オルタナティブ・ブログ > 谷誠之の 「カラスは白いかもしれない」 >

人を動かすものは何でしょうか?様々な「座右の銘」から、それを探っていきたいと思っています

文章力を高めるための5つのステップ・その2

»

前回から、「文章力を高めるための5つのステップ」を連載(?)しています。
今日は前回の続きから。

文書のプランニングをする際には、5つの要素について考えないといけない、ということでしたね。

読み手

文書における「読み手」とは、文字どおり「その文書を誰に読んでもらうのか」ということです。目的が似通った文書でも、読み手がチームメンバである場合、上司である場合、顧客である場合、とでは、文書の中に盛り込むべき内容やどのような「問い」に対してどのような「答え」を用意すれば良いか、ということが変わってきます。より良い文書を書くためには、読み手が誰であるか、ということを意識する必要があります。

tempsnip4.jpg読み手が明らかになったら、次はその読み手の特徴を考えます。例えば、読み手がITのことについて詳しい人かどうか。お金にシビアな人かどうか。今、自分たちが抱えている問題についてちゃんと理解しているかどうか・・・。その上で、その読み手が発信するであろう「問い」をあらためてチェックします。「読み手」と「イシュー(問い)」は、セットで考えるものです。

例えば、クレーム処理の経緯を上司に報告する場合のことを考えます。上司が発信する「問い」は「なぜそのクレームが起きたのか?」かもしれませんし、「クレームに対して顧客は何を要求しているのか?」かもしれません。「クレームをビジネスチャンスと捉え、どのような手をうったのか?」かもしれません。

また、「隠れた読み手」の存在も意識する必要があるでしょう。例えば、前述のクレーム処理の経緯を上司に提出する場合、直接の読み手はもちろんあなたの上司です。しかし、クレームの重要度や相手となる顧客の重要度によっては、あなたの上司がさらに上の上司を巻き込んで対応することも考えられます。多額の損害賠償、なんて話になるかもしれない時は、あんたは直接その賠償に関して動かないかもしれませんが、あなたの書いた文書は社内の財務部門に渡る可能性があります。この 上司の上司 や 財務部門の人 が、隠れた読み手です。その場合は、あなたの文書は直接の上司のみならず、上司の上司や財務部門の責任者が発するであろう「問い」にも適切に答える必要があります。最初にいかに仮説を立て、読み手の立場に立ちながら「問い」を作り上げるか、ということが重要です。

期待する反応

これは、文書の書き手が読み手に期待する反応のことを指します。

前述のとおり、良い文書は何らかの目的に沿って書かれています。それは、目的を深掘りしたイシュー(問い)に対する明快な答えが記述されているという形式をとります。しかし、ビジネス文書の場合、それだけでは不十分です。「ある情報を知ってもらった結果、その人にどういう反応をしてもらいたいのか」ということまで明確にしておく必要があります。

読み手が書き手に期待する反応は、次の3つに分けられます。

  • 理解してもらう
    内容を深く理解してほしい、参考までに読んでおいてほしい、ただ単に知っておいてほしい、というような期待です。こういう事態があった、ということを上司に知っておいてもらいたい、自社の新製品の存在や名称を顧客に認知してもらいたい、という期待もこれに含まれます。

  • フィードバックしてもらう
    文書を読んだ結果、何らかのフィードバック(意見、アドバイス、文書や自分の行動に対する改善点など)が欲しい、という期待です。部下が上司に対してレビューを依頼するのはこれにあたります。

  • 行動してもらう
    読み手に何か具体的なアクションを求める、という期待です。顧客に自社製品を買ってもらいたい、自分の提案について上司に承認をもらいたい、上司から関係者各位に働きかけてもらいたい、必要な予算を確保してもらいたい、といったようなものが、これに含まれます。

これらは、下にいけばいくほど読み手に負担を強いることになります。読み手にどの程度の負担を強いる文書なのか、によって、内容の精度や分量、詳しさ加減は変わってきます。

また、期待する反応が具体的になった時点で、もう一度イシュー(問い)を確認します。そのイシュー(問い)に答えを出すことで、本当にこの「期待する反応」を読み手に起こさせることができるかどうか確認します。

書き手

文書における「書き手」とはその文書の作成者のことですが、厳密には「その文書に書かれている内容に責任を負う人」であるともいえます。ビジネス文書の「書き手」が必ずしも文書を書き起こした人とイコールになるわけではありません。あなたが上司や部署の名義で文書を作成する場合は、「書き手」はあなたではなく、上司や部署です。その場合、あなたは上司の代筆をしたり、部署を代表してその文書を書いたりしていることになります。

「書き手」が誰であるか、ということによって、文書に盛り込むべき「内容(答え)」の視点が変わります。例えば「このプロジェクトを成功させるために必要な要件は何か」という「問い」に対する「答え」は、「書き手」がプロジェクト・マネジャーであれば、プロジェクトがもたらす利益と自社のビジネスとを結びつけた、ややマクロな視点での「答え」が必要でしょうし、プロジェクト・メンバであれば、具体的なリソースや技術的要素などが「答え」になるでしょう。

内容(答え)

文書における「答え」とは、文書の中身そのものです。文書は、最初に明確にしたイシュー(問い)に対する回答(または解答)になっていなければなりません。「答え」を明確にするためには、あらかじめ「問い」を明確にしておく必要があります。

恐ろしいことに、イシュー(問い)が明確になっていなくても、何らかのまとまった文書が書けてしまいます。それこそ文例集を寄せ集めても、話し合われたことを時系列に並べただけでも、文書としての体裁は整います。これが逆に怖いことなんです。そのような、ただ体裁が整っているだけの文書を読んでも、読み手は「書き手が何をいいたいのかわからない」という感情を持つだけで、その文書から何らかの影響を受けるということはないでしょう。

プランニングの段階では

ええと、元々この話しは、文書の品質を高めるためのプロセスについて、でした。今はプランニングの段階の話をしているんでしたね。

tempsnip1.jpg

プランニングの段階で明確にしておくべきものは、「目的」および「イシュー(問い)」「読み手(隠れた読み手)」「期待する反応」「書き手」です。これらを明確にした上で、次は情報収集のステップに移ります。

今回も長くなりました。続きは次の投稿で。


今回お話している内容は、弊社の次の研修で詳細に説明しています。

文章能力養成講座 上級 ~ロジカル・ライティング~

興味がありましたら、ぜひお問い合わせください

Comment(0)