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現場は前向き、でも71.5%が「コピペ運用」----生成AIの"最後の1マイル"を可視化した調査

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生成AIの企業導入が進んでいるという話は、もう何度も聞いてきた。しかし「導入されている」ことと「業務に定着している」ことの間には、実はまだ大きな溝がある。それを鮮やかに数値化した調査が、2026年8月に公表された。

テックタッチ株式会社が実施した「生成AIの業務定着の実態と課題に関する調査」(従業員1,000名以上の企業で生成AIの活用・推進に携わる責任者・担当者319名対象、2026年7月28日〜29日実施)である。本稿では、この調査を手がかりに、AI活用における「最後の1マイル」の正体を考えてみたい。

参考:『日本の人事部』「生成AIの業務定着の実態と課題に関する調査」(テックタッチ株式会社)

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■ 「利用は広がった」が、その中身を見ると

まず、全体像を確認しておきたい。全社における生成AIの利用状況を尋ねた設問では、「多くの人が使っており、複数の業務で、業務システムの流れの中に組み込まれ、自然に使われている」との回答が39.5%にのぼった。数字だけを見れば、生成AIの普及は相当に進んでいるように見える。

実際に使われている業務も幅広い。「情報収集・調べもの」(83.7%)、「文書・資料の作成・編集」(81.8%)、「データの集計・分析」(75.9%)と、多くの企業で複数の業務にAIが浸透している。

しかし、「最も定着している業務」を尋ねると、様相が変わる。「文書・資料の作成・編集」(39.0%)と「情報収集・調べもの」(23.9%)の2業務だけで6割超を占めるのだ。定着が進んでいるのは、チャット画面上でのやり取りだけで完結しやすい、比較的汎用的な業務に偏っている。

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■ 核心のデータ:「最も定着している業務」でさえ、7割が「別画面・コピペ」

この調査で最も重要なのが、この設問である。「最も定着している」と回答された業務において、生成AIは実際どのような形で使われているのか。

結果は次の通りだった。「業務システムとは別画面だが、社内ツールや専用AI環境から使っている」が41.1%、「ChatGPTなどの外部AI画面を別で開き、手作業でコピペして使っている」が30.4%。この二つを合わせると、実に71.5%が「別画面・コピペ運用」だということになる。

一方、「いつもの業務システムの画面内で、そのまま使っている」という、最も理想的な形での利用は、わずか20.6%にとどまった。「裏側でAIが組み込まれており、利用者がAIを意識せず使っている」という、完全に業務に溶け込んだ状態に至っては、7.6%に過ぎない。

つまり、企業が「最も定着している」と自認する業務においてすら、実態はコピー&ペーストという、極めて原始的な運用が7割を占めているのである。

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■ 「現場の意欲」と「システムへの組み込み」の断絶

さらに興味深いのが、「できていること」を尋ねた設問だ。「現場が前向きに使えている」との回答は61.4%で最多。しかし、「いつもの業務システムの画面内で、コピペなどせずにそのまま使えている」との回答は24.1%で、選択肢の中で最も低い割合にとどまった。

この対比が、調査全体で最も本質的な発見だと思う。現場の意欲は決して低くない。むしろ高い。しかし、それを受け止めるシステム側の統合が、最も遅れている。人の熱意が、システムの構造によって足止めされている構図が、数字として浮かび上がっている。

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■ なぜ、コピペ運用から抜け出せないのか

課題を尋ねた設問を見ると、その背景がいくつか見えてくる。

最も多く挙げられたのは「使い方の理解や習熟度に差がある」(48.3%)。次いで「情報漏えいや機密情報の取り扱い(セキュリティ)に不安がある」(33.5%)、「どの業務に使えるのか、具体的にイメージできない」(24.5%)と続く。個人のスキルに依存する「別画面・コピペ運用」では、使いこなせる人とそうでない人の差が開きやすいことが、この結果からもうかがえる。

そしてもう一つ重要なのが、誰が生成AI活用を推進しているかという設問だ。「DX・AI推進の専門部署」が43.9%、「情報システム部門」が24.5%と、この二つで約7割を占める。一方、「各業務部門・現場」が主体となっているケースは、わずか17.2%にとどまる。

これは、示唆的な構造だ。AI活用を主導しているのは、実際に業務を担う現場ではなく、専門部署やIT部門である。専門部署が全社共通のツールやガイドラインを整備するのは自然なことだが、個々の業務プロセスの隅々まで理解し、業務システムへの組み込みを設計するには、現場の知見が不可欠だ。推進の主体と、実際に使う主体が分離したままでは、「ツールは提供されたが、自分の仕事にどう組み込めばいいか分からない」という状態が続いてしまう。

