第22話:年齢を訊くなんて!?
女性に年齢を訊いていけない、ということになっているらしい。何歳から何歳までが訊いてはいけないのか?
よちよち歩きの子供に「なんさい?」と訊く。彼女は、指を2本立てて、「さんさい」と言う。そばにいるママが「やっと〝3歳〟と覚えたばかりで、まだ指の本数までは追いついてないんです」などと解説してくださる。
母方の祖母はあと3週間で100歳という惜しい年齢で亡くなったのだが、孫の私から「おばあちゃんは何歳?」とよく質問されていた。祖母は、「99歳!」と自信満々で答えてくれた。
こういった例から、とりあえず、幼児とある程度の高齢者には尋ねてもよさそうだ。(かなり大雑把な分析だが)
年齢を尋ねてはいけない年齢層は、幼児でもなく、高齢者でもない、その中間にあるのだろう、きっと。
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私は、年齢を訊かれても素直に答える。今まで年齢をごまかしたことも隠したこともない。歳相応な振る舞いをしているかどうか自信はないが、だからといって隠すほどでもない。
そのためか、他人の年齢も気になる。別に相手が年上だからどうだ、とか、年下だからどうだ、というのではないのだが、相手の年齢を聴き、「自分の×歳の頃とはずいぶん違うんだな」とか「私の×歳の時も同じことに悩んでいたなあ」と考えるための参考にしているような気がする。
相手を年齢で評価しているのではなく、相手の年齢を尋ね、それを鏡のようにわが身を振り返っているのだと思う。
訊くからには自分もきちんと伝える、というのが礼儀だと思うので、会話はこんな風になる。
「○○さんは、何歳ですか?私は46歳ですが」
相手は、一瞬、え?っとなってから
「あ、ボクは、××歳です」などと素直に教えてくれる。
自分の年齢を先に述べてから相手の年齢を尋ねる、という手法?をあまりに頻繁に使っていたら、ある時、同僚に真顔で質問された。
「淳子さんの、〝私は○○歳だけど〟という前置きって、作戦ですか?」
作戦!? そう映るのか、びっくり。 作戦と言うほどでもないが、まあ、ギブアンドテイク、といったところだろうか。
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一般に女性は若く言いたいもののようである。同僚の連れ合いは、アンケートなどに回答する際、「24歳OL」と必ず記載するそうだ。その実、30代の子育て中のママである。
我が母は、妹がまだ4-5歳の頃、「お母さんは8歳」と言い続けていた。妹は、数の概念が多少わかり始めた頃で、自分の年齢よりは上だということくらいはなんとなく理解でき、それで納得していた。「うちのお母さんは、8歳」としばらく言っていた覚えがある。
しかし、たまに年長に言う人もいる。仕事仲間の48歳の女性。「年が明けたら、もう50になります。数えで」と真顔で答えていた。「そんな、わざと数えで表現してまで年上に言わなくても」と皆でたしなめてしまったのだが、「数え」という表現もまた風流である。
ところで、「失礼ですが、おいくつですか?」と尋ねられ、正直に「34歳です」と答えたりして、相手から「えっ!?見えないですねぇ」としみじみ言われたとしたら、どう思うだろうか。
「もっと若く見えると言うことかしらん?」と思い、たいていの人はニヤっとしてしまうに違いない。
本当にそうだろうか?
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数年前のこと、ある団体のイベントに招かれて講演を行った。後日、そのイベントについて調べようとインターネットで検索をしていたら、ひとつのブログがひっかかった。
当日会場で講演を聴いてくださっていた方のものらしい。
そこには、こう記されていた。
「今日は、グローバルナレッジの田中淳子さんの講演を聴いた。45歳から50歳くらいの方だった」
その時私は、42歳であった。
このショック筆舌に尽くしがたい。
しばらくの間、パソコンの画面をぼーっと見つめてしまった。
「見えないですね」が「若く見えますよ」という意味ではない可能性もある。油断は禁物なのだ。
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「日経BPケイタイ朝イチメール」(2009年7月~2010年7月配信)の再録です。年齢、年月日などは掲載当時のままです。