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コトづくり百景 〜オフィスを攻めろ「ネスカフェ アンバサダー」

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 先週紹介したネスレ日本が提供する「ネスカフェ ドルチェ グスト」。読者のなかにはやはり紅茶マシンである「ネスレ スペシャル.T 」とのハイブリッドを望む声が多かった。コーヒーと紅茶を両方いれるマシンとなるとかなり大型となってしまうことから更なる技術のイノベーションが必要になるのだろう。

 さて、今日はそんなネスレの戦略でもう1つ注目したい戦略である「ネスカフェ アンバサダー」について紹介したい。最近しょこたんこと中川翔子さんが「ネスカフェ アンバサダー〜♪」のメロディーでテレビCMしていることからご存知の方も多いだろう。


YouTube: 【HD】 中川翔子 Nestle ネスカフェアンバサダー「オフィス潜入」篇 CM30秒

  • 「ネスカフェ アンバサダー」の仕組み

 アンバサダーとは、”大使”と言う意味。オフィスで「ネスカフェ」を広める親善大使と言う訳だ。応募したお客様は「ネスカフェ」のコーヒーマシンをオフィスで、それも無料で使用できる。そのうえで、アンバサダーはコーヒーの代金をオフィスで集め、「ネスカフェ」を通販で購入してもらう。一方、ネスレ日本は、コーヒーの売上で利益を得るという仕組みになっている。

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 対象となるコーヒーマシンは、なじみの深いネスカフェが利用できる「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」が対象であったが、先週ご紹介したカプセル式の本格コーヒーや紅茶を飲める「ネスカフェ ドルチェ グスト」や「ネスレ スペシャル.T 」も対象となった。

 2013年10月現在、10万件を超える申し込みがあるという。2013年5月で5万件だから5ヶ月で倍増していることになる。1つのコーヒーマシンをオフィスや店舗で10人が使用していると考えると、1日で約100万人が「ネスカフェ」を飲んでいる計算になるという。ちなみにこの100万という数字はコカ・コーラの自動販売機の数に匹敵するというから、驚きだ。これによって、これまで家の中で飲むとされていた「ネスカフェ」がオフィスに市場を拡大することになった。

  • オフィスのコトづくり

 アンバサダーを志願するお客様のオフィスでの導入を支援し、アンバサダーを継続するモチベーションを維持する仕組みもいろいろと工夫されている。

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 例えば、らくらく社内説得キットは、「アンバサダーの仕組みがよくわからない」「お金の回収はどうしたらよいか?」「ネスカフェ ドルチェ グスト」「ネスレ スペシャル.T 」「ネスカフェ ゴールドブレンド バリスタ」といったカフェマシンの違いなどを初心者にもわかりやすく説明している。また既に利用している人の声も集めたPDF資料である(ダウンロードはこちら)。

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 また、導入後のアンバサダーの活動を盛り上げ、オフィスを明るく楽しくする仕組みづくりにも工夫をこらしている。アンバサダー専用のFacebookページに加え「アンバサダーVOICE」という独自のコミュニティも立ち上げている。

 これは4つほどのコーナ−に分かれている。「初めての投稿」では、”バリスタであなたのオフィスはどのように変わりましたか?”といった内容で開始して間もないアンバサダーに近況報告を促している。「テーマ投稿」では、たとえば”マグカップ自慢を大募集!”というようにCafeタイムに関連した話題の投稿を促している。また「ナイス投稿」では、ネスレの担当者が選者となって過去の優れた投稿を改めて紹介している。「オフィス掲示板」では、アンバサダー同士で意見交換やアイデアの紹介をできる交流の場を用意している。

  • 街の喫茶店もターゲット!?

 実は、家庭からオフィスに進出する前に街の喫茶店にも「カフェ ネスカフェ」という新しいビジネスを進めている。

 喫茶店やカフェ業界おける個人喫茶店の多くは経営難に陥っており、現在7万軒まで減少しているという。個人経営の喫茶店はドトールやスターバックスなどの大手Cafeチェーンの進出により、大企業とマーケティングやメニューなど様々な面で勝負しなければならなくなっている。

 このような現状を踏まえ、ネスレ日本では、個人喫茶店のオーナーへの新しい解決策としてこれまでサイフォンで淹れていたコーヒーを「ネスカフェ」のマシンに変えて店舗には「ネスカフェ」の看板を設置する提案をしている。喫茶店側としては、マシンを使うことで、おいしいカフェメニューを新たな手間とコストをかけずに提供することができ、ネスレ日本としては、宣伝をしてもらえることになる。

 ネスレによると「カフェ ネスカフェ」を展開したいという喫茶店や外食事業者を募集したところ、かなりの数の応募があったという。高岡さんの言葉を借りると”「ネスカフェ システム インサイド」”、そうあの「インテル・インサイド」の発想である。自社が開発するコア製品が他社のサービスを形づくるエコシステムの発想である。

 この既存の喫茶・外食事業向けの「カフェ ネスカフェ サテライト」に加え、スーパーマーケット等への展開として「カフェ・イン・ショップ」にも注目していきたい。

やはり、小型のハイブリッドマシンが欲しいのは筆者だけだろうか。

(つづく)

 

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