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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

「雑談力」を向上したい?

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「お客様との"雑談"が下手で、ビジネスライクな話、技術的なことなら説明できるんだけど、"関係構築"のための会話ってあるじゃないですか。そういうちょっとした"雑談"が上手にできないんですよね、うちのメンバ。どうやって身に付けさせたらいいんでしょうか? そういう研修ありませんか?」


これを聞いた時、イメージしたのは、技術者が技術の細かいところに踏み込んで話し、相手が理解していようがいまいがマニアックな説明に終始してしまう場面だった。が、そこまでステレオタイプな光景でもないのかも知れない、実際のところは。

以前、「アイスブレークがなく、すぐ本題に入ってしまう」という人がいて、「アイスブレークなんて時間の無駄だし」とおっしゃるので、「まぁ、騙されたと思って、お天気の話とかNEWSとかあたりさわりのない話から入ってみては?」とアドバイスしてみたら、数週間後、「やってみたら、意外にお客さんと商談も調子よく進んだ!」と嬉しそうに報告してくださったことがあった。

そういう「アイスブレーク」的な何かは、相手との会話の呼吸合わせに役立つのだけれど、アイスブレークを仕掛けるだけでなく、アイスブレークを受ける能力も大事、と言われたことがある。

「今日はお天気いいですねぇー」
「そうですねー、こういう日は、仕事なんかしてないで遠出したいですねぇ」
「ま、そうはいかないけれど・・・(笑」

という会話が成立するためには、「仕掛ける」「受ける」の両方が必要だ。

しかし、たまに「受ける」ができない人がいる。

「今日はお天気いいですねぇー」
「そうかな、寒いだけですよ」
「・・・」

アイスブレークは「受け手」にも上手に返すスキルが求められるという訳。

さて、冒頭「雑談が下手で・・・」と言う場合、いくつか考えられるなぁ、と思った。

まずは、「そもそも"雑談"するだけのネタがない」「相手の"雑談"に応じるだけの知識がない」という"インプット"不足なケース。

「日経平均、18000円に乗りますかねぇ」
と言われた時、
「"日経平均"ってなんですか?」
みたいな応じ方をしてしまうとうまくいかないかも知れない。

優れた経営者とお話しすると、いわゆる「教養」があることに驚かされる。歴史、哲学、古典、音楽・・・色んなことをご存じ。
そういう方と話を合わせるためには、こちらもある程度の「知識」がないと太刀打ちできない。

もちろん、「ひたすら傾聴」というのでいいと言えばいいのだが、それにしても、「ちんぷんかんぷん」では傾聴してもこちらが何か気の利いた返しをすることは難しい。

次は、その「傾聴」の問題。「雑談」というと、こちらからなんらかの話題を持ち出すという感じがするけれど、相手が自分より年長だったりポジションや立場が上だったりするとき、「上手に傾聴」することも「雑談力」のポイントではないかと思っている。

私がどんな場合でもお聞きするのは、相手のキャリアだ。

「どういうキャリアを歩まれて来たのですか?」

という風に問い掛け、あとはひたすら耳を傾ける。

ご自分の歴史は、たいていの場合、楽しそうに、そして詳しく話してくださるので、初対面でも長い付き合いの方でも、長く会話ができる。それに、面白い!


先日教えていただいたのが

「今のお仕事は長いんですか?」

という問いかけ法だ。

これ、うまいなぁー。

「今のお仕事は長いんですか?」

長ければ歴史を、長くなければ、「いえ、短いんです。以前は〇〇をやってまして」と、どちらにしても話が続く。


いずれにしても何よりも大事なのは、「相手に対して、心から興味を持っている」ことだ。

「あ、なるほどね。話題に困ったら、キャリアを聴けばいいのね」なんて付け焼刃で形だけ真似しても、全く興味を持たずにから返事していたら相手も愉快な気分にはならないだろう。

「この人はどういう人なんだろう?」と興味シンシンに身を乗り出して聴いていたら、相手も自分も共に楽しくなるのではないだろうか。


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