフェスティバルだ。この観戦記では、主に2017年度の日本企業参戦の模様をレポートしていく。
オースティンコンベンションセンターには、日本の大手企業だけでなく、スタートアップや大学生も参戦していました。
《オースティンコンベンションセンター内のJapan Start Upブース》
経済産業省では、国内の意欲的なベンチャー・中堅企業を海外に派遣する「飛躍 Next Enterprise」プロジェクトを実施してきた。同プロジェクトからは、11社のエントリーがあったがその中から4社を紹介したい。
Eyes Japan「Fukushima Wheel」
Eyes Japanは、1995年9月創業の会津大学最初のスタートアップ企業。代表の山寺さんは、2013年には、アメリカで行われた「Health 2.0」の第7回ハッカソンに日本代表として参加し、優勝した経験もある。「Fukushima Wheel」は、自転車のフレーム部分に取り付けられた「センサーボックス」と、後輪に十字に取り付けられた「LEDユニット」から構成され、手持ちの「iPhone」をハンドル部に装着することで、自転車を走らせながら環境データを取得して、それを携帯電話通信網を介し、クラウド上で収集・管理できるシステム。
《Eyes Japan代表の山寺純さんとFUKUSHIMA Wheel》
QDLaser「Retissa(網膜走査型レーザアイウェア)」
量子ドット技術/光学技術をもとに、網膜走査型レーザアイウェアを開発しているして株式会社QDLaserは、国内外ですでに多数出展をしているが、「CEATEC JAPAN 2016」では、最高賞にあたる「経済産業大臣賞」と「米国メディアパネル・イノベーションアワード グランプリ」を受賞した。フレームに内臓された超小型プロジェクタから網膜に直接映像を投影するレーザアイウェアという新しい技術で医療機器としてだけでなくARやスマートグラスへと応用が可能らしい。
《普通の眼鏡と変わらないが、内側に眼球に投影する仕組みがコンパクトに格納されている》
Borderless「Cross Helmet(スマートバイクヘルメット)」
デザインを手がけるスタジオからスタートしたBorderless Inc.(株式会社ボーダレス)は、後頭部のカメラで撮影した映像をヘルメット内のモニターに映し出す「クロスヘルメット」プロトタイプを展示していた。私はバイクに乗らないが、既存のヘルメットと比べて違和感もなく、ニーズは大きいのでは?と感じた
《ヘルメット内に投影の仕組みがコンパクトに格納される。後頭部にはカメラが!》
Holo Eyes「Holo Eyes VR」
医療画像データを活用し、3Dの人間をVRでそのまま3Dで情報共有ができるようにするサービス。HoloEyesは医療健康福祉でVR情報革命をリードすると宣言。ド派手な彩色の人体の中はちょっとビックリでしたが、自分の体の中がこんな感じなのかとちょっとしたアハ体験ができました。自分で操作をしながら人体の中を探索できるのは面白いような怖いような。
《HoloEyes 株式会社CEOの谷口さんとCOOの杉本さん》
独自に参戦した頼もしいベンチャー企業も2社ほどご紹介したいと思います。
神戸デジタルラボ「SeekAT」
「SeekAT」は、「カメラをかざせば冒険が始まる」をコンセプトにtwitterなど ユーザの実際 の投稿に基づいてスポットの人気度や盛り上りを直感的に感じられるとう直感ナビゲーションアプリだ。先ごろ神戸で開催されたSXSWの日本版ともいえるクロスメディアイベント「078(ゼロ・ナナ・ハチ)」でも出展されていた模様。
《スマホ越しに眺めるとtwitterの呟きが浮かび上がりスポットの盛り上がりがわかる》
ズームス「VIRTUAL DRONE」
最近話題のドローンをMR(Mixed Reality)でデモする「VIRTUAL DRONE」。元ラジコン少年としては、童心に返るデモだった。二人のプレーヤーが、それぞれのドローンを同時に飛ばすことができる、「マルチプレーヤー版」バーチャルドローンも初披露。Mixed Realityの世界を友だちと一緒に探索する、世界でも他にない体験を提供していました。
《オースティンコンベンションセンター会場内を架空のドローンが飛行する》
東京大学発の「TODAI TO TEXAS 2017」からは、6チームが参戦。
