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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

イベント行ってきた!→本間浩輔さん(ヤフー)× 中原淳さん(東京大学)と考える 「会社の中のジレンマとこれからの働き方」

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先日9月20日(火)夜、台風で暴風雨という東京は青山ブックセンターに行ってきました。トークショー。

ヤフーの本間さんと東京大学の中原さんの共著『会社の中はジレンマだらけ』、発行記念イベント。→ コレ

この本は、会社によくある「ジレンマ」をいくつか扱って、人事の立場と研究者の立場からの解説があり、項目ごとに「あなたならどうする?」と問いかけるようになっているものです。
「育休産休で休業する社員の補充はなぜ行われないのか?」とか「働かないおじさんの給料はなぜ高いのか?」とかそういう内容が5章分。その本の章立てに沿って、トークが繰り広げられました。中原さんは、途中から立ち上がり、ホワイトボードに絵や文字を書きながら、話を進めています。「教員はホワイトボードを見ると書きたくなる」とおっしゃって(笑

会場には、50-60人くらいの人が集まっていて、ほとんどが男性で、それもどちらかというと中高年が多かったように思います。


びっくりしたのは、本間さんが冒頭で来場者に「この本、読んでくださった方?」と手を挙げてもらった時のこと。

「1/3くらいですねぇ。ありがとうございます」

とおっしゃっていましたが、「えー?」と私は驚いてしまいました。

事前に本を読んで参加しないの?びっくり!と。← 事後に読むという楽しみ方もありますが。

それはさておき、走り書きのメモから、気になったことをつらつらと。メモが不正確かもしれませんが、悪しからず。

●「修羅場の経験が部下を育てる」ということが喧伝されて、多くの方が「修羅場は大事だ!」と思っている(思い込んでいる)が、経験自体も「リソース」なので、「有限」であり、誰もがいい経験ができるわけでない

●中高年世代で、かつ優秀なマネージャほど、部下に「理不尽な想いをさせればよい」「うまくいかなくても放っておけばよい」と言うが、今はそういう時代でもない

●修羅場幻想というものに取りつかれている人もいて、部下に都合よく仕事を「ふって」、上司である自分が途中でその仕事に関心がなくなり、放置するようになり、上のほうから「あれはどうなっているんだ?」と聴かれると、「任せてあります。だって、人を育てるには、修羅場経験が大事っていうじゃないですか」などと言って逃げる


●「リーダーシップの開発」というのは、「日常に埋め込まれているもの」なのではないか。仮に修羅場経験が存在するとしても、経験の中の5-10%くらいで、大半の、つまり、90-95%くらいは、「日常」。多くの人は、この日常で働き、日常の中で成長しているはず。だとすると、リーダーシップの開発も、その「日常」の中でいかに行うかを考えることが重要ではないかと思っている

●ヤフーでは、上司と部下のWeekly面談があり、1回30分。上司と部下が向き合ってじっくり話す時間もなかなかないので、仕組みとしてしっかり時間を取っている。これは8割くらいの社員が「効果がある、いい」と言っているので継続している。上司にとっては、部下の情報が入ってくることがとても大きい。部下を知ることにつながる。

●ヤフーでは、上司に対して、部下がフィードバックする「ナナメ会議」という仕組みも取り入れている。上司がいないところで、上司に対して「知っていること」「続けて欲しいこと」「やめてほしいこと」「新たに始めてほしいこと」を述べる。それを第三者ファシリテータ(他部署のMGRなど)がホワイトボードなどに整理し、今度は、部下がいないところで上司にフィードバックする。上司というのは、フィードバックされることに慣れていないので、結構刺激になる。 起こりがちなこととしては、「犯人探し」と「言い訳」。誰がこんなコメントを書いたんだ!という犯人探し。「俺は、こういう考えでやったのであって、理解しない部下が悪い」といった言い訳。

●ナナメ会議は、ファシリテーターが上手に進めないとうまくいかない。「もっとよいMGRになるにはどうしたらいい?」「もっと皆が働きやすくなるようにするためには、どうしたらよいか、という観点でコメントしてください」と促すとよい

●産休社員、育休社員が休暇に入っても人員の補充がない、という問題について。現在は、皆がひとところで長く働くわけでもないので、「組織と社員の間での"貸し借り"」が発生しづらい。社員の評価も短いスパンで見ることになり、「今は休むけど、長い間で後で頑張って返すから」といった「貸し借り」が成立しづらいのがマネジメントしづらいポイントか

●本では、産休・育休をテーマにしているが、介護の問題もある。いつ誰の目の前に介護の問題が立ち上がってくるか分からない。「ダブルケア」に直面している人もいる。こういう課題は、「人事はどう対応するの?」と問われているようなもの

●本来は、「Pay for Perfermance」であるべきなのだろうけれど、正しくパフォーマンスを評価できない。管理職が管理だけに専念できないような忙しさだという点も否めない

●これからの時代は、どんどん「仕事人生」が伸びていく。より長く働くことが求められている。じゃあ、その長くなる一方の仕事とどう向きあうの?は、人事の課題でもあるが、個々人が考えるべき課題でもある

●中原さんが、学生にアドバイスしていること。「アルバイトするなら、自分の能力が伸びるものをしなさい。」・・・仕事には自分の能力が伸びるものと伸びないものがある。自分の能力が伸びない仕事というのは、結局、「自分の過去を切り売りしている」に過ぎない。だから、学生には、やるな!と言っている

●会社をつぶしたことのある経営者は、「働かないおじさん」をそのままにしておくことはがどれほどリスクなのか知っている

●要らない社員は1人もいないが、その人に見合う給料はある。適性な給与を作っていくことが大事

●日本人は学ばない。特に社会人が勉強しない。でも、学び続けることは大事。どう学び続けるか、どう学び直すのか、去年の自分より成長していることを目指す

脈絡がほとんどないメモの転記ですが、ひっかかったことを列挙してみました。

会場では、本には書けなかったこと、書いたけど、チェック時点で削除しなければならなかったことも時々出てきました。

ところで、途中で、2回、「3人ひと組くらいでここまでの内容について感想を述べあいましょう」セッションがあったのですが、こういうオープンで集まっている会で、その場で突然あった人と3分くらい話しても、特に得られるもののなく、あの時間はなくてもよかったかもしれないなと思いました。知らない人同士でどこまで話すか、というのは難しく、それも3分程度の時間では、結局、誰かがしゃべって終わり、しかも、その内容は、本当に思いつきになるという・・・。

参加型にするのはいいことなのだけれど、「隣同士で話す」場合は、もう少し、「軸」「テーマ」を揃えたほうがいいかも、と思ったことも書き添えておきます。


あと、この本に載っていない様々な「ジレンマ」を題材に、管理職研修をしてみたいなぁとも思いました。

たとえば、
●「全員に等しく教育機会を与えるべき」か、「伸びる意欲のある人だけに教育機会を与えればよい」のか、問題
●「仕事は増えている」のに「残業も持ち帰りも禁止」という問題
●「女性管理職の登用をクォータ制にして取り組む」と「女性は優遇されている、不公平だと男性からクレームが出てくる」問題
とか。

もっともっとたくさんのジレンマを思いつけそうです。

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本、面白いですよ。



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