ヒューマンスキル系研修の「効果測定」について
私は、コミュニケーションスキルやファシリテーションスキル、ネゴシエーションスキルなどの、いわゆる「ヒューマンスキル」とよばれるたぐいの研修をご提供しています。この手の研修をご提供する人間が常に悩まされているのが、その研修の効果測定の方法です。
単刀直入に言えば、研修を「買う」側、すなわちお客様企業の教育担当者の立場からすれば、「その研修の費用対効果はどの程度か」ということを数値化したいわけですね。
技術系の研修であれば、例えば「Android OS のプログラミング研修を受講することにより、今まで作ることができなかった Android アプリが作れるようになる。その Android アプリによって年間ン千万円稼ぐことができるならば、ン十万円の研修に投資することによる費用対効果はこれだけである」ってそろばんをはじくことができるわけです。
しかしヒューマンスキル系研修はそういうわけにいきません。コミュニケーション系の研修を受けて、仮にコミュニケーションが上手になったところで、「それによって今まで稼ぐことができなかった金額ン千万円が稼げるようになる」とは言えないわけです。つまり、費用対効果を算出することが極めて難しいわけです。
そんな場合、私はこう申し上げることにしています。
ヒューマンスキル系研修は、社員に対する福利厚生と同じようなものです。
これは、ヒューマンスキル系研修はレクリエーションである、と言っているわけではありません。法律で定められている休暇は別として、例えば社員のために保養所を建てたり、トレーニングジムや温泉施設などと契約をしたりしたことによって、社員がン千万円多く稼げるようになる、という算出は極めて難しいですよね。それと同じだってことが言いたいのです。
言い換えれば、私は、会社は福利厚生の仕組みを社員に提供する義務がある(それによって社員が気持ちよく働くことができる)ごとく、ヒューマンスキル系研修を社員に提供する義務がある(それによって風通しの良い、働きやすい職場環境が作れる)と信じています。
「うちの会社はコミュニケーションミスが多い」と嘆く声を時々耳にします。でも、正しいコミュニケーションの方法や適切なコミュニケーションの密度を社員に教える機会を設けたことがあるでしょうか。人間は、教わっていないことは実践できないのです。本人によっぽど高いモチベーションがない限り、見様見真似には限界があります。
全国の社長の方々、福利厚生を充実させるかのごとく、ヒューマンスキル系研修を充実させてみてください。もちろんそれ「だけ」では足りないと思いますが、会社の風通しをよくするには少なからず効果があると思いますよ。