ハッカソンへの意外な反応
恐る恐る企画をスタートした社内ハッカソン。
多くの社員の参加を期待していたが、SEだけでなく社内の様々な部署から参加表明があり、閑古鳥どころか大変な賑わいとなった。 ボスの心配は、この時点でクリアされたのだが、秋に開催されるSEのコンベンション大会での発表は上手く行くだろうか?と正直不安な気持ちであった。
真夏の予選を経てさくら旅をテーマに無事エントリーされた6チームのアイデアはユニークなものが多かった。例えば、東北ゆかりの伊達政宗を主人公にしたロールプレイング形式のゲーミフィケーションなど、エンタープライズ系のシステム構築が主流の我が社でも豊かな発想を持ったエンジニアがいることに安堵した。
満を持してハッカソン最終決戦の日を迎えたのだが、そこには若手社員に加えて大規模システム開発の重鎮の姿もあった。
"PMのスペシャリストがハッカソンに何の用事だろう。冷やかしにでも来たのか⁈"
とちょっとうがった見方で内心複雑な心境になった。
発表会自体は、歓喜と涙と笑顔に満ち溢れた素晴らしいイベントとなった。SEの業種を超えたチームに研究所や事業部門など他部門も加わり多様性のあるユニークなチームの戦いで無事フィナーレを迎えた。
しかし、あのPMの重鎮がひっそりと見学に来ていたことがどうしても気になった。
"これも一種のテストマーケティング、どんな感想を持ったか聞いてみよう"
とアポを取って突撃してみた。
実は、その時まで一度も打合せもしたことがない方だったのだが、打合せの場で彼は初めから終始和やかだった。と言うか嬉しそうだった。
"あの〜、山口さんのこれまでのお立場では、今回のハッカソンのようなイベントは無縁のように思うのですが...."
恐る恐る聞いてみた。
"柴崎さん、ハッカソンは今の若い世代には是非広めて欲しいと思っていますよ。"
彼の第一声は、とても好意的だった。しかし、なぜこんなに好印象なのか疑問に思っていると、ゆっくりと種明かしをしてくれた。
"実は、昔のシステム開発の現場は毎日がお客さんとハッカソンやアイデアソンのようなものだった。昼夜を共にしてアイデアを出し合い、技術を競った。しかし、最近ではセキュリティや分散開発の関係からお客さんとケンケンガクガク議論するような環境が極端に減ってはいないか?"
なるほど!言われてみれば確かにそうかもしれない。
《ハッカソンの可能性》
"先日の発表会を聞いてこのプログラムはサイロの中に閉じこもりがちな有能な若手人材を発掘・育成する可能性があると感じたのだよ!"
なるほど、そんな見方があったのか!
まさに目からウロコの出来事だった。
(つづく)