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人を動かすものは何でしょうか?様々な「座右の銘」から、それを探っていきたいと思っています

19. 「サービス」と「おもてなし」の違いをご存知ですか?

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昨年、「お・も・て・な・し」ってのが流行りましたね。

また、最近では「CS(Customer Satisfaction:顧客満足)ではなく CD(Customer Delight:顧客感動)だ」とも言われています。

日本語の「サービス」という言葉は非常に懐が深すぎて、何でもかんでもこの「サービス」という言葉に含まれてしまっています。これは(私の勝手な思い込みなんですが)「Service」の本来の意味よりも、日本人の「他人をもてなす」という感覚のほうが広くて進んでいるからではないか、と考えます。

その一方で、日本は農業や製造業で立国してきた経緯があり、どこかで「サービスはタダ」みたいな感覚があるようが気がします。おまけ、という意味で「サービス」という言葉を使ったり、「家族サービス」という言葉があったりするのはその一例です。

では、本来の「使役」という意味の「サービス」と、「奉仕」という意味の「サービス」はどこが違うのでしょう。私はとても簡単に、

見返りを求めるかどうか

にかかっているのではないか、と思っています。そして「使役」と「奉仕」とを区別するために、「見返りを求めない、真に相手の立場や状況、思いを汲んで提供するのが『おもてなし』である」と定義するのが良い、と考えるのです。

「サービス」は、対価をはじめとする見返りを求める行為です。あなたの望みを叶えてあげるからお金を頂戴ね、とか、今度は私の望みを叶えてちょうだいね、という見返りを求めています。対価を期待していますので、相手を満足させ、喜んで対価を払ってあげよう、と思わせなければなりません。そのためには、相手のニーズを汲み、相手の望むことを過不足なく提供する必要があります(プロジェクトマネジメントの教科書であるPMBOKでは、過剰な提供は「金メッキ」である、としてダメな行為だとしています)。

一方、「もっとこうしたら相手は喜ぶだろう」とか「もっともっと相手にとっていいことをしてあげよう」と心から思い、対価を期待せず、相手のためだけを思って行うのが「奉仕」です。ただこっちはクセモノでして。「こうしたら喜ぶだろう」ということを、仮説を立てて、相手に確認せずに実行することが多いですからね。本当に相手の立場や気持ちを正確に汲み取る必要があります。そうでなければ、「おもてなし」はすぐに「おせっかい」に変化してしまいます。真の「おもてなし」が、感動を生むのです。

そう考えると、Customer Delight は、基本的に見返りを求めてはいけないような気がします。「売り上げを上げるために CD活動をする」ってのは、矛盾した行為です。顧客に感動を与え続けることで結果的にリピーターが増え、売上が上がるという「自然な成り行き」を期待するべきなのです。でないと本当の CD は実現できないでしょう。

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