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人を動かすものは何でしょうか?様々な「座右の銘」から、それを探っていきたいと思っています

18. 言葉はこんなふうに変化するのか

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今からちょうど、8年前、「言葉はこうやって変わっていく」という記事を書かせていただきました。一般に「正しい言葉遣い」と言われている用法を知っている人間にとっては気持ち悪い言葉遣いでも、その言葉遣いしか知らない人にとっては、気持ち悪くもなんともない。そんな言葉がやがて古い用法を駆逐し、言葉が変化していくんだろうなぁ、ということを目の当たりにしたような気がした8年前でした。

で、先日、それと非常に似た気持ちを経験しました。

私は、「良質なサービスとサービスマネジメントを勉強する」という名目で、年に何回か(本当に数える程度ですが)高級レストランとか一流料亭とかで食事をすることにしています。そこで得られる極上のサービスの中に、何かヒントを見つけてやろう、というわけです。決して贅沢をするのが目的ではありません。けど、こういうところに行くと、なぜか自然に背筋が伸びます。先日も、そういう高級なお店、仲居さんが和服で出迎えてくださるようなお店(といっても1人1万円程度で食べられるようなお店なので、目玉が飛び出るほど高いってわけでもないんですけどね)にいきました。

そこで配膳の面倒をみてくださったのが、おそらく私と比べて10歳ほどお年を召していらっしゃるのではないか、とおぼしき女性の方。さすがに、こういうところで接客をしていらっしゃる方らしく、すばらしい立ち居振る舞いで出迎えてくださいました。

この人の敬語が、ところどころおかしいんです。

  • お召し物はここに置かせていただいてよろしかったでしょうか?(よろしいでしょうか?が正)
  • お鞄がお倒れになっています(鞄に敬語を使うのはおかしい)
  • ひざかけをお使いされますか?(お使いになりますか、が正)

などなど・・・どう見ても、この道10年以上のベテラン、というような方なのに。言葉遣い以外はパーフェクトなのに。今まで誰も、この人の言葉遣いを直してあげようとしなかったのか・・・

と、なると、ですよ。この方が後身を指導する際、後身の方がこういう言葉遣いをしても、絶対に指摘しない(直せない)ことになるわけです。やがて

  • ひざかけをお使いされますか?

という敬語を使う人のほうが多数派になって、これは「正しい言葉遣い」だということになるんでしょうね。

言葉は生きています。何が正しい用法で、何が間違った用法か、というのは、時代と共に変化します。それではらちがあかないので、いちおうは「文部科学省が正しいと言っているものが正しい」ことになっています。しかし、文部科学省の答申も時代と共に少しずつ変化していますから、「正しい日本語」を啓蒙する者は、動静を見守っていかなければなりませんね。

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