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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

第18話:機内の悶々

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北海道とか九州などに出張することがある。当然、飛行機を使う。フライト時間は長くても2時間。途中、飲み物のサービスが一回ある。

あの「飲み物のサービス」。毎回、緊張する。「待ってました!」とばかりに身を乗り出すのも抵抗がある。そもそも自動販売機だったら100円程度で買えるカップ一杯のジュースだ。カートが近づいてくるのをずっと待ちわびているなんて、40代としてはちと恥ずかしい。

無関心を装うためもあって、持参の文庫本などを読む。下を向いている内にうとうとと眠ってしまい、カートが通り過ぎてしまうと、これはこれで悔しい。

たった100円(と既に決め付けている)なのだが権利を行使できなかった、飲めなかったとハゲシク後悔する。だからといって、目が覚めてからわざわざCAさんにお願いするのもなんだかなぁと思い、何も言わずに済ます。

遠くからやってくるカートを待ちわびる風を出さず、かといって、寝入って飲み物をもらい損ねることのないよう、絶妙な緊張感を保つのにいつも苦労する。

以前乗ったカナダの国内線は搭乗口でジュースを一本「ほいっ」と渡してくれた。いっそのこと、そのシステムのほうが気が楽だとすら思う。



カートが席に横付けされた時も要注意。いかにも待ちわびていたというような満面の笑みはせず、「まあ、サービスしてくれるなら、断ることもないし、飲むのもやぶさかではない。決して楽しみにしていたわけではない」といわんばかりに表情を変えずに飲み物を選ぶ。

実際は、事前に、機内誌で「今月限定のジュース」の銘柄を調べていたりする。

そのくせ、頼む時は、「え?今日はシークワーサージュースがあるんですか? じゃ、それをお願いします」とCAさんに言われて初めて知ったようなフリをする。

何を気負っているのだか、これだけのことなのに、なんだかとても疲れる。(私だけですか?)



飛行機といえば、同僚が夫婦でカナダ旅行に出かけた際のこと。

食事の時間になり、カートが近づいてくる。遠くのほうから、カナダ人のCAが、片言のニホンゴでこう言っているのが聞こえてきた。…

「サバーor ホッケー」…「サバーor ホッケー」・・「サバー? シュア。ヒアユーアー」

夫妻は、「さすがだねぇ。カナダ行きでも日本発の便だと、サバかホッケが選べるんだね」とわくわく待っていた。「サバがいいなぁ。塩焼きかな。味噌煮ってことはないよね。でも、ホッケもいいなあ。大きいのかな」などと夫婦で話し合う。

いよいよカートが数メートルまで迫る。「ん?魚の匂い、全然しないね。さすがだね。飛行機用に匂わない調理をしているんだね」とさらにわくわく。

とうとうCAに、「サバーor ホッケー」と尋ねられる。折角なのでそれぞれ鯖とホッケを注文。

さぁてと、アルミホイルをはがしてみて、うわぁっ!と同時に驚きの声を上げる。

そこにあったのは、「蕎麦定食」と「ホットケーキ」。「ソバ」と「ホットケイク」だったのだ。



別の同僚が夫婦でハワイに出かけた時。入国管理で、満面の笑みの職員にこう聞かれた。

    「ハワイハ、ハズメテダスカ?」

『さすがハワイだなあ。〝ハワイは、ハズメテだすか?〟なんて、少しなまってはいるけど、ちゃんとニホンゴで質問してくれるんだ。俺たち、ハワイは、何度も来ているから、この質問はNoだな』と瞬時に判断し、力強く、“No!”と答えた。

すると脇で妻が「何言ってるの? Yesでしょ!」とすかさず否定する。

「え、ハワイは何度も来ているじゃん。初めてじゃないよ」
「何言っているの? 今、〝ワイフアンドハズバンド?〟って訊かれたのよ。」
そう妻にたしなめられたそうだ。



ところで、国内線で頼む飲み物、お奨めは「コンソメスープ」だ。食事し損ねて飛行機に乗ってしまった時。とりあえず、コンソメスープで空腹を押さえられる。たいていの航空会社でサービスしている。

・・・というわけで、結局、楽しみにしているわけです。

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「日経BPケイタイ朝イチメール」(電子書籍『コミュニケーションのびっくり箱』)再録です。(初掲:2009年7月~2010年7月) *日時や状況などは掲載当時のままにしてあります。多少、文章を加筆修正しました。

※ 最近は飛行機に乗っていないので事情がわからないのですが、日本の国内線、現在は、アルコール以外の飲み物も有料ですか?



 

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