カラスは白い、かもしれない
カラスは白いかもしれない ---
この、どう解釈していいかわからない言葉は、私が人とコミュニケーションをとるときの大事な注意事項になっています。
「白いカラス」、といっても、それはアメリカの人種問題をテーマにした映画のことでも、故・石ノ森章太郎さんの作品「人造人間キカイダー」に出てくる悪役・ハカイダーのバイクのことでもありません。また、ヘンペルのカラスのことを言っているわけでもありません。本当に白いカラスは実在しますが、そのことを言っているわけでもありません。
結論から先に言うと、「ひとりでは生きていけない人間社会において、自分の評価は他人が決めるもので、自分が決めるものではない」という意味なんです。
どういうことでしょうか?この言葉には、大きくふたつの意味が込められているのです。
先にも述べたとおり、世の中には白いカラスは実在しますが、ここでは街でよくみかける「黒いカラス」を頭に思い描いて読んでください。
●カラスは「自分は白い」と思い込んでいるかもしれない
誰の目から見ても、カラスは黒く見えています。野山に住んでいるカラスの黒は「濡れ羽色」ともいい、女性の黒髪の理想の色だ、なんていわれています。
しかし、当のカラスは「オレは白い!」と思っているかもしれません。カラスは「オレは本当は白いんだ!」と主張しても、周りのみんなは「何を言っているんだ、君は黒いじゃないか」と言って取り合ってくれません。
やがてカラスは、「誰もオレのことを理解してくれないんだ・・・」と、途方にくれます。
この問題に結論を出すのは、本当に難しいと思います。どう見ても黒いカラスが、自分では白い、と主張しているわけですから。
現実でも、そんな人、いませんか?
たとえば、謙遜しすぎて、立派な人であるにも関わらず「自分はダメな人間なんだ」と褒められることを否定してしまう、褒められ下手な人。
たとえば、「あいつはダメだ」と言っている自分が一番ダメで、そんな人ほどなぜか要職についていたりする人。そんな人を上司に持つ部下は大変です。
自分を一番よくわかっていないのは、実は自分なのかもしれません。
●本当は、カラスは皆白いのかもしれない
えー、そんなバカな。
でも、そうではないと言い切れますか?とはいうものの、ここで哲学的な問答をするつもりはありません。
現実問題として、「本当は白いかどうか」なんて、大きな問題ではないのではないかと思うんです。みんなが黒いと思っているカラスは、世の中的には「黒い」わけですよ。
99回本当のことを言っていた「ほぼ正直な」人が、たった1回、大事な場面でウソをついたために「あいつはウソツキだ」というレッテルを貼られる。それが世の中です。そうなってしまえば、世の中的にはその人は「ウソツキ」と評されてしまうんです。怖いですねぇ。
あるキレキャラで売っていたなお笑いタレントがいます。そのお笑いタレントは傍若無人で、礼儀知らずで、少しのことでもすぐ怒り出すように見えていました。しかし現実の彼はとっても優しくて礼儀正しくて、周りのひとの面倒をよく見ていました。しかし「それじゃキレキャラが立たないから」といって、ごく親しい人の前意外では、あえて傍若無人に振舞っていました。
もちろん彼の場合は「売れるため」という目的があるわけですが、だとしてもほとんどの視聴者は、彼が傍若無人な人であるという評価を下していたと思います(それでファンになる人もいるだろうし、嫌いになる人もいるでしょう)。
ここでもやはり、他人の評価がその人の評価なんだ、ということが言えると思うのです。
じゃぁ、どうすればいいの?ということになりますよね。
大切なことは、ふたつだと思うのです。
- 他人の評価に常に耳を傾け、それを素直に受け入れる。
- 自分が期待した評価と異なる場合は、なぜそのような評価を得ているのかを真面目に考える。
自分は自分のことを正直者だと思っているのに、周りが「おまえはウソツキだ」という。そういうからには、(作為的ないじめである場合は別として)自分のどこかにウソツキに見える何かが確実に存在していることに他ならないのです。他人の評価を素直に受け入れることで、なぜ自分がそう見えているのかを判断することができるようになります。
その上で、「そんなの気にしないよ」というのならそのままでもいいだろうし、直したくなった場合は直す努力をすればいいんです。周りの評価に踊らされろ、という意味ではありません。周りの評価をきちんと聞いて、その上で自分はどうすればいいかと判断する、ということです。そうすれば自然と、周りの人は「正しい」評価をしてくれるようになります。最もよくないのは、「みんなはオレのことを全然わかっちゃいないんだ」と聞く耳を持たないことです。
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