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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

「新人が間違っていたらどうしたらいいんですか?」という質問

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怒涛の新入社員研修の季節は終わり、5月以降は、各社のOJTトレーナー研修が仕事の中心になってきてます。今年だけでもう数百人のOJTトレーナーの方にお会いしました。

色々な質問や疑問が会話のテーブルにのぼるのですが、最も多いのが、コーチイングを学ぶ際に出てくる

「新人が間違っていたらどうしたらいいんですか?」

という質問です。

相手の考えもちゃんと聞いてみよう。
自分の考えを言わせることで、自分で考えて答えを出そうとする訓練にもなる。

そんな話の流れの中で、

「でも、たとえば、"どうしたいの?"と聴いた時、新人の答えが間違っていたらどうしたらいいんですか?」

とよく訊かれるのです。

もちろん、「1+1=5です」と言われたら、「間違っているよ!」と教えることはできますが、仕事へのアプローチ方法とか顧客に対する考え方とか、そう簡単に「間違っている」と言えないようなことにも、「新人が間違っていたらどうしたらいいんですか?」という質問をされることがあります。

とても不思議なんです、これ。

「相手の言うことが"間違っている"と自信を持って言えるのはなぜ?」という点が不思議なのです。

新人が言うことを一刀両断に「間違っている。"正解"はこれ」と言う前に、「どういう思考プロセスを経て、その考え、意見を述べるに至ったか」を聴いてみないと間違っているかどうか分からないし、プロセスを聴いた上でも、「間違っている」と決めつけるのは難しいんじゃないかと思うからです。

新人の発言が「間違っている!」と思う前に、「どうしてそういう考えをするに至ったのだろう」とか「その考え方で進めるとどうなるだろう?」とか、一旦頭の中をできるだけクリアにして、「その可能性もあるんじゃないか」「自分が正解と思っていることのほうが、今はずれているってことはないか」「他の道、考えもあってもいいんじゃないか」と考えてみることが大事だと思うのですが、「新人が間違っていたらどうする?」とすぐに判断してしまう方が多いような気がします。

これだけ変化の激しい世の中になってきて、自分が1年前に学んだ方法が正しいとも限らず、他のやり方にも可能性はたぶんにあるわけで、「自分で考える人になってほしい」と願うのであれば、まずは、「虚心坦懐」に「どうしてそう考えるのかな?」「どういう風に考えてその意見に至ったのかな?」と聴いてみることと、聴いている先輩側もまた「アンラーン(Unlearn):学びほぐし」の機会として、一度その意見、考えも吟味してみることが大事なのではないかしら。

仮に、「1+1=10です」と言われても、「それは間違っている!」と言えないケースもあり、新人は、2進法で話しているのかもしれず、相手の前提とか背景とかまずは聴いて、自分の持っている「(正解と思っている)答え」も疑ってみて、その時々で最適な道を共に探る、ってのがいいのかなぁと考えています。

・・・って言うは易し、行うは難しで、自分に時間的、かつ、精神的余裕がないと、難しいんですけれども。

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