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人材育成の現場で見聞きしたあれやこれやを徒然なるままに。

今年2014年度の新入社員の特徴

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何社かの新入社員研修に携わりまして、今は、彼ら・彼女らを迎え入れる側、つまり、OJTトレーナーの研修に仕事の軸足が移っています。ここから夏までずーっと各社のOJT支援に取り組んでいきます。

OJTトレーナーに任命されると、「新入社員がやってくるぞ、わくわく♪」と「新入社員の指導なんてできるだろうか、どきどき」と様々な感情が心の中に湧いてきます。

仕事の教え方だとか褒め方叱り方とか困った事態に陥った際の対処方法とか、心構えからノウハウまでを1~2日で学ぶわけですが、中でも興味関心を持たれるのは、「で、新入社員ってどんな感じ?」なんです。

内定者時代からちょこちょこ顔を合わせているケースはまだよいのですが、配属されるまでどういった新入社員がやってくるかわからないという場合も多く、OJTトレーナー側も不安なのですね(もちろん、配属される新入社員のほうがもっと不安です)。

新入社員研修で関わってきた中で、「今年の新入社員について感じたこと」を伝えると、熱心に耳を傾け、メモを取っていかれます。

「これはあくまでも私が接した中で感じたことで、かつ、私というフィルターを介しているし、人間は人それぞれ特徴が異なるので、今からお話しすることはあくまでも”参考”とするにとどめてほしい」と伝えることは忘れません。必ず、自分の目で確認してくださいね。あまり、色メガネで見ないでくださいね、と。

今年2014年度の新入社員の特徴とは・・・。

【素晴らしい・凄い!と思う点】

●まじめで前向きで努力家
 - 予習復習をかなりちゃんとやってきます。9時始業の場合、9時ごろ駆け込んで来る人など皆無で、8時半くらいには出社して、日経新聞を読んだり、持参の本を読んだり、予習したりしています。 

●年長者の話をよく聞く
 - 人事の方の話でも講師の話でもきちんとよく聞きますし、言わなくてもメモを取ります。聴いていることがよくわかるようなうなづきもとても多く、「聴いているよ」というパフォーマンス(注1)がちゃんとできています。

●プレゼンテーションが非常に上手
 - これはもうびっくりするくらいにプレゼンテーションが上手です。この場合のプレゼンテーションとは、PowerPointを使って、全員の前で立って行うものを指します。ジェスチャーも使うし、全体にまんべんなくアイコンタクトを送るし、手慣れた感じすらします。そして、内容もきちんと考えられていて、なかなか面白い。

●「ふりかえり」が上手で深い
 -何か演習をした後、「ふりかえり」をすると、「何が起こった」「どうだった」「どこがよかった」「どこが悪かった」「どうすればよいのか」「同じ成功を続けるには何を繰り返せばよいのぁ」・・・ここまでを掘り下げて考える、洞察力、掘り下げ力はなかなか鋭いものがあります。

●ヒアリングも上手
 - ヒアリング演習をすると、顧客(役)の回答からさらに掘り下げて聴きだすことができます。これは、ベテランSEでもなかなかできなかったりするので、関心するほどです。「●●と申しますと、具体的には?」などと例示を求めるとか、「●●というと、××についてもお考えですか?」などと提案しながらの質問をしたり、本当に凄いのです。

【苦手そうなこと】

●文章を書くこと
 - Oral Communication(たとえばプレゼンテーション)は非常に上手なのに、Written Communication(文章)は、非常に苦手です。報告書など見ると、一体何が言いたいのか伝わらない文章でつづられていて、口頭で「どういうことが言いたいのか」と尋ねると、きちんと説明できるのです。「●●を××・・・と書けばよいのでは?」とアドバイスし、「それ、それが書きたいのです」というやり取りが何度もありました。

●「ふりかえり」で仮説を立てたことを、次に結びつけにくい
 - 上述のように「ふりかえり」で掘り下げて考え、仮説まで立てるのですが、なぜか、次の行動に結びつかない。だから、次のふりかえりでも同じような反省点が挙がるということが多々ありました

●情報の「表面」を捉えがち
 - 講師や人事部から何か連絡事項があったとします。あるいは、「これはこういう理由でこうするように」と指導があったとします。すると「こういう理由で」の部分が抜け落ち、「こうすること」ということだけが新入社員同士で共有されます。伝言ゲームみたいなもので、後になればなるほど、「こうすること」字体も少し曲がって伝わり、伝わるのはよいのですが、鵜呑みにして行動するということがありました。「どうしてそうするのか」を考えなかったり、確認しなかったり。 これは、ネットの情報の「拡散」に似ているなぁとふと思いました。

●敬語が苦手
 - いつの時代もそうです。敬語、特に、尊敬語が苦手です。尊敬語と謙譲語の使い分けも苦労していました。敬語で話す機会が日常から激減しているのでしょうね。


・・・・・以上、ざっくりとした印象です。もちろん一人ひとりも違いますし、「イマドキ」だからこうだというわけでもないものもたくさんあります。

そもそも、「1994年」の新入社員と「2014年」の新入社員を正確に比べることは無理です。なぜかと言えば、こちらの年齢も20歳変わってしまっているからです。

たとえば、1994年に「これはいかんぞ!」と注意したようなことがあったとして、2014年には「まあ、新入社員らしくて微笑ましい」と思うこともあるし、その逆もあります。

環境も異なるし、社会の状況も異なるし、いろんなことが異なっているので、一概に「イマドキの若者」は、あーだこーだ、とは言えないと思ってもいます。

「苦手」という部分は、以前の新入社員でもそうだったような気がします。

ただ、「ここが素晴らしい!」は、以前の新入社員にはなかったようなことです。

たとえば、5年くらい前ですと、

●ノートを取りましょうね、と言わないと、ただ聴いているだけの人が多かった

10年くらい前ですと、

●聴いていて、理解できたなら、「はい」と返事するか、せめて頷いてくださいといわないと無反応が多かった

なんてことがありましたが、「ノートは言われなくてもとる」し、「頷きながら、表情も変化させて、本当に聴いているぞーという態度で聴く」というのもしてくれるし、いわゆるコミュニケーション力は高くなっているのですよね。特に、対人のOral Communicationは。

(注1)「パフォーマンス」と書いたのは、「見た目、振る舞い」といった意味です。他者から見える自分のあり方、見せ方、と言ったらいいでしょうか。そういう「パフォーマンス」が優れているのです。

・・・・

「イマドキの若者」というと、ネガティブな側面ばかりが強調され、その手のコラムを見ても、「こういう若者がいるんだよ、笑っちゃうよね」という論調のほうがPVが伸びるからなのか、そんなものばかりで、若手を笑って何が面白いんだろ?と私は思ってしまいますが、優れている点も多々あります。

上記以外で一番感じたことは、「真剣に生きている」「働くことに必死」という点でした。

バブル世代、それより上の私世代。「なんとなく就職した」という人も多かったのではないかと思います。なんせ、簡単に内定が出ましたから。「働く」ことの意味など深く考えずに社会に出て、だんだんと「お、仕事、面白いな」と感じるようになって今に至る・・。私などそのくちです。

今の新入社員は、最初からきりっと自分のキャリアを考えています。(描いているという意味ではなく、考えている、のです)

入社して3年間というのはキャリアに多大な影響を与えるという研究もあるそうです。実感としてもわかりますが、ここからの3年、職場の上司や先輩がどう関わっていくかはとても大切なのですね。

互いに刺激し合って、「仕事はツライけど楽しくもある!」と思えるような日々を送れますように。


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