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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

新入社員研修で私が心がけていること① 一度にたくさんのことを言わない

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新入社員研修がスタートしています。今年は、売り手市場、各社採用増で、例年より多くの新入社員の皆さんとお会いすることになりました。
(人材育成支援企業としてはありがたいことです。)

私が担当する分野は、ビジネススキル全般です。
わかりやすいところから行けば、ビジネスマナー、対人コミュニケーション、ビジネス文書、プレゼンテーションなどなど。

こういう研修は、年々、アクティブラーニングになってきていて、体験が多いのですが、とはいえ、何も教えずに、「はい!やってみましょう!」というのも何か違う。必要なインプット(講義、説明)はした上で、アウトプット(体験)をしていただくような構成です。

たとえば、新入社員にプレゼンテーションしてもらうとしましょう。

当然、あれこれ、改善点が見つかるわけですが、一度にたくさんのことを言わないということが大事です。

たとえば、下向いたまま話している。原稿をずっと手に持っていてその原稿が目障りなほど大きい。身体がふらふらしている。敬語がおかしい。声が小さい。など、色々なことに気づいたとして、これらを全部一度にフィードバックしたら、結局、どれも未消化で終わります。

とにかく、1回に1つにすることが大事です。

「下を向いたまま話さずに、顔をあげて話したほうが聴き手に話している印象を与えますよ」

といった感じで、一つしか言わないようにします。

もちろん、改善点だけではなく、良い点もきちんと伝えます。

良い点を伝えた上で、改善点を一つ。

そうすると、次にプレゼンするまた別の新入社員が、前の人が受けたフィードバックをきちんと消化して、挑戦してくるのです。
(このあたりは、新入社員の凄いところで、吸収が早い!中高年にはなかなかマネできないことです)

27歳のころから新入社員研修に携わってきました。

新入社員と年齢も近く、講師として頑張らねば!と気負っていたこともあり、また、自らも大量のダメ出しをくらって育った経験もあって、新入社員研修では、どんどん「ダメ出し」をしていた時代がありました。

歳を重ね、色々な経験と、それからID(Instructional Design)や成人学習、経験学習など様々な分野の本を読んだりする中で、「あ、一度にたくさん指摘するのは逆効果だな」と気づきました。

言いたいことは山ほどあっても、1回に1つ。

相当意識していないと、あれもこれも言いたくなりますが、50代になって、ようやく自制心が働くようになりました。

1つ言って、一つクリアしたら、「凄い!」「さっそく取り入れていて素晴らしい!」と承認します。

新入社員は、知らないからできないだけで、ちょっとしたコツを伝授するだけで、あっという間に上達するのです。(特に、ビジネススキル分野は)

明日からまだまだ続きます。

体力勝負ですが、毎日が発見で、私にも勉強になります。

楽しい日々です。


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「インストラクショナルデザイン」(ID)というのは、教育工学の分野で「魅力ある効果的な教育研修をするためのシステマティックなアプローチ」なのですが、あまり知られていません。

人材開発の専門家だけではなく、上司や先輩などもこの考え方を知っておくと、後輩指導に役立ちます。
また、学習者自身も「学び方」を知るためにこういう本を読んでおくのはおススメです。

たしか、「一度に一つを教える」ということが書いてあったのは、この本だったと思います(たぶん、で申し訳ない)。

ところどころに漫画もあって、とっつきやすいIDの本です。

 

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