「悩みを聴くとすぐアドバイスしたくなる」という症状
ロールプレイで、「パートナーの悩みを聴きましょう。ただ聴いて、掘り下げてさらに聴いて、時に共感して・・それだけでいいです。たった3分ですから。聴くことに専念し、アドバイスをしようとか、解決してあげようなどと考える必要はありません」と指示を出して、会話を始めます。
・・・さあ、3分。簡単かと思いきや、そんなことはありません。
人は、「3分」ですら、聴き手に徹することというのは難しいものなのです。
たとえば、以下のように後輩が切り出したら、どうしますか?
「悩みがあって・・・。先輩に習ったはずなのに、しばらくするとまた分からなくなって・・。こんなんでこの会社でやっていかれるのか、不安で仕方ないです」
「そうかぁ、不安なのか」と気持ちを表現する言葉を繰り返す・・・
あるいは、
「習ったはずなのに、たびたび分からなくなっちゃうんだね」と内容面で繰り返す・・・
・・・
と、まずはこんな風に繰り返すことができる人はそれなりに上級者です。
しかし、次のように応じちゃう人が多いのです。
「ああ、まだ配属されたばかりだから、仕方ないよなぁ。大丈夫だよ、慣れてくれば」
「新人なんだから、そのくらいのこと、周りも大目に見てくれるよ。俺も最初は自信なかったけど、頑張っていたらなんとかなったし」
これらは「大丈夫だよ」と励ますパターン。
あるいは、
「メモはちゃんと取っているの?」
「その時、理解できてないなら、恥ずかしくても遠慮せず質問すればいいんじゃないの?」
こういう応じ方は、「解決策・アドバイス」を示すパターン。
・・・本当は後輩の話はまだまだ続くかもしれないのに、何か言いたくなる。たった3分の間でも。
「もっと質問して、状況を掘り下げてみたらどうですか?」とアドバイスすると、「何を質問していけばよいのか分からない」という声も聴かれます。
「悩みがあって・・・。先輩に習ったはずなのに、しばらくするとまた分からなくなって・・。こんなんでこの会社でやっていかれるのか、不安で仕方ないです」
「そうかぁ、不安なのか。」「分からなくなってしまうことがあるのね。」・・・と受け止める。
次に
「どういう風に不安なの?」
「習ったことが分からなくなるって、たとえば、どんなことが?」
「その時、自分ではどういう風に考え、行動しているの?」
「どういう状況が望ましいのかしら?」
「誰かに何か言われたの?」
などと質問していく。
相手(後輩)は、話しながら、自分の課題が明確になってきて、聴き手側がアドバイスなどしなくても、案外、「あ、そうか、ノートの書き方に問題があるのかも!」とか「教えてもらった時点で、怪しいなと思ったら、即座に質問すればいいだけの話だ」などと気づいていくかも知れません。
・・・先日ある企業で「OJT担当者研修」を実施した際、上記のようなロールプレイをしたところ、何人かの方が「私は、話を聴いているようでいて、そうでもなく、ついアドバイスしたくなるという傾向があるようだ。今後気を付けたい」という気づきを口にしていました。
アドバイスは、相手を思って行うもので、決して悪気はありません。
話をしっかり聞き切る前にしてしまうため、話している側は、「そこが問題じゃないんだけど」と思ったり、「解決策を押し付けられた」と感じたりすることもあります。
徹底的に聴くって、実は難しいもので、アドバイスしたくなる人は、時々自分のクセを客観視してみることも大事かも知れません。