効果測定についても、「あまり測定できていない」(24.1%)と「まったく測定できていない」(4.7%)を合わせると28.8%にのぼり、約3割の企業が効果を十分に可視化できていない。現場を巻き込みながら効果を測定し、改善のサイクルを回す仕組みづくりが、まだ道半ばであることを示している。

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■ 「使う人を増やす」から「使い方を変える」へ

調査の結論部分が、この調査全体を象徴する一文を提示している。生成AI活用の課題が、単に「使う人を増やすこと」から「使い方そのものを変えること」へ移りつつある、という指摘だ。

今後最も重視したい取り組みを尋ねた設問でも、この方向性は裏づけられている。トップは「いつもの業務システムの中でAIを使えるようにする」(48.0%)。僅差で「AIを前提に、業務のやり方そのものを見直す」(46.7%)、「AIが自動で処理し、人は最終確認を中心にする」(45.1%)が続く。

生成AIを、既存の業務の外側に置かれた「便利な追加ツール」として使うのではなく、業務プロセスそのものの中に溶け込ませ、業務のやり方自体を作り替えていく----この方向性への転換が、いままさに求められている。

実際、効果は着実に現れ始めている。最も定着している業務でかかる時間が「減った」との回答は合計62.6%に達した(「2〜3割程度減った」30.7%、「1割程度減った」25.6%、「4割以上減った」6.3%)。一方で「増えた」(17.4%)「ほとんど変わらない」(16.5%)も合計33.9%存在し、使い方次第で成果が大きく分かれる実態も同時に示されている。

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■ 過去に紹介した知見との接続

この調査結果は、私がこれまで紹介してきた複数の海外調査の知見と、驚くほど正確に重なる。

以前、Deloitte、KPMG、Salesforce、Accentureという4社の独立調査を紹介した際、共通して指摘されていたのは、AIエージェント導入の先行企業と停滞企業を分けるのは、導入数ではなく、明確な責任体制、強固なガバナンス、実際のコストの可視化だという結論だった。マッキンゼーの分析でも、成功する変革は技術投資1に対してプロセス再設計3、能力構築5という「1:3:5」の配分をたどるとされ、多くの企業がこの比率を反転させていると指摘されていた。

テックタッチの調査は、これらの海外発の知見が、日本企業の現場でどう表れているかを、極めて具体的に可視化している。「コピペ運用」という言葉は、「技術は導入されたが、プロセスは再設計されていない」という状態を、これ以上ないほど分かりやすく言い表している。

参考(筆者ブログ):Deloitte、KPMG、Salesforce、Accenture----4社の独立調査が、期せずして同じ「不都合な真実」に行き着きました

また、マッキンゼーの別の分析では、多くの企業がAIエージェントの活用状況を「ログイン数」「ライセンス数」「プロンプト量」で測っている一方、本当に測るべきは「仕事が良くなったかどうか」だという指摘があった。テックタッチの調査で、効果測定が「あまり・まったくできていない」企業が約3割存在するという結果は、この指摘が日本企業にもそのまま当てはまることを示している。

参考(筆者ブログ):「あなたの会社のAIエージェント、最後に人事考課をしたのはいつですか」----マッキンゼーが問う、デジタル労働力の新しいマネジメント論

さらに、以前CIO.comのインタビュー記事を紹介した際、同僚の江口智彬さんが、IT部門・人事部門に共通する「受託」体質----決まったことを実行する役回りにとどまり、方針を決める議論に加わりにくい構造----を指摘していた。今回の調査で、AI活用の推進主体が専門部署・情シスに集中し、現場主導がわずか17.2%にとどまっているという結果は、この「受託」構造が、AI活用の文脈でも繰り返されていることを示している。

参考(筆者ブログ):「AIで人員削減を予測する経営幹部は99%」----それでも従業員に説明できていない、という不都合な真実

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■ おわりに----「別画面」から「業務の一部」へ

生成AI活用の議論は、しばしば「導入したかどうか」「使っている人がどれだけいるか」という、入口の話に終始しがちだ。しかし今回の調査が突きつけるのは、その先にある、もっと地味で、しかし本質的な問いである。

そのAIは、日々の業務の「外側」に置かれた便利なツールなのか。それとも、業務プロセスの「内側」に組み込まれ、意識せずとも自然に使われる仕組みになっているのか。

現場の意欲(61.4%)と、システムへの組み込み(20.6%)の差、約40ポイント。この差こそが、いま多くの日本企業が向き合うべき、生成AI活用の「最後の1マイル」なのだと思う。

AI活用の本質は、技術の導入ではなく、人と組織の変革にある。「コピペ運用」からの脱却は、その変革の、最も具体的で、最も測定可能な第一歩なのかもしれない。

参考リンク
『日本の人事部』「生成AIの業務定着の実態と課題に関する調査」(テックタッチ株式会社)

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