"Todai to Texasは、東京大学の在学生・研究者・卒業生を中心としたプロジェクトチームやスタートアップが、SXSW (サウス・バイ・サウスウエスト) という毎年3月に米国テキサス州で開催される大規模イベントに参加し、自分たちのプロダクトやサービス、作品を展示するプログラムです。夏と秋に本郷キャンパス内にて開催される「デモデー」で各チームがデモ (発表) を行い、選考が行われます。本プロジェクトは、東京大学産学協創推進本部が主催し、学生・社会人有志により構成されるTodai To Texasプロジェクトチームが運営しています。"
TODAI TO TEXAS 2017 Webサイトより
実は、前回ご紹介したPARCOのプロジェクトである「Nyanko Electro(猫背を検知すると猫になる、猫背を治すデバイス)」や「+move(自動的に一定間隔を保とうとするハンガー)」もTODAI TO TEXASのプロジェクトチームが支援している。
ロボット電動義足「BionicM Suknee」
これまで病気や事故で足を失った人のために義足は存在しましたが、このロボット義足「Suknee」は、内部にモーターやセンサーを搭載して義足の使用者の歩行具合に合わせて最適なアシストをしてくれる義足です。実際に試してみましが慣れるまでは時間がかかりましたが、自分の意思と力を歩くことをアシストしてくれるところはHuman Centricでユニークだと感じました。
この「Suknee」は、SXSW Interactive Innovation Awardsの学生部門「Student Innovation」で優勝の快挙を成し遂げました。このアワードは、かつて「twitter」や「Airbnb」が受賞しており、新興企業の登竜門として世界的に知られている。学生部門とはいえ、日本チームの受賞は今回が初めての快挙らしい。おめでとう!
《コンパクトな義足の中にモーターやセンサーが内臓される》
ダンサー自ら音楽を産み出せる「GROOVE」
NHKBS1スペシャル「若者よ 世界を驚嘆させよ!大見本市SXSW」で密着取材を受けていたサービスがこちら。ダンスをより楽しくする動きに合わせて光る手袋型のデバイスで自らもダンサーというメンバーが開発に携わっている。ダンサーが両手に装着するセンサーに、圧電素子や G センサーを備えたデバイスだ。GROOVE は音を元に光るアウトプット・インターフェースであるだけでなく、手の動きなどを元に音楽がでるという所が特徴的だ。ダンサーは音楽にあわせて踊ることが多いが、GROOVE を使うことでダンサーが自ら音楽を生み出すことができる。アートとテクノロジーが融合するSXSWならではのアイデアでこちらも学生部門の「Student Innovation」に参戦していたが残念ながら入賞には至らなかった。NHK BS1の放送では、皆社会人になっても開発を続けるか否かと議論をしていたのが印象的だった。
《NHKBS1から密着取材を受けていた小宮君 自らダンサーでもある》
吃音を疑似体験できるデバイス「STACHA」
障害に悩む人の苦しみを疑似体験する環境を提供することで、社会の理解を高めようとするデバイス。首に巻いて喉にある声帯の周りの筋肉に微弱な電流を流し、意図的に正確な発声が困難な状態を再現するというもの。世界的にも吃音(きつおん)で悩む人は少なくなく、周囲からの視線や差別から自殺を図る人がとどまるところを知らないという。
吃音:言葉が円滑に話せない疾病、または障害である。「 発語時に言葉が連続して発せられる」、「瞬間あるいは一時的に無音状態が続く」などの症状を示す。
Wikipediaより
《一見新しいタイプのヘッドフォンかと空目したSTACHA。実は、吃音が疑似体験できる》
音声変換のソフトウェア「NeuroVoice」
音声の生成にディープラーニング(深層学習)を用いることで、自然かつ流暢な音声変換を実現したシステム。ポイントは音声の最小単位である"音素"を用いて学習することで、変換先の対象人物が発したことのない発言も再現可能なこと。ドナルド・トランプ米国大統領の発言を、大統領候補だったヒラリー・クリントン氏の声として実際に喋る様子をデモしてくれた。
《ipad片手に丁寧にデモをしてくれた》
次回は日本からの参戦者だけでなく、グローバルベンダーの取り組みについて紹介したい。
(つづく)